平安時代の頃からある民間信仰で、祈るしかできない無力な民が、切なる願いを叶えてほしいと望み、なじみの神社や寺に100回参拝し、祈るのだ。
現代では、「非科学的」と一蹴されるかもしれない。
ただ、今日でも、100回も同じことを積み上げる体験には、力がある。
武田鉄矢・主演のTVドラマ『101回めプロポーズ』は大ヒットしたし、中村航の小説『100回泣くこと』はベストセラーになったし、親に虐待された経験者100人が書いた『日本一醜い親への手紙』も10万部を突破した。
「100」という数字は、現実を動かすだけの不思議な力を秘めているようだ。
レンタル空手家の遠藤一くんについて、マンガ家の方が描いた絵 |
そこで、1年間の休養宣言をして、新規の仕事を入れないようにし、仕事とはべつのことを始めることにした。
それが、「ビートルズ100 songs 和訳&歌唱プロジェクト」だ。
僕は誰もまだやったことがないことを探し、やってみるのが好きだ。
世界中の誰もが知っているビートルズの楽曲は、日本でも直訳本が盛んに出版されているけれど、直訳では何を歌っているのか、さっぱりわからないことが多かった。
なにしろ、50年前に作られた楽曲なので、レコーディング当時の時代状況やビートルズの4人の関係、生い立ちなどの基礎的な背景を知らないと、歌詞の意味がピンとこないのだ。
そこで、そうした背景の知識を確認しながら、まず自分で訳してみようと思ったのだ。
でも、既に発表された直訳の確認でしかない作業は、面白くない。
そこで、メロディに載せて歌えるように、譜割に忠実に日本語を載せるように訳してみた。
意味はそのままで、日本語で歌えるようにしたのだ。
この試みは、Youtubeですでに何人かの日本人が試みていたけど、リズムに合わない訳詞だったり、そもそも誤訳のまま歌っているものが多かった。
そこで、日本語で歌っても違和感がなく、初めてビートルズを聞いた若者が「J-POPじゃん」と錯覚するようなスムーズな訳詞を作り、自分で歌ってみて、それをYoutubeにアップするところまでやってみたのだ。
やってみると、いろいろ発見があった。
ビートルズの楽曲には、明るいメロディでも暗い内容を歌っていたり、意味不明な表現を使いながらも深い示唆が込められていたこともわかった。
また、胆石の摘出手術で腹を切ったので、腹筋に力が入らず、自分の声が思うように出ないこともわかり、小学生時代に合唱部で習った発声法を思い出すなんてこともあった。
そして、遊びで始めたつもりのこの楽しい作業が、思わぬ収穫まで招いたのだ。
●完璧主義を捨て〆切を守れば、「100の魔力」が目覚める!?
今年に入って、Facebookを通じて、「コンさんのビートルズの和訳フレーズと、大阪にいる若手カメラマンの猫写真を組み合わせて本を作りませんか?」というオファーが入ったのだ。
その企画は今、東京の某出版社にプレゼンすることが決まり、具体化に動き始めている。
もっとも、「ビートルズ100 songs 和訳&歌唱プロジェクト」は、休養期間の2015年の1年間で100曲を訳してYoutubeに歌唱をアップしようと決めていたので、1曲1曲を丁寧に訳して歌うほど質を高める時間がない。
300日あまりで100曲を訳して、歌って録音し、Youtubeにアップするのだから、1曲あたり3日しかないわけだ。
しかも、その3日間だって、雑誌連載もあれば、イベントの開催・運営もあるし、雑誌や新聞にコメントするなどの雑事もあるわけで、多忙を極める中で時間を作らないとできない。
自営業者である僕は、休養してると、その分だけ収入が減ってしまうので、なんとしてでも2015年中に作業を終わらせる必要があったのだ。
だから、最初から完璧主義を捨てようと思った。
原詩の意味をちゃんと伝えられてメロディに無理なく乗っていれば、そこで和訳完了。
うまい言い回しが完璧にできなくてもいいと決めた。
自分で歌うのも、何度も録音したところで声が満足に出ないのだから、ワンテイクで完了。
一発撮りで撮り直しをしないのだから、下手に決まってる。
むしろ、100曲の和訳・録音を300日間で終わらせることだけを考えたのだ。
つまり、「質より量」にこだわったわけ。
それでも、前述したように、短期間で数をこなすと、数が増えるたびにビートルズの独特の歌詞の世界がはっきりとわかるようになったし、想定外の仕事にも発展してしまった。
自分が望んでいる以上の良い結果が、100という数字によって生み出されたのだ。
無職でひきこもりだったり、生活保護を受給してる暮らしをしてるなら、余りある「時間」という資産がある。
しかし、お金もありすぎると何に使っていいかわからなくなるのと同じように、時間も腐るほどあると、何に使っていいかわからなくなり、結局は何もしない日々が続いてしまい、自分が生きている手応えやワクワクから遠ざかってしまう。
Youtubeに動画をアップしたり、自作の小説を公開する際も、「いつまでに何点の作品を作る」という〆切を自分で決めて守ることが、生きている実感やワクワクを取り戻すのに必要かもしれない。
そこでは、完璧主義を捨て、100個の作品をまずは作り上げる「質より量」作戦が有効になる。
100個の道も、1個から。
その1個をまず作り、2個めを作る。
この積み重ねが、自分の考える以上の何かを生み出すことがあるのだ。
このように、自分の作品に対して品質で勝負する自信がない人は、数で勝負する道もある。
一つの名作を作ることにこだわるより、100の凡作を作るつもりでいれば、処女作より101作めの作品の出来がはるかに良いことに気づくはずだ。
数はきみを絶対に裏切らない。
世界中で一番有名なミュージシャであるビートルズですら、約10年間のバンド活動期間で200曲ちょっとしか公式発表していない。
1年間あたり20曲しか公式発表してないのだ。
実際には、20曲の何倍もの未発表(ボツ)があったはずで、レアテイクがYoutubeにたくさん掘り出されている。
それこそ、100曲作って、20曲だけを商品として公式発表する繰り返しだったかもしれない。
これは、「100曲達成までがんばれ」という根性主義ではない。
「あれこれ悩まず、楽しいことは、まずやってしまおう」という教訓だ。
量産さえすれば、結果的に残ったものの中からベストなものを選べばいいだけなんだから。
人間、何でも一つのことを100やってみる価値はある。
普通の人にはありえない「100やれる時間」という資産をもっていることは、〆切さえ設定すれば、遊びの中から自分の人生を自分で切り開いていけるチャンスが大いにあるってことだ。
凡作でもいい。
まずは、100個、作ってみようじゃないか。
成功なんかしなくても、その時間だけは自分を輝かせることができるから。
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