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■政治不信から、市民が仕事で社会を変える時代へ

 舛添・都知事の不正会計疑惑にせよ、安倍総理のG7サミットのあきれた演説にせよ、政治不信を加速させる案件が続いている。
 しかし、いつまで政治家に期待しては裏切られ、政治家にすがりついて批判を続けるのか?
 そんなことをくりかえしていても、現実の深刻な社会的課題はいっこうに解決に向かわない。
 それが、日本を世界の借金大国に育ててしまったし、10年以上も莫大な税金を使った自殺対策も功を奏すこと無く依然として自殺率は高いままだ。

 こんな屈辱に、いつまで耐え続けるの?
 政治家や役人が変わってくれるまで待ち続けられる余裕があるなら、待つのも自由だ。
 しかし、貧しい人は、どんなに愚かなトップが率いる国でも、そこで苦しみに耐え続けるしかない。

 それはとんでもなく生きづらいので、20年以上前からイギリス・アメリカを中心に世界中で社会起業家が活躍し、民間で市民自身が自分の毎日の仕事を通じて社会の仕組みを変えるビジネスが試みられ、その動きは日に日に増すばかり。
 権力や既得権益にしがみつく政治家ではなく、ただの市民がビジネスで社会を変える。
 ソーシャルビジネスを手がける社会起業家が、政治家より頼れる存在に育ちつつあるのだ。
 これは歴史を変える大きな変革のムーブメントになっているが、知らない人は少なくない。

 そこで、日本でも社会起業家がどのように社会を変えているかの実例を紹介する本が続々と刊行されていて、大手の書店では「ソーシャルデザイン」や「ソーシャルビジネス」の専用コーナーが常設されている。
 政治家に任せていても、らちがあかない。
 だから、市民自身が社会を変える。
 この当たり前の選択肢が世界的なムーブメントになっているので、僕自身も社会起業家の課題解決の成果を取材しては本に書いている。

 この社会には、病気や障害、虐待や事件、貧困や孤立など、社会の仕組みのまずさのせいで生きにくい人がたくさんいる。
 彼らの苦しみを、彼ら自身が望む解決のあり方で取り除くこと。
 それが、社会起業家の存在価値なのだ。
 今回のブログでは、社会起業家の「卵」のような若手の動きを拾ってみたい。



 まず紹介したいのは、ライターの遠藤一くんがサイボウズ式の記事で取材した株式会社アーチャレジー
 視覚に不自由のある方を総合的に支援するベンチャー企業だ。
 先天性の視覚障害がある安藤将大さんと、後天性の障害で弱視になった浅野絵菜さんが、大学3年生の時に設立した会社だ(※2016年春に卒業)。
 障害当事者ならではの視点で、日本初の白黒反転手帳「TONEREVERSAL DIARY」(トーンリバーサルダイアリー)などを開発・販売している。

 読みやすさと美しさを極めたら、下地が黒のノートを開発できた。
 これは、視覚障害の人にはもちろん、そうでない人にとっても、機能的で使って楽しいモノだ。
「視力が低かったり、視野が狭かったりという見えにくさを抱える弱視の方のために、これまでになかったモノはないだろうかと考え、制作しました。 
 白い紙は光を反射し弱視にはまぶしすぎるので黒い紙にしたのです。
 スケジュール帳としては日本初です」
(安藤さん/サイボウズ式の記事より)

 視覚が不自由であることは、ユニバーサル商品を生み出せる強みなのだ。
 安藤さんがNHKラジオに出演した放送は、このサイトで聞ける。
 新聞や雑誌、オンラインの編集者は、こういうネタをいち早く発掘できる遠藤一くんに仕事をオファーしよう。


●熊本の被災地でも芽吹きつつあるソーシャルビジネス

 次に紹介したいのは、今年(2016年)3月、北海道札幌市のNPO法人生活相談サポートセンターが始めた「ホープ再生自転車販売」だ。
 以下のニュース動画を見てみよう。



 再利用可能な放置自転車を回収し、専門的な技術を持った職員と、身体や知的・精神障がいを抱える人が協力して修理し、中古自転車として販売することで収入を得る。
 保管場所から撤去する放置自転車の数を減らせると同時に、障がい者自身が自力で収入を得られるチャンスも作り出したことになる。

 この先行事例は、大阪でホームレスの再就職のチャンスを作り出しているNPO法人 Homedoorだろう。
 同NPOは、もともと女子大生たちが学生時代に作ったソーシャルビジネス団体だ。
 その若さでも、生活保護を受給した元ホームレスに放置自転車を修理してもらい、シェアサイクルとして市民や観光客などに有料で貸し出す仕事を作り出し、Googleからも評価されている。

 Homedoorの課題解決ビジネスの詳細は、拙著『よのなかを変える技術』(河出書房新社)や、『ソーシャルデザイン50の方法』(中公新書ラクレ)を読んでみてほしい。
 Homedoorの女性スタッフたちも、お金がないホームレスのおっちゃんが路上に放置された自転車を自分で直して利用していたことに注目し、シェアサイクル事業を始めたのだ。
 ホームレスや障害者だからって、何もできないわけじゃない。
 彼らにもできることがあるし、当事者の彼らにしかできないことだってある。

 福祉作業所には、したくもない仕事を月収1万円程度の低賃金で強いられて、人生がイヤになったり、死んでしまいたくなる障害者が通所している。
 そんな「超ブラック企業」のような作業所の世話になっていても、らちがあかない。
 それは、従来の政治の無策の結果だからだ。
 困っている当事者自身が望む無理のない仕事を作り出す社会起業家の事例に関心を持てば、どんな苦しい状況になろうとも、希望のしっぽを見つけることはできるのだ。

 最後に、最大震度7を記録した大地震で被災した熊本で、震災後に生まれつつあるソーシャルビジネスを紹介しておこう。
 熊本市内のシングルマザーが、自分たちと同じように働き口を失った女性の働き口を作り出し、生活再建につなげようと、避難所生活をヒントに考案したオリジナル消臭剤を商品化し、注文を受け付けている。

 西日本新聞の記事(5月23日付)によると、大学生の長女と高校生の長男を育てるデザイナーの宮田幸子さん(43歳)と、中学生の娘がいるキャリアコンサルタントの田上寛美さん(40歳)は、「熊本地震シングルマザー就労支援プロジェクト」を立ち上げた。
 知人のシングルマザーが寄せた「避難所内の臭いがきつい」との体験談から、天然素材の消臭剤を発案、開発、販売したのだ。
西日本新聞の記事より

 彼女たちは事業資金をクラウドファンディングで調達しようと、1口3000円(3個入り)から購入できるようにした。
 売り上げから出た利益を、包装材などの調達や、包装、発送業務をする母親たちの収入源にしたい考えだ。
 しかし、十分な仕事量を確保できる目標額の200万円には、まだ遠い。
 購入受け付けは531日と近づいている。
 ぜひ、このクラウドファンディングのサイトをtwitterやFacebookなどで拡散してほしい。

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