11月7日からフジテレビ系で放送されるドラマ『トランジットガールズ』(土曜23・40、初回は23・50)について、「史上初めてガールズラブ(女性の同性愛)を題材にした連続ドラマ」と紹介する新聞記事があった。
(Yahoo!ニュースより)
サンケイスポーツから配信されたこの記事には、以下のフレーズが踊っている。
「男性経験がない小百合と、かつて男性の恋人がいたゆいが一つ屋根の下で暮らしていくうち、恋に落ちていく」
「女性同士のキスシーンや入浴シーンも登場」
「禁断の恋に落ちる義理の姉妹」
「衝撃作」
「ガールズラブはタイムリーな話題」
「時代を反映した作品が、さまざまな反響を呼びそうだ」
「時代を反映した作品が、さまざまな反響を呼びそうだ」
21世紀の今日、女性どうしの同性愛が「禁断の恋」とか「衝撃作」と思うなんて、オッサンたちが読むサンケイスポーツの読者向けの煽り文句だろうと思った。
でも、違った。
このドラマを放送するフジテレビの番組紹介サイトでも、以下のように書かれていたのだ。
「衝撃のテーマ」
「10分に1回、視聴者を胸キュンさせていくというラブストーリー」
「“好きになったのが女の子だっただけ”の、よくあるラブストーリーを目指しています。
目的地は有るような、無いような、でも今いるところは、きっと“目的地”ではない。
そんな人生の通過点にいる全ての若い方々に見ていただけますと幸いです」
(プロデューサー・松本彩夏さん)
こうした説明を見てだけで、同性愛者ではない僕自身の中に、なんともいえないモヤモヤとした気持ちがわき上がってくる。
(番組紹介サイトからの画像。ドラマのワンシーンらしい)
●未経験なことは判断を保留し、自分との違いを教え合おう
ボーイズラブは、映画や演劇、マンガなどいろんなところでウケてきた。
そこで、ついに手つかずだった「ガールズラブ」で人気を取ろうとしてるのだろう。
実際のドラマの内容が「時代を反映した」ものかどうかは、放送前なので横に置こう。
僕の違和感の出発点は、すでに「禁断の恋」なんて誰も考えてない同性愛をあえて「禁断の恋」という言葉で演出しながら喧伝し、視聴者候補になる圧倒的多数派のヘテロ(異性愛者)を釣ろうとする構えにある。
フジテレビは、ドラマの素材に使われる側の当事者であるLGBTが社会の中では少数者であることから、最初から視聴者候補として切り捨てたのだろうか?
もし、これが同性愛ではなく、精神障がいや知的障がい者との恋愛だったら、「禁断の恋」や「衝撃作」を使うことをためらい、「感動作」という言葉で多数派を釣ろうとするのだろうか?
そう問いかける時、テレビという大衆向けメディアの娯楽であるドラマが、最初から社会的少数者を扱う場合、少数者の当事者性に対する関心から目を背ける(あるいは関心の中心には置かれない)多数派の構えを上塗りしてしてしまうことに、何のためらいも無いことがわかる。
「それ、マイナーな話題だから」と食わず嫌いのまま「仕事じゃできないし、プライベートでも考えることは無い」と決めつけたり、「私、同性とキスしたこと無いもん」なんて未経験自体を他人に誇るなんて、正直、僕にはよくわからない。
やったことがないことは、端的に「わからないこと」だ。
そのように判断を保留する構えを持たずに可能性をバッサリと乱暴に切り捨ててしまうと、自分以外の誰かのためらいやとまどいまで黒白つけたがってしまうのでは?
もちろん、どこまでが同性愛で、どこまでが同性愛でないかは、他人から見れば曖昧だ。
同性愛者の中にも、自分の性についてよくわからない人もいる。
ただし、自分を認識するうえで「同性愛者」という言葉を必要だと考え、そこに誇りを持っている当事者もいる。
その現実に向き合おうとする時、彼らの率直な言動を表に出せない社会的な困難を作ってきたのが、僕を含めたヘテロ(異性愛者)であることを考えないわけにはいかない。
僕は熱心なアライではないけど、LGBTsを隠さない友人たちが少なからずいる。
友人だと思うからこそ、僕は自分が知らないことを聞けるチャンスを作りたいし、それをより多くの人と分かち合いたいので、公開イベントでさまざまなマイノリティ属性の友人と人前で話を重ね、ネット生配信や録画を心がけ、Youtubeにアップしてきた。
性的な観点でなくても、人は誰でも社会の中で浮いてしまう少数派の属性をもっている。
障がい者、路上生活者、難民などといったわかりやすい属性だけでなく、「プロジェクトメンバーの中で一人だけの女」とか、「この高校では一人だけの学生起業家」とか、「職場ではたった一人の高卒者」という具合に、日常的に関わる小さなコミュニティの中にすら、マイノリティ属性を意識せざるを得ない環境はある。
そこで、多数派と同じことを強いられる同調圧力をイヤだなと思ったことがあるなら、自分とは異なるマイノリティ属性の人と、せめて会話したり、相手と自分の違いを知ろうとするぐらいは、挨拶のような共通認識にしようよ。
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