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■70年代に英語の歌でヒットした日本人たち

 昨今では、Youtubeなどのネット上で英語で歌えば、英語圏のリスナーもファン層になる可能性が出てくるので、日本人でも英語で歌うミュージシャンはものすごく増えている。

 日本で活動し、英語で歌う日本人ミュージシャンは、宇多田ヒカルさんの登場以後、珍しくなくなった気がする。
 でも、そのもっと前から英語で歌って、ちゃんとヒット曲を作っていた人たちはいた。

 そんなミュージシャンたちを僕の思い入れで選び、若い人向けに紹介しておこう(※敬称略)。
 『Monkey Magic』は、Godiego(ゴダイゴ)が1978年に発表した曲だ。
 僕は当時、中学1年生だったと思う。
 全編英語の歌詞とシンセサイザー・サウンドは、その当時にしては先駆的な試みで、僕自身、子どもながらカルチャーショックを受けたものだ。、

 ゴダイゴは、もともとすべて英語の歌詞で歌いたかったらしいが、日本向けに日本語での歌詞を歌わされることが多かった。
 ほぼ同時期に、細野晴臣・坂本龍一・高橋ユキヒロのYMO(Yellow Magic Orchestra)がテクノポップで全編英語の歌詞によって世界進出していったが、ゴダイゴもアジアを中心にツアーをしていた。

 70年代終わりに登場したこうした「英語の歌詞」は、未来の音楽ビジネスの市場が英語なしには広げられない(=日本語のままだと価値の多様化で個々のミュージシャンのファン市場が小さくなる)ことを予見したものだった。



 翌1979年、今ではもう伝説になっているTVドラマ『探偵物語』の放送が始まった。

 松田優作の演じる「工藤俊作」という役柄が、優作自身のマスイメージを決定づけた。
 全国の中学生男子は、この時期、「リアル中2病」として誰もが「工藤ちゃん」の真似をしていた。

 その『探偵物語』のエンディングテーマとして同年にリリースされたのが、SHOGUN『Lonely Man』だ(※正確には、SHOGUNの「O」の上に―が入る)。

 当時、人気が出てきたミュージシャンに共通していたのは、アメリカのロック・ポップスへの憧れがあり、彼らの作る曲もアメリカのヒット曲を日本人の繊細さで洗練させた点だ。

 そうした中で、「1人アカペラ」のような上質なサウンドをこつこつと作っていたのが、CM音楽で名が売れていた山下達郎だった。



 山下達郎は自身のアルバムでも全編英語の楽曲を作っているが、1984年、アメリカのサーフィン映画『ビッグウェイブ』のために書き下ろしたアルバム『The theme from big wave』収録曲は、すべて英語の歌詞だった。
 そのアルバム収録曲の中から、『Magic ways』を紹介しておこう。

 もともと欧米のサウンドを前提にした音作りを試みれば、リズムの段階で英語のリズムをふまえなければ、ノリが悪い。
 椎名林檎が「曲を作る時はでたらめな英語を鼻歌で歌いながら作る」とTVで言っていたが、確かに母音がはっきりしている日本語をそのまま歌っても、英語のリズムにはなりにくいのだ。

 他にもいろんな方が英語で歌い、海外進出を試みた。
 でも、英語の発音、英語による感情表現、世界に通じる歌詞の深さ、「洋楽を日本人がやってる」という珍奇さなどの課題は残り続け、海外進出が難しい状況は、今もさほど変わらない。



 もちろん、日本独自の「カワイイ文化」という新しい文脈でファンを獲得しているBaby Metalやきゃりーぱみゅぱみゅなどや、アニメのファン層を取り込むアニソン歌手など、いろいろなアプローチで「日本語J-POP」を売って成功した事例は増えてはいる。

 でも、CDが売れず、ライブと関連グッズで収益化を図りたい音楽ビジネス業界にとって、日本人が世界へ売り出すには、日本語と同時に英語の歌詞でリリースするのは当たり前だろうし、ネット上ではそれが容易にできるはずだ。

 しかし、「洋楽を日本人がやってる」という珍奇さを払しょくできたとしても、英語の発音、英語による感情表現、世界に通じる歌詞の深さの3点は、早急に解決すべき課題だろう。
 とくに、世界に通じる歌詞の深さは、重要な課題だと思う。

 どんなに世界に通じるサウンドを作り出せる才能がある日本人ミュージシャンが現れても、歌詞の中身がスカスカだったり、同時代の英語圏の人たちのニーズを知ろうとしないお気楽な内容のままなら、洋楽を作ってきた「本家」のミュージシャンたちに勝てるはずはない。

 経済大国3位の日本のぬくぬくとした暮らしの中では、hiphopですらメガヒットにはならないし、「歌を作ってどうしてもこの気持ちをこの現実を伝えたい」という動機も弱いまま。

 英語の習得以前に、今どんな言葉を人々が聞きたいのかに耳をすませることが、日本人ミューjシャンに必要な気がする。
 それは、自分自身が切実に欲しいものに気づくことから始まるのかもしれない。

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