★精神障がい者の演芸会、始まる
NPO法人さざなみ会の就労継続支援B型事業所「シャロームの家」(横浜市磯子区)は、精神障害のある利用者らが披露する演芸会「ISOTT」(イソット)を始めた。
自分たちが楽しむだけでなく、地域に埋もれている障害者と「つながる」ことも意識して「笑い」を発信している(福祉新聞2015年10月7日付より)。
なぜ「障害者とつながる」のか、なぜ障がいのあるなしに関係なく広くお客さんを集めないのか、不思議だ。
もっとも、こうした演芸会をきっかけに、地域の公民館などでお笑いグループとして入場料がとれるようになれば、当事者自身が自分たちの働きの価値を評価してもらえるチャンス作りになる。
「べてるの家」の統合失調症例の当事者たちは、症状という資産によって”妄想トーク”を講演会のように売り出していたし、東京の団体では当事者たちの言葉を札に書いた”妄想かるた”も商品化されている。
「トリオ・ザ・インテリ」の精神障がい者たちが望むなら、全国の福祉・介護施設や病院、学校などに出前ライブを、芸能マネージャーのように売り出すといいのではないか?
ケアされる側から観た当事者視点は、ケアする・ケアされる立場を超えて、大きな学びと気づきを与える。
その価値をきっちり収益化できれば、当事者たちはただ一方的に支援されてきたのではなく、支援されながらいろいろ考えてきた年月も自分の人生なのだと思い直せるだろう。
当事者固有の価値による収益化に、ピア・サポートに携わる人自身がもっと関心を持ってほしい。
★買い物困難地域で障がい者が移動販売
滋賀県高島市にある社会福祉法人虹の会では、障害のある人たちが作ったパンやお総菜、園芸品などを車に積み、買い物の不便な地域を定期的に訪ねる移動販売を行っている。
今年10月で5年目に入り、事業として定着。
虹の会では、施設で作ったパンの販路拡大を模索する中、市民の困りごと調査で2位が買い物不便だったことに着目。
専門家の助言を受け、「地域での障害のある人たちの働く場の確保」と「高齢化、過疎化による買い物難民の増加」の二つの課題を解決する取り組みとして、市や助成団体の支援も得ながら進めてきた。
責任者の田村きよ美・アイリス施設長は「施設内での仕事だけではなく、地域で役割を見付けていくことが大切」と語る。
お客さんは口々に「来てくれて助かる」「いつも来るのを待っている」と話す。
利用者には「必要とされている」「行けば喜ばれる」という意欲につながり、自立心が芽生えてくる。売り込み上手の利用者は「高齢者と話していると和らぐ。この仕事は楽しい」(福祉新聞2015年11月10日付より)。
この取り組みが素晴らしい点は、地域にある複数の課題を掛け合わせれば、解決の仕組みが作れることに着目したところだ。
マイナスとマイナスを掛け算すれば、プラスになる。
これは、社会的課題を解決する仕組みを作り出す際に必要な発想で、マイナスとは「ニーズ」のことだと理解できれば、収益化の仕組みにつながっていく。
買い物困難地域の場合、あらかじめ該当世帯の市民の名前と電話番号をリスト化しておけば、売れ筋の商品をあらかじめ電話で尋ねた上で仕入れて移動販売できる。
そうした地域密着ならではの仕組みを導入しながらも、消費者のニーズをヒアリングで掘り起こし、メモする作業も、障がい者にできるはずだ。
これも、サポート側がもっとビジネスを貪欲に学ぼうとすれば、障がい者の働きがもっと報われるし、燃費などのコストも賄える収益を作り出せる。それはビジネスの持続可能性を担保することになのだ。
★障がい者が働くカフェが5か月で1万人を集客
障害者スタッフが、1万人目の客に記念品を手渡す |
社会福祉法人ふくちやま福祉会が運営する就労継続支援B型事業所として今年4月29日にオープンし、障害者が働くカフェレストランと、パン・アイスの製造・販売などをする「あまづキッチン」の来店者が、9月のシルバーウィーク中に1万人に到達した。
予想より早く、開店から5カ月弱での大台入り。
国道175号沿いの良い立地条件を生かして知名度を上げ、平日で50人、休日に100人以上を集客している。
多くの人との交流が刺激になり、障害者スタッフがやりがいを見いだしている(両丹日日新聞2015年9月24日付より)。
このように、「いつまでに何人の集客を達成させるか」という目標を設定することは、働くスタッフに共通の目的として分かち合われ、それ自体が連帯とやる気を動機づける。
こういう作業効率や合理化の話をすると、「障がい者を追いたてるのか」という批判をしがちな人も一部にいる。
だが、「障がい者」とひとくくりにせず、その人の資質を見極めて作業を任せ、潜在的な能力を引き上げると同時に、同じ労力でより高収益になる仕組みを作れば、その工夫は工賃の高さとなって当事者にメリットとやりがいをもたらす。
大事なのは、「誰に何を任せれば、どの程度できるのか」を日々試しながら適材適所の配置をすることだし、同時に製造工程における作業効率の仕組みを考えれば、ムダな労働をしないで済む省力化が図れるため、当事者負担は下がるのだ。
あとは、記事にあるように立地条件や地域市民(=消費者)との関係などビジネス上のスペックを援助職のプロがどこまで学ぶかで、そこで働く当事者の負担はさらに減っていく。
★聴覚障害者が筆談で対応するヘアサロン
聴覚障害の美容師が働くヘアサロン「ルピナスヘアー」が、10月15日に相模原市内にオープンした。
難聴だった理容師の浅川雅之さんが聴覚障害者の雇用促進を目指す一般社団法人を立ち上げ、店の運営を担う。
難聴だった理容師の浅川雅之さんが聴覚障害者の雇用促進を目指す一般社団法人を立ち上げ、店の運営を担う。
小学6年生のとき手術を受け、通常の7割程度の聴力を取り戻した浅川さんは理容師の道を選び、自分の店を持った。
そのため受け入れ先が少なく、就職できても同僚や客とのコミュニケーションの問題などで業界から離れる人も多い聴覚障害の理美容師の現状を何とかしたいと思っていた。
そこで理美容師仲間と「日本理容美容ルピナスの会」を立ち上げ、開店準備を進めてきた。
5年前に病気で耳が聞こえなくなったスタッフの小川さんは、筆談ボードを使い客の好みや細かい注文に応じて整髪、数人いる健常者のスタッフもサポートに回る。
車いすのまま整髪できるなど、店づくりにも工夫してある。
同会は、高齢や障害などで店に来られない人のために訪問理美容のサービスを展開する方針で、事業の拡大とともに障害者スタッフを増やしていくという(神奈川新聞2015年11月9日付よりより)。
「筆談OKなら、飲食店は売上UP」という記事を以前に書いたが、理美容の業界も同様だろう。
できれば、多国籍の外国人が属するNPOや地域の在日外国人グループと組めば、多言語で筆談が可能となり、インバウンドによる集客UPも見込めるかもしれない。
この「筆談」を必要に迫られて導入するのも大事なことだが、聴覚が使えないだけでなく、日本語が使えない顧客も少なくないことに思い当たれば、「筆談OK」を店の看板やネット上できちんと広報するだけで潜在顧客を掘り越せる余地は大きい。
「自分が困っていれば、他の誰かも困っているかもしれない」
そういう想像力を持つことが、それまで見えなかった顧客や市場を開拓できるチャンスになるのだ。
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