そして、それゆえに、初来日ライブから50週年の来年に向けて、ビートルズの人気が再燃しつつある現象を証明するニュースについては、このブログで紹介した。
今回は、世界中にファンがいるビートルズの楽曲が、英語ではない歌詞に訳されて歌われている例を紹介してみよう。
日本語で有名なのは、『Yellow Submarine』を大胆に温度として歌った金沢明子さんの『イエローサブマリン音頭』だろう。
プロデュースは大滝詠一さん。
訳詩は天才作詞家の松本隆さん(※はっぴぃえんどのドラマー)だ。
ここでは、「イエロー・サブマリン」 というカタカナ表記が示しているように、「なぜ黄色い潜水艦なのか」という意味は避けられている。
つまり、原曲のサウンドを日本的に解釈することだけに主眼が置かれて作られたのだろう。
僕もこの歌を訳してみた。
黄色い潜水艦では海では目立ってしまい、潜水して敵艦を狙い撃つ前に相手に見つかってしまい、戦力にならない。
それを考えれば、この歌が「平和な暮らし」を示唆していることが容易に推測される。
実際、歌詞でも、黄色い潜水艦の中では「友達じゃない連中に囲まれ」「彼らの演奏」をみんなで楽しむという光景が描かれている。
どこの国でも、英語の原詩がそのまま正確に翻訳されているかは、わからない。
メロディやリズムなどのサウンドの魅力からビートルズの楽曲が好きになるのだろうから、それぞれの国の事情や文化によって歌詞の意味が受け取られることもあり、意味を忠実に母国語に翻訳することは、さほど意味あることではないのかもしれない。
次に、ロシア語版の『She Loves You』を聞いてみよう。
ロシア語の発音だと、英語のリズムの譜割りで歌おうとすると、ところどころムリがある。
ロシア語の発音だと、英語のリズムの譜割りで歌おうとすると、ところどころムリがある。
しかも、途中にラップが入っていたり、アレンジが異なってはいるけど、楽しそうなので、まぁ、いいではないか。
インドになると、原曲を好き勝手にアレンジしまくっていて面白い。
『I want to hold your hand』が、すっかりインドの民謡みたいに聞こえてくる。
まぁ、原曲自体が陽気なラブソングなのだから、ダンスナンバーとして踊りながら演奏するのも一興だろう。
インド人もビートルズが好きなのは、よくわかった。
次は、パトリック・ザベという男性歌手がフランス語で歌った『オブラディ・オブラダ』。
ビートルズの原曲を知らない若い人が初めてこれを聞けば、『オブラディ・オブラダ』をフレンチポップスだと勘違いするだろう。
それぐらい出来が良い。
チェコの歌手マルタ・クヴィショバが歌う『Hey! Jude』は、革命のシンボルとして有名だ。
歌詞の中身は現地語で新たに書き下ろされているため、『Hey! Jude』と叫んでいる部分以外は、すべてオリジナル。
1989年のチェコスロヴァキアのビロード革命の際、民主化運動を行う民衆を励ます曲として民衆によって歌われたが、この歌自体は1968年にチェコにソヴィエト軍が侵攻した「プラハの春」を弾圧した事件に抵抗するためにレコーディングされていたそうだ。
詳細はこのサイトを参照。
シンガポールの歌手が歌った中国語の『Can't buy me love』は、めちゃくちゃユルい感じで歌われてる。
なんだか大らかなアジア人の陽気さが伝わってくるようだ。
原曲自体が、「愛はお金じゃ買えないね」と歌ってるのだから、むしろこのユルい歌い方が大正解なのかもしれない。
最近では、Youtubeにたくさんアップされてる中国版をいくつか紹介したい。
ビートルズがワールドツアーをしていた1960年代半ばから、すでに香港や台湾、中国などではその国の歌手が歌うビートルズの中国語版カバーが盛んに作られていたようだ。
張小鳳はかなりの人気歌手だったようで、『Eight Days A Week』を歌っている。
香港のSAKURAという女性が歌った『Michelle』は、謎が多すぎて、このレコードがどういう経緯で作られたのか、さっぱりわからない。
ただ、当時はイギリス領だった香港のラジオから、ビートルズの楽曲が盛んに放送されていたことは容易に推測できる。
『Michelle』はフランス美女を口説く英国人男性の歌だが、それを中国人の女性がそのまま「Michelle」と歌うと、これは「マイケル」という英国男子に求愛してることになるんだろうか?
それとも、中国人女性がフランス美女を口説くレズビアンの歌として読みとられるのかな?
そもそも「SAKURA」という日本語の芸名って、どこから来たんだろう?
謎は深まるばかり。
ご存知の方がいたら、教えてほしい。
Maggie Wong & The Jungle Lynxs(マギー・ウォンとザ・ジャングル・リンクス)が歌った『From me To you』は、どこか上海租界で流れていたような中国歌謡の印象を受ける。
リズム自体が、中国の伝統的な民謡に近いからかもしれない。
中国語の発音が持つ流麗さが、女性歌手によって存分に引き出されているので、歌が原曲よりやさしくコケティッシュに響いている。
歌は上手い。
中国人でも、サウンドの持つ哀愁は理解できる。
『And I Love Her』を歌う中国人歌手の歌唱法や、メロウなギター演奏はそれを裏付けてる。
ただ、このレコードジャケットのビジュアルでも当時ヒットしたのかどうかは、わからない。
テレビよりラジオの方が一般的に普及していた時代の商品なのかもしれない。
ちなみに、日本でも細野晴臣・忌野清志郎・坂本冬美のユニットH.I.Sが『アンド・アイ・ラブ・ハー』というカタカナ表記で日本語カバーを発表している。
こちらは、演歌のコブシを利かせて歌っている。
『日本の人』というコンセプト・アルバムを作った中の1曲だから、いかにもな選択だろう。
最後に、The Cheatles (Chinese Beatles) を名乗るバンドの歌う中国語版『Let it be』を紹介しておこう。
「慈善事業に特化したアマチュアバンド」という説明がYoutubeに載っていた。
格差問題で揺れる中国の貧しいコミュニティに資金を援助したいと考える時、世界中の多くの人々が知っているビートルズの楽曲を演奏して関心をもってもらうことは有効だ。
日本でも、まちおこしや東日本大震災の復興支援、平和イベントなどで盛んにアマチュアバンドがビートルズを演奏する機会が増えている。
ビートルズはもう、労働者階級にとって「生きる伝説」なのだ。
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