だから、SEALDsのデモも薄目で見てて、声を上げること自体は共感してるし、「日本政府と日本国民の意見は必ずしも一致していない」ことを国内外の人々に向けて可視化することにも意味はあると思ってる。
しかし、彼らは20歳を過ぎてるのに、「学生」「若者」に居直って、国民主権や民主主義に関する幼い認識をばらまくのはポピュリズム(大衆迎合主義)そのもの。
何よりも、「おまかせ民主主義」を無自覚のまま続けてるようすは、端的に痛々しい。
国会で9月15日に行われた公聴会で奥田くんが何を話したか、たった16分なので観てみよう。
●政治家に社会設計をお願いするばかりじゃ、政権与党が喜ぶだけ
動画を見れば一目瞭然だが、奥田くんは、政治的関心に目覚めたばかりの若者ならではの「青年の主張」で終始してる。
政治に期待する前に、民間で自分の仕事を通じて権力を抑止できる仕組みを作るのが、主権者としての自分の責任だってことに、彼はまだ気づいていないんだ。
もっとも、SEALDsのデモに対して牧歌的に応援してる文化人もいるのよね。
法政大学の山口二郎センセは、「国会議員を選んだ後も任せきりにしない。我々が国会の前に集まり、こうやって声を出す。これこそが不断の努力だ」なんて叫んでるし、作家の高橋源一郎センセも「おかしいと思ったら粛々と声を上げていく。それこそが民主主義」なんて言ってる。
こうした声に勇気づけられて、SEALDsの若者たちは今後もデモを続けるのだろう。
でもね、それって、政権与党=国家権力にとっては、まったくの無害だし、むしろ大歓迎なの。
だって、彼らは非日常的なデモで政治家にお願いするばかりで、日常生活では民間で自分の仕事によって「より良い社会の仕組み」を作り出すことはしないんだもの。
それなら、政治家たちは「よっしゃ、おまえらにはできないんだろ? だったら俺たちが進めるから黙って観とけ」になる。
「政治的な課題解決だけが社会の仕組みを作ることだ」と国民が盲信していれば、政治家が国民から全権委任されたも同じ。
「国民主権は選挙の時にしか発揮できない」という盲信を続ける限り、いつまでも政治家は余裕しゃくしゃくでデモを高い所から眺めて微笑むだけなんだよ。
そうした国民主権の理解が進まなければ、日本はナチの独裁を許してしまったドイツのようになりかねないんだ。
そもそも民主主義ってさ、むかーし、むかーし、絶対王政の独裁で権利や自由が制限されていた市民たちが、「俺たちは自分たちの社会の仕組みを自分たちで作る。一部の連中にその特権を握らせてたまるか!」という怒りで革命を起こして獲得したものだよね?
一部の連中に特権を独占させないってことは、国民全員が「社会の仕組みを作る責任者」になるってこと。
僕もきみも「社会の仕組みを作る責任者」ってこと。
だから、民間で自分の仕事によって、現状よりもっと生きやすい「社会の仕組み」を作り出すのが、主権者としての責任を果たすことになる。
しかし、どうしても民間ではできず、政治の力を使わなければならない時もあるから、主権者の自分の代理人を政治の場に送り出す。
それが、選挙なんだ。
だから、投票で選ばれた議員による採決や、採決によって実現された政策について、声を上げるだけとか、落選運動にこだわりすぎるのは、主権者としての責任のごく一部を果たしたことにしかならない。
しかも、そこに勝算の見込める確かな戦略が無いのなら、いたずらに知識のない人々から時間や労力、資金を奪ってるのと同じなんだ。
大事なことなので、くり返しておこう。
独裁政権や権力の暴走を許すのは、「ボクは無力だから政治家センセ、ボクの代わりに社会の仕組みを作ってよ」という構えをとり続ける国民自身。
そのように、政治家にねだるばかりの「おまかせ民主主義」を主張すれば、政権与党の議員は、大喜びすることはあっても、「ヤバい!」なんてあせりはしない。
だからこそ、SEALDsのような若い世代には、もっと賢くなってほしい。
そのためのアイデアを、ランダムに3つだけ提案しておこう。
●学生ならではの「社会とのつながり」を作ろう
①ソーシャルデザインや社会起業を学ぶ機会を増やす
自分の仕事を、「自分が飯を食うためのにやるもの」とか、「自分の家族を養うために続けること」という考えで思考停止している限り、社会を作り出す意識は育たず、社会の仕組みはいつまでも他人事になる。
しかし、民間の仕事でより良い社会の仕組みを作り出すソーシャルデザインや、ビジネスを手段にして社会的課題を解決する社会起業に挑戦し始めている日本人は、日々続々と増えている。
SEALDsと同じ世代の学生にも、ソーシャルデザインや社会起業を、通学先の学校で学んでる若者が増えている。
SEALDsはすでに全国各地に仲間がいるのだから、「自分の通ってる学校に地元の社会起業家を招いて講義してもらおう!」と呼びかければ、社会起業家は手弁当でも駆けつけてくれるだろう。
ソーシャルデザインについては、この動画をシェアしてくれてもいいし、Skype講演を地元で開催するのもいいだろう。
②「エシカル就活」を、学生どうしで呼びかける
欧米のエリート大学に通う学生たちには、大手企業からの誘いを蹴って、卒業後は数年間、途上国で英語教育のボランティアをやったり、社会起業を始めてしまう人が増えてきた。
それどころか、社会貢献をする企業やNGOなどが人気の就職先になってきたんだ。
それで、優秀な人材ほど採用しにくくなったアクセンチュアやマイクロソフトなどの大手企業は、就職協定を変えた。
企業の方が、「卒業してから数年後に入社していいから内定してくれ」と折れたのだ。
それが、優秀な人材を採用したい企業の市場原理というもの。
学生たちの間で「あの有名企業は利益しか考えてない」という共通認識が広まれば、優秀な人材ほどそんな企業への就職をためらうようになる。
SEALDsに共感してデモに参加した学生には、「デモでしか社会を変えられないのかな」という不安から、とりあえずデモでアツい気持ちをぶつけたいだけの若者も少なくないだろう。
それなら、就活生に人気の企業ランキングや就活会議などを参考にしながら、政権与党に献金する企業をリストアップして拡散したり、企業の勤務実態などの情報を吟味するといい。
そして、独自の基準による数値で有名企業を格付けし、「エシカルではない企業ランキング」を作成して発表。
「きみの優秀さをエシカルではない企業の利益のために使うのはやめよう!」と呼びかけ、優秀な人材が社会の仕組みをより良いものへ変える仕事ができない状況を変えるチャンスを作り出してもいいはずだ。
それを「エシカル就活」と名付け、テレビや新聞、雑誌などにプレスリリースを発表すれば、メディアは関心をもってくれる。
③政府に軍事力を使わせない平和維持の仕組みを作る
戦争法案に反対していたSEALDsは、恒久平和を望んでいる学生団体だよね?
そこで、国民主権を行使したいなら、主権者として民間の仕事によって軍事力に頼らない平和維持の仕組みを作る責任を果たすのが本筋さ。
そのために、「戦争をなくしたい人には面白く読める記事4本」を読んでみて。
どんな仕事も、政府が仮想敵にした外国の人との付き合いを深めることで、民間から政府の暴走を食い止められる平和維持の仕組みを作れるのだから。
百万人を超える人をデモに動員しても、政治を変えることはできなかった。
安保法制を可決に導いたのは、主権者としての責任を果たせなかった国民自身だった。
その現実を潔く認め、自分の胸に悔しさと反省を刻み込むなら、日常的にきみ自身の仕事を通じて民間から「社会の仕組み」を変えられることを、一刻も早く学ぼうじゃないか!
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