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■当事者と付き合うことなしに少数派を語る愚かさ

 困ってる当事者の声を聴く。
 この当たり前のことをしないまま、当事者に支持されていない支援団体の活動を平気で持ち上げるテレビや新聞はすごく多い。

 昨今のテレビや新聞の取材力は、20年以上前と比べると確実に劣化している。
 新聞社やテレビ局で正社員として働いている人たちは、現実が実際にどうなっているか以前に、偏差値70以上で中流資産層以上の余裕のある家庭出身の幸せの基準で物事を判断してしまう。

 だから、家出や援助交際、風俗などは「あってはならない社会悪」というメガネを外さないまま、真っ先に問題だととらえて取材を始め、学級委員長の優等生がそのまま大人になったような文脈の記事や番組を平気で作ってしまう。

 家出せざるを得ない児童虐待などの事情を「問題だ」と指摘して思考停止したり、その問題を解決する仕組みがどれだけすぐに役立つものかどうかを「困ってる当事者の視点」で検証しない。

 だから、「家出はいけません」とか、「風俗はいけません」などと、一見まっとうな文脈を出すことによって、安い正義を平気で信じる視聴者や読者の共感を得ようとする。

 こうした「優等生メガネ」(高学歴文化=学校的価値観)による文脈の提供が、新聞社やテレビ局が広告スポンサーを獲得するために必要な生存戦略であることがわからない大衆は、そうした文脈を支持することで自分自身の生きずらさまで温存している構図に気づかない。

 キレイゴトを信じさせようとする意図から出発した取材は、取材ではなく、メディア自身が飯を食うための文脈にとってのみ都合の良い現実だけを切り取って編集してみせただけなのに。

 取材とは本来、自分が知らなかった現実や文脈を、当事者たちとの付き合いの中から発見する仕事だ。
 だから、世間から勝手に社会悪のように思われている現実こそ、「本当にそうなのか?」という自問をする必要があるし、知らないことで起こる偏見や差別を助長しないようにする必要がある。

 とくに、家出人やセックスワーカー(風俗で働く人たち)は、誤解されやすい。
 マイノリティであればあるほど、すでに差別と偏見を受けている

 「家出したら売春しなければ生きていけない」とか、「風俗嬢はみんな借金などの事情を取り除けばそんな仕事に就かない」とか、取材不足のテレビや新聞がまき散らし、それを観ただけの小説やドラマの作り手たちによって、大衆の間にイメージが強化されてゆく。

 LGBTに対する差別も同様だが、マイノリティは勝手につけられたそうしたイメージを自分たち自身で振り払っていかなきゃいけないし、それゆえに困ってる当事者たちが集まって、自分たちに必要な支援を自分たち自身で作っていくというムーブメントが20年以上前から盛んに試みられている。
(10月10日は関西レインボーパレード@扇町公園)


●イメージで語られて困るのは、あなた自身

 よのなかには、さまざまなマイノリティ(社会的少数派)がいる。
 障がい者、LGBT、難民、難病者、家出人、ユニークフェイスなど、挙がればきりがない。

 しかし、そうした属性でひとくくりにされる以前に、「私」のありようはそれぞれ違う。
 中には、マイノリティ属性をいくつも抱えている人すらいる。
 「精神障がい者で、ゲイで、養護施設出身者」とか、「無国籍で、前科者で、ニート」とかね。

 つまり、人はそれぞれ個別に違うのだ。
 だからこそ、生身の人間である当事者自身と付き合ってみないと、その人の負っている苦しみを知ることはできないし、安易に「障がい者だから~だ」みたいな偏見を持つことの愚かさにも気づかない。

 気づかないままだと、僕らはいつのまにかテレビや新聞のようなマスメディアの大声によって、誰かを不当に差別してしまうし、偏見で誰かを見る習慣もついてしまう。
 それは、自分がいざマイノリティ属性になった時に、自分自身を苦しめることになる恐ろしい作法なんだよ。

 昨日もtwitterで、「風俗はそこで働かなきゃいけない事情を取り除ける社会にすれば、働かないでいいところでしょ」という意見の持ち主たちにいちいち反論してて、とても疲れた。

 彼らは、「セックスワーカーもいろいろ」という多様性を認めたくないか、あるいは「べき論」(優等生的な正論)を主張すれば社会を健全化できると勘違いしているのだろう。
 これぞ、まさにテレビや新聞が作った世論であり、メディアリテラシー教育が徹底されてない現実を示すもの。

 もちろん、すべての人があらゆるマイノリティ属性の人々と付き合うのは無理だ。
 しかし、せめて当事者の声に耳を貸すぐらいのことはしてほしい。
  
 テレビや新聞によって彼らの都合の良いように編集された2次情報より、困ってる当事者自身の声を大事にしようとすれば、ネット上でいくらでも拾えるし、当事者自身が人前で話すイベントも盛んに行われているのだから。

 
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