何かに困ってる人は、その困りごとが多ければ多いほど、それを解決する商品・サービスを生み出せる「商品企画のネタの宝庫」として価値の大きい存在になれる。
そのことについては、このブログ(←クリック)にも書いたが、自分の本でも繰り返し書いている。
なぜか?
そういう発想でいれば、東京のような大都市でなくても、つまり田舎でも、何かに切実に困ってる当事者自身が収益を自分で作れるビジネスを始められるからだ。
最近も、乳がんによる脱毛を経験した広島県府中市の竹本裕子さんが、脱毛に悩む女性向けの帽子を考案、販売し、府中商工会議所の「新事業アワード2015」新規創業部門で大賞に輝いた。
日本では、がんは昭和56年から死因の第1位で、年間30万人以上の国民ががんで亡くなるという。
生涯のうちにがんに罹る可能性は、男性では2人に1人、女性の3人に1人と推測されている。
しかも、再発率は5割だから、闘病時代が長く、不便な暮らしを強いられている人が常にいるのだ。とくに、末期がんになれば、抗がん剤で全身の毛が抜けると、頭髪だけでなく、眉毛も、まつ毛も、全部なくなるので、病院から外出の許可が出ても、そんな姿で誰と会えるだろうか?
毛が無いだけで、人前に出るのさえ気が引けるし、家族や友人に心配させるのをためらって、病院や自宅にひきこもったまま、孤独の中で死んでゆく方も珍しくない。
そこで、がん患者の困りごとを解決することを仕事にしようと、起業したこともないのに「人毛ウイッグを予算5万円で作る美容室」を始めたのが、浜松で「PEER」(ピア)を経営している佐藤真琴さんだ(下の画像)。
●当事者の苦しみと希望をセットで聞く
佐藤さんは、一人の末期がん患者との出会いによって、かつらを安く作って売る美容室を作っただけでなく、なるだけ患者にお金を使わせずに済む仕組みで、このかつらを全国で売れるような連携をしている。
詳細は、下にある彼女自身の講義の動画をじっくり観てほしい。
彼女が「格安のかつら」を売ることにしたのも、当事者である患者自身が何について切実に困っているのかを尋ねるだけでなく、その困りごとにある不安を解消できるとしたら何が必要かを具体的に知ろうとした結果だった。
この発想は、末期がん患者を「支援」しようとする構えからは出てこない。
当事者の苦しみを自分自身のものとして受け止めたからこそ、患者の話をよく聞くことによって、一緒に困りごとを解決していこうという「協働」の構えがとれたのだ。
「さみしいからここへいて」という患者のベッドのわきで、佐藤さんはいつまでも話を聞いた。
外出できる最後のチャンスが来た時、患者は「自分が死ぬための準備をしたい」と言った。
お金の整理をし、遺された人たちが困らないようにしたい患者には、どうしても「かつら」が必要だった。
佐藤さんは、かつらのパンフレットを探し、値段を見た。書いていない。
電話でメーカーの会社に問い合わせたが、ものすごく高かった。
長い闘病期間で自分が使った医療費は膨大だ。
いつ死ぬかも、わからない。
とても、自分には、高いかつらを買うわがままはできない。
これからも家族は生きていくのだから、私はかつらをあきらめる。
そう言った患者に対して、「それがものすごく悔しかったんです」と佐藤さんは告白する。
切実に困っている当事者に希望をあきらめさせる状況に対し、「悔しい」と思えた佐藤さんは、患者の苦しみを少しでも分かち合おうとする当事者になったのだ。
他人の苦しみを見過ごせないと思える気持ちのことを「コンパッション」という。
これは、同情やあわれみではなく、協働である。
苦しんでる当事者と一緒に汗をかくことだ。
それが、社会起業(ソーシャルビジネス)を成功させるもっとも重要なポイントなのだ。
佐藤さんの話をぜひゆっくり聞いてみてほしい。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
■本の商業出版を考えている個人・法人の方は、こちら(※もうすぐ〆きります)
■会社に雇われない働き方について相談したい方は、こちら
■NPO活動に毎月20万円程度の資金を調達したいなら、こちら
共感していただけましたら、下にある小さな「ツィート」や「いいね!」をポチッと…