神奈川県は、社会全体で女性の活躍を応援する機運を高めていくために、「かながわ女性の活躍応援団」を結成したが、応援団の構成メンバーの考え方として「団員は男性とする」(←クリック)と発表したのだ。
発表したのは、かながわ男女共同参画センターだよ!
腰が抜けそうになった。
応援団の目的は、「性別に関係なく個性と能力を発揮できる社会を実現するため」と明記されているのに、なぜ「団員は男性とする」なのか?
これほど堂々とした性差別、見たことない。
1月20日に行われる応援団のシンポジウムのHPにも、はっきりとこう書かれている。
「応援団員は、神奈川にゆかりの深い企業のトップ10人と知事。
今後もさらに多くの企業の皆様にご参加いただき、社会的なムーブメントとして神奈川から発信していきます。
そこで、女性の活躍を応援し、性別に関係なく個性と能力を発揮できる組織づくりに取り組むための課題や方向性などについて考えるシンポジウムを開催します」
…で、「ムーブメント拡大シンポジウム」のポスターが、これ。
オッサン、大集合じゃん!
なんだ、これ?
最大限に好意的な解釈をするなら、「これまで女性を『活躍』させてなくて申し訳ない」という謝罪をおっさん仲間みんなで土下座するっていう意思表明?
その割には、オッサンたち、みんな笑顔で、気味が悪いと思うのは、僕だけだろうか?
ご立派な経歴の岩田さんが、中小企業で働く女性が圧倒的に多い職場の現実をどこまで深く知っているか、若い世代の女性たちが求める「活躍」のあり方を熟知しているかどうかは、あえて横に置こう。
いずれにせよ、黒いスーツのオッサンたちがずらりと並んだこの写真を見て、「この人たちなら私たち女性のニーズをくんで職場の問題を解決してくれるわ」なんて心から期待する女性がいるだろうか?
シンポジウムのキャッチコピーは、「女性が、どんどん主役になる」だ。
その主役、写真のどこにもいないんですけど…。
シンポジウムのパネルディスカッションに参加予定の岩田さんですら入ってない。
つまり、この応援団にとって、女性はあくまでも「蚊帳の外」。
しかも、基調講演を務める講師は、内閣府男女共同参画会議議員で、一般財団法人女性労働協会会長の鹿嶋敬さん。
なんと、今年71歳になるおじいさんだ!
会場に足を運んだ若い女性から、「パソコンによる業務管理で作業効率を上げるにはどのソフトが一番いいですか?」なんて質問されたら、答えられる?
あるいは、「子連れで働けるようにどう勤務先に提案すれば仕組みを考えてくれますか?」と疑問に感じていても、それを察して使える実例を丁寧に語ってくれる?
もっとも、当日のプログラムにはオッサンたちに自由に質問する時間があらかじめ無いようだ。
県民は黙って、一方的に話を聞くだけ。
なるほど、オッサンのなじんできたやり方だね。
男が男に女を教わる図式は、男の僕から見ても、「オッサン、女をなめんなよ」と言いたくなる。
応援されたい女性のニーズを知っている女性は、応援団に入れない。
応援される側が応援団に入れない組織はひとりよがりであり、オッサン的価値観への居直りにすぎない。
たった1人の女性スタッフにも発言権を許さない広告代理店がこんなアホなイベントを企画・運営したんだろうが、県民・市民から疑問の声が上がるのは時間の問題だろう。
その時、つめ腹を切らされるのは、男女共同参画センターのセンターの所長の西井さんか、それとも黒岩祐治・県知事か。
県民に禍根を残し、晩節を汚したいなら、どうぞご勝手に、と言いたいところだ。
そこで、「女性の活躍を応援し、性別に関係なく個性と能力を発揮できる組織」を作ろうとする際、どんな代案が必要なのか、考えてみたい。
●女性の知恵と経験を結集し、活かせる仕組みに金を出そう
そもそも、応援や支援という言葉には、「おまえが頑張れるように」という構えが含まれている。
つまり、「俺は何もしないけど」という応援者の怠慢と居直りが含まれているわけ。
今日まで女性を女性自身が望むように「活躍」させなかった主犯者は、オッサンである。
だから、オッサン自身が自分自身の反省に基づき、その反省が「活躍」を望む女性に査定されないかぎり、女性の「活躍」が実現されることはないはずだ。
たとえば、なぜ職場に幼い子を連れて来ても業務に支障をきたさずに済む仕組みを作れなかったのか?
なぜ長い間、職場で同じ男性であるゲイやトランスジェンダーなどを含むLGBTへの不当な差別に気づかず、結婚や出産、子育てを同調圧力的に語ってきたのか?
なぜ育休からの復帰プログラムや手当、ワークシェアリングやワークライフ・バランスの導入など、社員のQOLを保ったまま売上を増やせる仕組みを作り出せなかったのか?
なぜ同じ男性でも、学歴や国籍、性指向、見た目などの個人的属性によって採用や人事、待遇を決めてきたのか?
女性の活躍を語る前に、オッサンの経営者や知事には、自分自身があまりにも社会の変化の速度に追いついていけてない弱さこそ見つめてほしい。
そのうえで、「活躍」したい女性自身の声に真摯に耳を傾けてみてほしい。
女性の幸せは、女性自身が決める。
それを最大限尊重したい思いが少しでもあるなら、オッサンがずらりと並ぶことに恥ずかしさを覚えるはずだ。
そのはじらいをふまえて、「女性の活躍を応援し、性別に関係なく個性と能力を発揮できる組織」を作るなら、女性自身が支持する女性を適切なギャラを払って応援団に起用するのが筋だ。
すでに団員になっているオッサン経営者には、自分が自由にできる金が潤沢にあるのだから、オッサンたちでお金を出し合って「生徒」になり、女性のみなさんに教えを請えばいい。
そのためには、県内の人材だけでなく、広く全国・海外からも人材を調達してほしいところだ。
僕が知ってるわずかな知識でも、10人くらいの女性の人材なら、すぐに思い当たる。
応援団に女性を起用するなら、以下の方をオススメしたい。
★Mo-House代表の光畑由佳さん
スタッフが2ケタいるが、正社員は1ケタしかいない授乳服メーカーの「モーハウス」(茨城県つくば市)では、子連れ出勤が当たり前。
光畑さんが書いた『働くママが日本を救う! ~「子連れ出勤」という就業スタイル~』(マイコミ新書)くらいは読んで、中小企業でも導入できる仕組みがあることを学んでほしい。
また、光畑さんは僕と同世代なので、親の介護も関心外ではないはずだ。
また、光畑さんは僕と同世代なので、親の介護も関心外ではないはずだ。
★AsMama代表の甲田恵子さん
アズママは、神奈川県横浜市にある小さな会社だ。
しかし、地域で子育てをワンコインでシェアできる仕組みを全国に急速に普及している。
こうしたママたちに支持されている仕組みに、多くの企業が提携を申し込めば、それだけで安心して働けるママは少なくない。
彼女自身がビジネスを語る動画は、こちら。
★虹色ダイバーシティ代表の村木真紀さん
LGBT当事者の実感と、コンサルティングの手法を用いて、大阪を拠点に大企業や行政と連携しながら誰もが働きやすい職場へ改善を進めているNPOの代表が村木さんだ。
レインボー消費の市場の大きさふまえるなら、ビジネスと社会的課題の解決の両方を熟知している彼女のような存在は、グローバル市場に進出する上でも外せない。
彼女の語る動画、こちら。
★ワクワーク・イングリッシュ代表の山田貴子さん
フィリピンで現地の市民を採用してスカイプ英会話事業を日本人向けに展開している山田さんは、神奈川県にあるSFCの出身者で、フィリピンにおける貧困の再生産を止めようとしている。
彼女自身、子育て真っ最中でありながら、日本とフィリピンで事業に従事しており、英語も堪能で、フィリピンで次々に新規事業を広げ、雇用のパイを増やしている。
同社の事業については、『よのなかを変える技術』(河出書房新社)を参照。
★コフレ・プロジェクト代表の向田舞衣さん
化粧することで女性が生きていく自信を取り戻すワークショップを手がけ、オリジナルブランドの製造・販売を通じて途上国の女性に仕事を作り出しているのが向田さんだ。
「効果測定可能であることとか、論理的であることは大事。でも本当は、そんなものいらないくらい、切実なことがしたい」と彼女は言う。
オッサンが知らないままでいる世界観を、彼女は持っている。
★ドリームガールズ・プロジェクト代表の温井和佳奈さん
アジアの女性が自分のやりたい職業で自己実現ができるチャンスを創り、成功をプロデュースするのが、ドリーム・ガールズ・プロジェクトだ。
カンボジアの貧しい女性を対象に、デザインコンテストを毎年開催し、入賞者には日本でデザインを商品化。現地の女性たちに人生を切り開ける夢を与えている。
温井さんについては、このブログ記事(←クリック)を参照。
★Arusha代表の岩瀬香奈子さん
アルーシャは、東京都内にある格安のネイルサロン。
そこでは、難民の女性たちがネイル施術で働いている。
彼女らに仕事を作り出したのが、岩瀬さん。
スタッフに学歴や国籍を問わなくても、収益を上げられる仕組みは作れるのだ。
★PEER代表の佐藤真琴さん
静岡県浜松市でがん患者専用の美容室を営み、格安のかつらを提供しているのが佐藤さんだ。
彼女が独自ルートで仕入れたかつらは、全国の病院や美容室などとの提携によって各地で売られている。
経産省のソーシャルビジネスにも選ばれた佐藤さんの事業も含め、女性の働くモチベーションは男性とは少しだけ異なるようだ。
★Over the Rainbow代表の佐野里佳子さん
若い女性を都内に集め、社会的課題を解決する担い手に育てているのが佐野さん。
社会的課題を解決できる商品をガールズたちと一緒に開発したり、農業女子の啓発にも力を入れている。
彼女については、この動画も参照。
「ツー・ツーバッグ」は、慶応大学の学生サークルの有志がアジア最貧国バングラデシュの現地工場と契約し、開発したもの。
日本で発売し、これまでの消費はいずれも完売し、バングラデシュの雇用を守リ続けている。
女子学生がプロジェクトの代表になっており、就職前の学生が企業や職場に何を求めているかを知ることは、より若い世代の女性にとって働きやすい職場環境や待遇を新たに生み出すのに不可欠だ。
他にも、ギャル社長の藤田志穂さんなど、名前を挙げればきりがない。
彼女たちは、「かながわ女性の活躍応援団」を結成したオッサンたちより知名度はない。
しかし、彼女たちの働く職場での女性労働者の満足度や、商品・サービスを買う顧客の満足度も極めて高く、それらはオッサンたちの経営する大企業よりもはるかに高いはずだ。
上記の10名の女性のもつ「異なる10の視点」によってオッサン経営者が査定されるなら、より若い世代の女性ほど働く意欲がわくはずだし、その成果を「神奈川モデル」として全国に普及させることも夢ではないだろう。
しかし、その意欲は必ずしも「モーレツ・サラリーマン」のようなものではない。
女性だからといって、働き方も一律なものでもない。
当事者の女性が女性の働きやすさを主導し、学歴による序列も、派閥も、タテ社会も失うかもしれない。
当事者の女性が女性の働きやすさを主導し、学歴による序列も、派閥も、タテ社会も失うかもしれない。
つまり、オッサンの知らない世界が、宝の山のように眠っているだけの話だ。
未知のものを導入するには、ガイド役が必要不可欠。
そのガイドに、今年69歳になる岩田さんのようなおばあちゃんだけをアドバイザーにしている現状は、時代遅れ感がハンパない。
もう、21世紀なのに、東京五輪で世界中から笑われる国になるよ。
この応援団は、一度白紙にするか、オッサン10人が頭を下げて「女性と対等につきあいたい」と教えを請うかしないと、税金のムダ遣いに遅かれ早かれ多くの人が気づくだろう。
あなたの住む都道府県では、どうなっているかな?
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