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■SEALDsは「デモ以外の時間」に何をしてるの?

 全共闘世代のおじいさんたちは、新聞記者も含め、カンパに依存した運営を続ける昔気質の非営利団体と親和性が高い。

 彼らは、ビジネスによって社会的課題を解決する時代に突入してることにピンとこないまま、自分自身の仕事の社会的価値への問いかけは横に置いて、真っ先に政治家にお願いすれば民主主義だという勘違いを続けてる。

 だから、そうした古い発想のおじさんたちと、働くことの意味をまだ知らないまま自分自身を無力だと思い込んでる若者たちは、結びつきやすい。
 すると、野党勢力の結集や政治的解決にばかり関心を向け、青年の主張を人前でくり返すことになる。
 残念ながら、SEALDsの渋谷街宣は、そう見えてしまう恐れをはらんでいる。

(2015年10月18日に渋谷駅前でのSEALDsのアクション/朝日新聞より)

 そこで、渋谷駅前でのSEALDsの街宣スピーチに参加した、ICUの小林叶さんのスピーチを聞いてみてほしい。
 ネット上では、「心に突き刺さる言葉」とか、「感動スピーチ」とか、「今年のベストスピーチのひとつや」など、絶賛のツィートが目立つ。



●貧しい人は、正論より一刻も早い解決を求めるのでは?

 小林くんの言ってることは、誰も反対できないぐらいの正論だ。
 彼の意思そのものには異論をはさむつもりなど毛頭ない。

 しかし、スピーチやデモといった意思表示の時間以外の日常生活において、彼は熱意を込めてしゃべった貧困の解決に取り組んでるんだろうか?

 彼と同世代の学生も含め、民間から貧困を解決する仕組みを作り出すさまざまな取り組みが盛んに行われてる今日、そうした疑問がわき上がる。

 小林くんが熱い気持ちを込めて意思表明をする以上、「僕らはここまで貧困解決の仕組みを作ってきたのに政府は~!」と怒るなら、何の違和感も持たずにうなづけただろう。
 でも、彼のスピーチの結びは、こうだった。

「始めましょう。安倍政権の退陣を求めます」

 あれ? 政治家に何かしてくれって話?
 ちょっと待ってくれよ。
 民主主義って、主権者の自分が動く前に、代理人である政治家に先に何かを頼むことかい?

 どこの大学にも、貧困に苦しんでる人はいる。
 小林さんの友人に実際に貧困で苦しんでる人がいるなら、その人を救える仕組みを作り出せた実績(あるいは頑張ってみたけど、実現できなかった悔しさ)を話せば、彼の話にはもっと説得力があったはず。

 友人の苦しみを見過ごせない人は、解決策を本やネットなどで学ぼうとし、1日でも早く友人を苦しみから救い出そうと具体的なアクションを始める。
 僕は、そうした若者たちをたくさん見てきた。
 だから、若者ののびしろを信じてる。

 逆に、アクションを始めないのは、そこまで他人の苦しみに対して高い関心がないか、苦しんでる当事者に対して腫れ物扱いで接してる自分に向き合いたくないから、かもしれない。

 貧困のつらさを訴えながら、自分では「何もしない国民」のまま、真っ先に政治に期待するなら、それは政治家に「あんたらのいいようにやってくれ」と言ってるのと同じだ。
 政治家の方も、「お前ら国民にはできないだろ。よっしゃ、俺らがやったるから黙って観とけ」という構えになり、おかげで「おまかせ民主主義」というニセモノ民主主義が戦後ずっと続いてきた。

 政治家に要望することは、主権者の権利の一つだ。
 でも、「政治家まかせ」にすることは、民主主義を返上して独裁をお願いするのと同じ。
 政治家の出る幕を無くすぐらい、国民自身が社会的課題の解決の仕組みを民間で作ってこそ自治であり、自治に基づく民主主義が成立する。

 これが理解できないままだと、望んでもいない独裁(与党政権の暴走)を押し進めてしまうんだよ。

 強行採決されてしまった安保関連法にしても、「俺たちはここまで非戦の仕組みを作った。なのに政府は~」なら多くの人が共感できる。
 でも、それが無いまま「あの可決は違憲だ」と正論を主張するだけでは、大衆の不満の留飲を下げ、思考停止に導くだけだろう。

 実際、SEALDsのデモや主張に感化された若者たちの間に、安保関連法の運用を阻止するだけの民間の仕組みを作ろうという動きは見られない。


●孤立と不安が招く自己評価の低さは、独裁を導く恐れがある

 政治の暴走を止めるのは、政治家ではなく、民間事業だ。

 「それは民間でやれるから税金を使うな」と国民が言えるようになるには、民間で社会的課題を解決できる仕組みを作り出し、政治権力の出る幕を減らすのが本筋。
 逆に、政治家や官僚に任せてたら、低所得者ほど生きづらくなってしまう

 だから、「デモで意思表示する人もいれば、社会的課題の解決に取り組む人もいる」という具合に役割を分断するのは、民主主義が何かを理解してない人の言い分なの。
 国民主権とは、社会を作る主権者が国民全員ってことなんだから。

 「デモや街宣に行かない時間で何をするのか?」と自問し、そのアクションのあるなしで、民主主義を理解してるかどうかが判断できるんだよね。

 ところが、政治だけが社会を変えられるかのように勘違いしてる日本人は、意外に多い。
 社会の仕組みの多くは民間の仕事で作られてるし、民間の方が政治家や官僚よりはるかに優れた人材・ノウハウをたくさんもってる。
 このことは、経営者視点で社会を見ないとピンとこないかもしれない。

 ただし、そこで自問してほしいんだ。
 自分や個人を無力だと思い込み、その自己評価の低さによってやみくもに連帯を求め、政治的解決にばかり目を奪われてしまっていないか、と。

 僕は、SEALDsと同世代の若者たちが本気で社会を変えるために社会起業(ソーシャルビジネス)を学び、貧困を含むさまざまな社会的課題の解決に動き出してる現実を知ってほしいと思う。

 彼らが社会起業を学んだなら、貧困に苦しんでる当事者を勇気づけるのは、正論の主張ではなく、貧困を解決できる画期的な仕組みを作った実績だとわかるはず。
 本気で貧しい人と希望を分かち合いたいなら、苦しんでる当事者と正面から向き合わなきゃ。


 「望んでることと実際にやってることが乖離してないか」と自問せず、正論を叫べば政治が変わるなんて盲信する構えは、「祈れば神風が吹く」と信じて勝算のない戦争を始めた約80年前の日本の空気に近づいてる。
 独裁は、社会を作る自信を失い、不安にかられるばかりで自治を忘れた国民が準備する。

 僕は、若さゆえに世間の広さに目覚めていないSEALDsの成長を信じたい。
 この記事を読んで、反射的に「disってる」なんて早とちりはしてほしくない。
 僕は、彼らが社会を変えるためにどんな実効性のある戦略をもってるのかを知りたいんだよ。

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