日本の魅力を発見し、何度も訪れるなら、ガイドブックにないところを見てほしい。
実際、ガイドブックは外国人受けしそうな有名スポットが多く、落ち着かないかもしれない。
そこで、日本人でも知らない面白い観光スポットを紹介したい。
今回は、関西を起点にその周辺を広域で回るツアーを想定した。
どれも、目からウロコの風景と人物を楽しめるはずだ。
旅行代理店も、こうしたことに目を向けてほしい。
①NPO法人Hoomdoorの「釜Meets」(大阪府)
Homedoor(ホームドア)という大阪のNPOでは、定期的にホームレスの暮らす釜ヶ崎エリア(西成区)をみんなで視察する体験ツアーを運営している。
それが、「釜Meets」(かまミーツ)だ。
ホームレスへの炊き出しに参加したり、ホームレスのおっちゃんの肩叩きをしたり、安くて美味しい釜ヶ崎のB級グルメを味わったり、ホームレスの暮らしをより深く知るワークショップもある。
経済大国3位の日本でも、ホームレスが多いことに驚くはずだ。
次回の日程が決まり次第、応募できる。
3ヶ月に一度、第4日曜日に実施している。
なお、Homedoorでは、ホームレスから生活保護を受給し、新たな仕事を求める人に、「Hubchari」(ハブチャリ)というシェアサイクル事業を実施している。
大阪に滞在するなら、ぜひ利用してみてほしい。
日本のソーシャルビジネスの仕組みの一つを学ぶことにもなる。
②Bankyoフィギュア博物館(三重県)
三重県多気郡には、万協製薬会社の社長が道楽で集めたコレクションを工場に展示した「Bankyoフィギュア博物館」がある。
600円という安い入場料で、化粧品のおまけまで付いてくる。
紀勢(きせい)本線の相可駅(おうか・えき)から、徒歩20分。
大阪駅から相可駅までは2時間30分ほどかかるが、ちょっとした電車旅行を楽しめる。
展示物は、アニメ関係・ドール・プラモデル・プラレール・ミリタリー・特撮など、国内外の有名キャラ関連のコレクションになっている
また、撮影スタジオも併設され、衣装のレンタルもあるので、コスプレ撮影もできる。
オタクなら珍品に萌えるだろうし、親子連れならパパが懐かしさで喜ぶはずだ。
Facebookで開館情報もわかる。
なお、このフィギュア博物館を作った万協製薬の松浦信男・社長は、地元の高校生にNPOを作らせ、そのNPOを通じて高校生自身がスキンケア製品を開発できるというプロジェクトも試みるなど、面白い人物として社会貢献シーンでは有名だ。
ちなみに、このエリアでのお泊りは、相可駅から乗り継いで30分ほどの伊勢市駅にあるゲストハウス「ユメビトハウス」を推奨したい。
1泊2300円の安さで泊まれるだけでなく、国内外のツーリストやバイカーが毎晩集まって交流している楽しい場所だ。
③クシノテラス(広島県)
「クシノテラス」は2016年4月にオープンする日本初のアウトサイダー・アートの専門ギャラリーで、オフィスでは展示関連のトークライブも行われる。
山陽新幹線の福山駅から徒歩15分。
「ユメビトハウス」のある伊勢市駅からだと、新幹線を使っても4時間ほどかかるが、午前中に出れば昼下がりには到着できる。
アウトサイダー・アートとは、美術教育に毒されていないアーティストによって創作されたアート作品のこと。
このギャラリーのキュレーターは、これまで知的障害者やホームレス、死刑囚、ヤンキーなど、社会的に排除されている人々の作る作品を積極的に展示で紹介してきた。
展示作品は買うこともできるため、その購買によってアーティストの生活と創作を支援することにもなる。
アウトサイダー・アートの展示は、「アートとは何か?」「美とは何か?」を根本的に疑わせる。
「なんだ、これは!?」というショッキングな体験が、そこにはある。
世界的に注目を集めるアウトサイダー・アートの世界は、アートに興味のない人ほど、面白く感じてもらえるはずだ。
この日は福山駅で宿泊してもいいし、新幹線を使えば20数分で広島駅まで行けるので、原爆関連のツアーにも参加できる。
④シックス・プロデュースの牧場(島根県)
シックス・プロデュースは、交通アクセスが悪い島根県にある牧場を運営する会社だ。
もっとも、牧場はどこの国でも交通アクセスの悪い山間部にあるので、交通時間をかけても行く価値があると思えば、外国人でも足を運ぶだろう。
では、この牧場の見るべき価値とは何か?
今では少数派になってしまった完全自然放牧だ。
みんなが今、ふつうにコンビニやスーパーなどで買って飲んでる牛乳は、牛舎につながれ、死ぬまで妊娠→出産→搾乳→妊娠→出産→搾乳…というくり返しを強いられる雌牛から大量に搾り取られたものだ。
ところが、シックス・プロデュースでは牛舎がないため、野原に牛が勝手に草を食って、交尾したい時に勝手に牛どうしが交尾する。
そこで偶発的に生まれた子牛にやる乳を人間のために少しだけ分けてもらうスタイルで、商売をしてるんだよ。
手間のかかる酪農スタイルだが、その乳も、その乳で作ったジェラートは絶品!
ここの牛乳を飲むと、ふだん飲んでる牛乳が水っぽく感じられるはず。
この牧場については、『社会起業家に学べ!』(アスキー新書)に詳しく書いた。
牧場までは、石見川越駅(いわみかわごえ ※三江線)から車で30分ほど。
石見川越駅は広島駅からだと5時間40分ほどなので、早朝に広島を出れば、午後には牧場だ。
見学や視察は、あらかじめメールで予約すればできるので、シックス・プロデュースのサイトの一番下にあるメールアドレスから問い合わせてみよう。
こうした情報は、なかなか旅行代理店の目に止まりにくいが、観光とは何も歴史的な建築物や伝統的な芸能を見るだけを意味しない。
その土地にある最新かつ先進的な取り組みを目にすれば、自分自身のふだんの暮らしや価値基準を見直す大きなチャンスになる。
前述したスポットは、どれも体験的なアトラクションともいえるし、皮膚感覚で感動できるインパクトがある上に、印象的なビジュアルとしてSNSでも伝えやすく拡散しやすい。
アクセスが悪くて道に迷ったら、英語で案内してくれるSkypeサービスとセットなら、上記の4箇所を周るツアーを売り出すことも可能だろう。
スマホやiPadでもSkypeは使えるから、長旅の自由が利く学生や若者が、日本の地方に眠っている面白い観光スポットを発掘し、SNSで拡散してくれれば、世界中から人が集まりやすくなる。
H.I.Sあたりの大手旅行代理店が、そのように観光や旅を根本から見直すソーシャルデザイン・ツアーを企画したいなら、僕はいつでも相談に乗りたいと思う(※成果報酬で結構)。
日本へのリピーターとしてインバウンドの外国人を増やし続けていくには、何度も京都や長崎などの「いかにもな観光地」だけではなく、外国の若者と同世代の日本人が進めている面白いプロジェクトをツアー・ポイントとして視野に入れておく必要があるだろうから。
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