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■性風俗は、合法化した方が、みんなのためになる

「セックスワーカーの健康と安全のためにニューサウスウェールズ州のセックスワークの非犯罪化を維持してください」

 そんな署名活動が、Change.orgで始まった。
 オーストラリアのセックスワーカーたちによる当事者会「スカーレット・アライアンス」が、自国にある州が性風俗を犯罪化しようとしていることに反対するネット署名を起こしたのだ。

 主に風俗嬢として働く人たちが安全・健康に働けることを目指して活動している日本のグループSWASH(Sex Work and Sexual Health)に所属する要友紀子さんは、その署名の和訳をFacebookで公開した。
 ここにシェアしたい。
(以下、カッコ内が和訳の引用。一部、今一生が修正)


「1995年、豪のニューサウスウェールズ州がセックスワークを非犯罪化にしたのは、ひどかった汚職をなくすためというのもありました。
 政治家たちは、セックスワークを犯罪化すると、汚職を引き起こし、セックスワーカーの人権が守られず、労災でも救済されない、コミュニティの透明性や説明責任のある規制が否定され、公衆衛生にもネガティブな影響があるということの根拠に着目したのです。
 ニューサウスウェールズ州のセックスワークの非犯罪化モデルは、いまや世界でもっとも効率のよい方法として手本になっていて、称賛されています。
 正義(司法)、公衆衛生、条例審議の透明化と人権などの最善な条件は、すべて非犯罪化の効果です。
 セックスワークの非犯罪化は、UNAIDS(国連合同エイズ計画)も勧めています。
 2014年、世界的医学誌Lancetは、『セックスワークの非犯罪化は、HIV感染拡大を防ぐことにあらゆる状況において最も絶大な効果があり、この先10年のHIV感染の33-46%を防ぐことができるだろう』と結論を出しました。
 ニューサウスウェールズ州は、20年以上もトレンドの先を行っていたのです。
 非犯罪化によって正義(司法)も健康も政策も人権も最善な結果をもたらしたのにも関わらず、ニューサウスウェールズ州当局は非犯罪化を撤回しようとしています。
 非犯罪化は、セックスワーカーにとって最善の選択です。
 私たちは、セックスワーカーの健康と安全のための非犯罪化を維持するよう、ニューサウスウェールズ州当局に対しての要請に署名しました」


 「性風俗なんてなくなってしまえ」という声に押され、性風俗を犯罪として取り締まろうとすれば、セックスワークは店や広告チラシという目に見える形では無くなるかもしれない。

 しかし、実際には無くならず、たとえば、女性がたった一人で援助交際のように知らない男とラブホテルに入る恐れが出てくる。
 店ならば、いざ客と揉めた時に男性スタッフに助けを求めることもできるかもしれないが、一人で密室に入った以上、自己責任にされ、ワーカーの人権や命は守れない。

 それどころか、防げるはずのHIV感染拡大を温存し、客からワーカーへ、あるいは客の配偶者や性交渉の相手などにも被害が及ぶ恐れが高まるのだ。
 それなら、セックスワークを犯罪にするのではなく、むしろ合法にして公的な機関の管理下に置いた方が、ワーカー(風俗嬢など)や客、一般市民の誰にとってもメリットがある。

 性風俗に対する生理的嫌悪や、泥臭い現実に向き合わない理想論では、困るのは市民自身。
 それをきちんと理解できるなら、セックスワーカーたちが行政に求めている「非犯罪化の維持」(=合法化)も受け入れられるだろう。
 では、日本の現状はどうか?



●風俗は性の娯楽以上に「新しい福祉サービス」へ進化する?

 日本では、全国婦人保護施設等連絡協議会(全婦連)が2014年末から、厚生労働省、法務省、内閣府に婦人保護事業の根拠法である売春防止法の改正の要望書を提出した。
 彼らは、同法の第4章を抜き出し、人権尊重、自立支援、福祉の視点を入れた新法を制定するよう求めている。
 「売春防止から女性支援へ」という記事に紹介されている(福祉新聞2015年2月9日付より)。

 福祉の視点で風俗の現場を変えようとする動きは、ホワイトハンズも試みている。
 ホワイトハンズについては、この記事(←クリック)を参照されたい。
 201510月、ホワイトハンズ代表の坂爪真吾さんの呼びかけで、ほかの風俗店では雇われにくい属性の女性のみを雇っているデリバリーヘルス店「鶯谷デッドボール」の待機部屋で在籍女性向けに無料の生活法律相談会「風テラス」が実施された。
 ただし、この「風テラス」をプロの弁護士が無償で続けていくことは難しいため、資金繰りが課題になっている。

 もっとも、セックスワーカー自身がどんな風俗や職場、働き方、生き方を求めているのかについては、セックスワークの経験者自身にニーズを確かめるのが本筋のように思える。
 そこで、デリヘリ嬢の経験がある女性・新田さゆりさんが昨年(2015年)12月に静岡県沼津市で開店したデリヘル「マダムローズ」について取材したウートピの記事を読んでほしい。

 新田さんは、「風俗セカンドキャリアプロジェクト」と称した取り組みを始めた。
 貧困化・危険化する風俗の現場を、もっと女性に働きやすく変えると同時に、風俗をやめても生きていけるような選択肢を提供しようという挑戦だ。
 「マダムローズ」では、既存の風俗店にはない以下の特徴がある。

★働く女性のバックマージンは70%
★性的サービスのない「ノンタッチ」のコースがある
★法務・税務の相談も無料
★風俗をやめた後で働ける「昼の職場」を作り出す(予定)

 中でも、セックスワーカーとしての経験を活かし、身体接触のないコースを設け、顧客の性別を問わないようにしたことは、画期的なことだろう。
 身体障害者や高齢者、LGBT、外国人、童貞、草食男子など、これまで性経験が乏しくて自信が持てなかった人が、通常の料金より安く、性の相談を女性にできたり、女性の生の裸を見れる。

 これは、ネットでポルノを見て「おかしな性」を学びかねない若い世代や、女性に対する基礎知識や交際経験の乏しい属性の人を癒やす福祉的なサービスに位置づけられる。
 もちろん、そのためには、顧客が利用しやすいように、地域のホテルまでのバリアフリー導線を情報として伝える必要も出てくるだろうし、高齢者に配慮して待ち合わせ場所にも工夫が必要になるかもしれない。

 そのように新しい市場を開拓したり、働く女性たちの負担を軽くする働き方を作ったり、自立できるための知恵や知識を共有していくことも、従来の男性経営者の風俗店にはありえなかったことだ。
 法制度と現場の両方が変わっていけば、風俗と無縁の一般人のもつセックスワーカーへの偏見も劇的に減らせるかもしれない。
 性の仕事は、娯楽であると同時に福祉になれるのだ。

 21世紀の今なお性風俗やセックスワーカーに生理的嫌悪感をもったり、現実を知らないまま社会から排除したがる方は、要さんの語るSWASHの活動紹介の動画ぐらいは見ておいてもらいたい。



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