昨年(2015年)8月28日、女性が職業生活でその希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するため、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)が制定された。
この法律によって、今年(2016年)年4月1日から、労働者301人以上の大企業には以下の3点が義務づけられる(※300人以下の中小企業は努力義務)。
(1) 自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
(2) その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表
(3) 自社の女性の活躍に関する情報の公表
各自治体では今、この法律に呼応する形で「女性の活躍応援団」が続々と作られ始めている。
しかし、前のブログで書いたように、神奈川県ではその応援団には「団員は男性とする」とした。
女性活躍推進法の第1章 総則 第二条 3には、こう書かれている。
「女性の職業生活における活躍の推進に当たっては、女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の
意思が尊重されるべきものであることに留意されなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)」
推進するために応援団が結成されたはずなのに、神奈川県は「本人」である女性の意志を反映しないらしい。
行政は、議会で決めたことを執行する機関のはずだ。
神奈川県は、国にケンカを売るつもりなのかな?
いずれにせよ、「男性とする」という応援団の入団資格には、法的な正当性がない。
正当性がないままでも、国の法律に基づいた事業として税金を使える裁量権が地方自治体にあるのだろうか?
法律に詳しい方に教えてもらいたい。
ところで、他の都道府県では、どうなのか?
ネット上に公開されている自治体の公式情報の中からいくつか拾ってみよう。
●「なんだかなぁ」感は、企業トップに当事者性が薄いから?
群馬では、すべての女性の活躍を地域ぐるみで応援するため、女性活躍応援の趣旨に賛同する、地域のあらゆる分野団体や企業を登録団体とする「ぐんま女性活躍大応援団」を組織し、県のホームページで登録団体名、登録団体ホームページURL、女性支援関係認定状況、登録団体から寄せられた「女性活躍応援メッセージ」を公表し、群馬県の女性へ広く発信するという。
群馬では続々と企業が県の公式サイトに応援団の登録をしているが、香川では同様の取り組みを始めたものの、1社しかサイトで登録されていない(2016年1月6日現在)。
青森では、7社だ(2015年12月25日時点)。
愛知では、逆に200社以上の企業・団体が登録されている。
福井にも同様の取り組みがあるが、ちょっとだけ気が利いている。
「ふくい女性活躍支援企業」「ふくい女性活躍推進企業」に登録している企業・団体にから推薦を受ければ、企業内で新規プロジェクトの推進や新たな製品、商品、サービスの企画・開発などに貢献した女性グループ・個人を「グッドジョブ女性表彰」として県が表彰するのだ。
また、豊富な研修実績を持つ県外講師を招き、実践をとおして企画立案やプロジェクト管理のノウハウなどを習得する女性リーダー育成のための体系的研修プログラム「未来きらりプログラム」を平成24年度(2012年度)から実施している。
現在も、平成28年(2016年)4月から平成30年3月までの2年間、「未来きらりプログラム」を受講したい女性を募集中だ。
埼玉では、広報に力を入れるとし、ウーマノミクスをPRする「名刺」を企業トップの方に活用してもらったり、金融機関の窓口などでロゴマークのバッチを着用してもらい、県民の皆様へ発信するという(以下の画像)。
宮崎では、「みやざき女性の活躍推進会議」が結成され、宮崎銀行の代表取締役頭取・平野亘也さんと共に、KIGURUMI.BIZ株式会社の取締役工場長・加納ひろみさんが共同代表になっている。
男女1組で「応援団」の代表を務めるのは、全国でも珍しいのではないか?
こうしてネットでさらっと検索してみるだけで、各地の「女性の活躍応援」のあり方が少しずつ見えてくる。
しかし、ざっくりとした印象では、どれもあまりパッとしない。
というか、「女性の活躍」という点でピンとこないのだ。
なぜだろう?
一つはっきりと言えるのは、男自身が何をすべきか、具体的にイメージできないからだと思う。
たとえば、ふたりとも正社員で共働きの家庭で小さな子を育てていれば、男だって急に熱を出した子どもを迎えに行く必要は出てくる。
そういうケースに、自分の意思だけで通常業務を一時的に放棄して会社を出ることは、組織内外の調整をふまえないと何一つ自己決定できない男性社員にとっては無理に等しい。
神奈川県では、オッサン経営者が雁首を並べて応援団を結成し、男性以外の団員を入れないつもりのようだ。
彼らは指揮系統のトップに立ち、命じる側だから、命じられるままに動くしかない社員の立場がわからないのだろう。
実際、「子どもの迎え? 妻に行ってもらえばいいだろ」という上司の言葉で、昇進・左遷の不安を抱える部下は、黙る他に無くなる。
かといって、妻も正社員なら、彼女の上司から「会社を辞めれば」をほのめかされる。
これでは、どんなに優秀な人材でも同じ会社で長く働くことが難しくなり、生産性は向上できない。
性別とは関係なく、現場の社員の悩みを率直に言える場所がなければ、「トップダウンで命じる経営者どうしがつるんでいればいい」というオッサン文化そのものが変わらないのだ。
誰が「かながわ女性の活躍応援団」の人選を担当したのかは知らないが、オッサンたちが「俺の会社にはこんなに女性が活躍できる仕組みがある」と演説したところで、主役であるはずの女性社員の満足度はわからない。
社内調査で「活躍できてますか?」と尋ねられても、「いいえ」とは言えないからだ。
社長がバイトとして覆面で自社の支店で働くというドッキリのテレビ番組がある。
あれと同じように、女性の活躍応援団に入る企業のトップは、自社の新入社員になってみるといい。
そこで、前述の社員と同じように家庭と仕事の両立に悩み、介護や掃除、料理や隣近所とのつきあいなどに、まみれてみるといい。
トップがそうした当事者性の獲得によって新たな発見や切実な反省をしないかぎり、女性も、彼女の配偶者や家族、友人である男性社員も、オッサンの話に耳を傾けてはくれないんじゃないかな?
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