ベンチャーを立ち上げても、10年後に残ってるのは、100社のうち1~5社と言われている。
それでもしぶとく生き残っているNPOや社会起業団体は少なくない。
NPOについて知らない人は、非営利事業体がビジネスや儲けとは関係ないように勘違いしている。
どんな事業活動にも経費がかかるから、その経費を賄えるだけの収入が必要になる。
NPOシーンでは昨今、助成金や寄付、会費などに依存せず、自ら収益事業(ビジネス)を作って、活動経費を賄う「事業型NPO」が増えてる。
もちろん、彼らの活動目的は利益ではなく、非営利(=社会問題の解決)なので、浮いた金をスタッフに再分配することはない。
活動費の明細には「順当な人件費」も認められているので、活動に必要不可欠な人件費は経費として算入される。
たとえば、収益事業でドカンと儲かったとする。
企業なら、その富を会社の余剰金・株主配当・経営者や社員のボーナスなどに分配する。
でも、NPOがもしドカンと儲かっても、真っ先に人には分配されない。
活動費そのものに充当させることで、社会問題の解決という目的を促進させることに使われる。
必要最低限度の人件費を確保した上で、それ以上の稼ぎをがっぽり儲けようとはしないだけで、収益を上げて社会問題の解決費に充てる点では、企業もNPOも変わらないのだ。
収益の最大化を目指す(=儲けが目的だから最優先に考える)のが企業。
社会問題の解決の最大化を目指す(=儲けは手段だから最優先には考えない)のがNPO。
そうざっくりと把握しておけば、企業とNPOが持っているリソース(資源)も異なることがピンとくるはずだ。
そして、互いに違うリソースを持ち合えば、それまで自分の団体だけではとてもできないと思っていたことが容易にできる。
それに気づき、今日という時代にマッチした「冴えたやり方」も見えてくる。
これから書くことは、企業とNPOのどちらにもメリットがある幸せなwin×winの協働モデルの成功事例だ。
●企業にはないリソースをもっているNPOはたくさんある
今日でも、活動費に窮しているNPOが少なくないのは事実。
でも、彼らは、企業のようにお金そのものがほしいわけではない。
社会問題を解決する活動の持続可能性を担保するさまざまな手段が豊富にほしいのだ。
その手段とは、以下の通り。
☆活動に定期的に従事する人材
☆活動の活性化のための事務を効率的に進めるために必要なパソコンやオフィス
☆活動資金を調達できたり、活動を広報するなどの「専門スキルを持ったプロ」
☆その他、イベントやミーティングを気軽に行えるスペースなど
それらを十分に得るのに必要なだけの資金の余裕がないNPOは少なくない。
しかし、金ではなく、NPO自身が持っている豊かな資源を企業に提供することで、そうした手段と交換できれば、NPOにも企業にも、そして2者がともに解決したい社会問題に苦しんでる社会的弱者の当事者にもメリットのある「3方良し」の協働モデルが生まれる。
たとえば、今後、続々と日本には外国人が流入してくる。
外国人は、ふつうの賃貸物件に住みたくても、日本人の連帯保証人がいないと住めない。
だから、仕方なく保証人不要のシェアハウスや、大金があればウィークリーマンションやレオパレスに住むことになる。
ふつうの不動産屋で部屋を借りたくても、外国人はどんなに高い身分でも、まず断られるからだ。
そこで、ある青年がNPOと組んで面白い仕組みを事業化した。
あらかじめ多国籍の外国人によるコミュニティで構成されるNPOに打診し、これから来日する母国の人に対して母国語で生活習慣を指導する役割をお願いしたのだ。
青年は、不動産経由でアパートやマンションに住みたい外国人から手数料を徴収。
それによって、彼は大家さんに「トラブル・シューティングは同じ母国語の「先輩」たちによって解決します」と伝え、信用を得る仕事をする。
「先輩」たちは、NPOにいる。
彼らは自分が初めて日本に来て、ゴミ出しの日が決められていることや、夜中に音を出してはいけないことなど、トラブルになりがちだったことを熟知している。
だから、入居前に母国語で「後輩」に説明しておく。
大家さんはたいてい、「外国人は日本人より家賃延滞率が低い」と知っている。
日常生活上のトラブルが起こらない保証さえしてくれれば、空室を早く貸したいと考える。
このビジネスは見事に成功した。
このようにNPO側にとっては「母国出身の後輩たちの不便を解消することに貢献できる」というメリットを受けることができ、企業側は質の良い客を大家に売れる。
そして、「外国人だから賃貸物件に住めない」という社会問題が解決され、外国人は安心して日本に住めるようになる。
この事例については、拙著『社会起業家に学べ!』(アスキー新書)に詳しく書いた。
フリースタイルライフより |
●NPOとの協働は、中小企業の方がやりやすい
ここで企業が学ぶべきは、NPOの資源とは、そのNPOが取り組んでる社会問題やその解決方法に関する豊富な知識や技術、人脈、そして彼らが支援している社会的弱者の当事者性に基づいたニーズそのものであるということ。
たとえば、子育て支援NPOなら、小さい子を育てている親が何を切実に求めているかが具体的にわかるし、どんな支援が実際に満足度が高いのかも熟知している。
しかも、子育てに関する具体的な経験・知恵ももっているし、マーケティングに重要になるコミュニティを形成していることもある。
そうしたママさんたちが気軽に集まれるコミュニティカフェを、ママさんだけで自力で立ち上げるのは大変だ。
でも、たとえば企業が空いている会議室を一時的に貸し出すだけで、子育て主婦どうしによる子守用の託児スペースが確保できるし、ママさんの手が空けば、ランチタイムに社内で安いランチを提供することもできるだろう。
小さな子を抱えて家にいるより、企業内で社会と接しているほうが育児ママにとっては気が晴れるし、そこで子どもを一時的にも預かれるスペースと人材、仕組みがあれば、企業側の女性スタッフも小さな子を預けながら働ける。
もっとベタな協働だと、たとえばニートやひきこもりの自立支援NPOでは、「就業体験」として若い人材に無償のインターン(もしくは最低賃金より安い有償ボランティア)として労働現場で実習を積ませてもらえる企業を探しているところもある。
そうしたNPOと協働する企業側にとっては、一定期間、安く雇える人材を確保できるし、身内にリーダーを育てたい時も、社会経験の乏しい若者に根気強くものを教えるのに役立つ。
今日の若い社員には、自社のビジネスの社会的価値を理解できない(=自分が世の中に役立つ仕事をしているという自尊心を持てない)と、どんなに安定・高給でも辞めてしまう傾向がある。
だが、自分のそばでニートや引きこもりの同世代の若者たちが必死に働いているのを見れば、若い社員たちの退社率も下がるだろう。
このように目的別にNPOとの協働を選べば、企業は通常のコストをかけなくても、NPOから豊かなリソースを得られるし、ビジネススタイルや着眼点も豊かになる。
そもそも、社会問題の解決というミッションさえNPOとシェアできれば、社外から広く豊かなリソースを調達できることのメリットを、多くの企業に知ってほしいと思う。
そうしたNPOとのマッチング&協働事業を、企業から依頼を受ける形で僕は始めてる。
詳細は、このページにある。
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