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■全国から優秀なNPOを誘致する佐賀は日本を変える!?

 日本財団canpanプロジェクトの山田泰久さんのFacebookの書き込みで、佐賀県がNPOを誘致して県民自身が社会的課題を解決できる体制を整え始めていることを知った。

 多くの自治体は慢性的な予算不足だが、そこで大企業を誘致するような発想ではなく、地域の課題を解決できる優秀なNPOを他県から誘致して活動拠点にしてもらうのは、課題解決にとって極めて費用対効果の良いあり方になりうる。
 実は佐賀県では、2010年から「CSO提案型協働創出事業」を始めていたのだ。


 CSO(市民社会組織 Civil Society Organization)とは、市民の観点から自発的・公共的な活動を担いながら、社会変革を 目指している団体を総称したもの
 社会的ミッションを軸として結集し、公共的利益や課題解決のために活動するNPOや、地縁型組織や社会的企業(社会起業家)なども含んでいる。

 CSO提案型協働創出事業とは、「私たちならもっと質の高い公共サービスを提供できる」というCSOからの提案を募集し、県や市町村と協働して事業をやろうというものだ。
 佐賀県はこのCSO提案型協働創出事業のスタートが認められ、日本で初めて国連公共サービス賞を受賞した(2010年)。
 とりあえず、佐賀県が作ったPR動画を見てほしい。



 佐賀は、東京まで飛行機で1時間半で日帰りができる。
 国際的な大都市・福岡までは、電車で30分だ。
 寄付・ボランティアも集めやすい「人懐っこい県民性」もあり、佐賀から日本を変えていけるという。
 佐賀県のふるさと納税は、寄付者が応援したいCSOを指定して寄付できる。
 これは、全国でも珍しい制度とか。

 活動拠点を佐賀に移し、人を雇用した場合、佐賀県はそのCSOへ「佐賀県誘致CSO活動支援補助金」として補助金を出す。
 補助金額は、50万円×(新規雇用者数+配置転換者数)の計算式により算出した金額(予算の範囲内)。
 補助対象経費として、事務所等賃料、人件費、旅費、機器取得費、需用費、役務費などを申請できる。
 補助要件は、佐賀県への進出にかかる協定を締結した日から6ヶ月以内に新規雇用又は佐賀県内への人材の配置転換を行うことなど。
 補助金に関する詳しい要件等については、このページを参照されたい。

 この制度によって既に佐賀県へ活動拠点を移したNPOには、暗闇の中で五感の気づきやコミュニケーションなどを楽しむソーシャルエンターテインメント“ダイアログ・イン・ザ・ダーク”で有名なダイアローグ・ジャパン・ソサエティや、世界中で難民や被災者などを支援してきたピースウィンズ・ジャパンなどがある。
 もっとも、佐賀県がなぜ他の自治体に先駆けてCSOの誘致に積極的なのか?
 それを考えてみる必要はあるだろう。


●財政が苦手な知事と県議は、潔く全国にいる知恵者を頼れ

 日本創成会議・人口減少問題検討分科会の推計による「消滅可能性都市」は、2014年に896自治体に上ると指摘された。
 2010年から30年間での2039歳の女性(出産適齢期)の人口の予想減少率を見ると、佐賀県では多久市55.1%、嬉野市53.3%、基山町62.1%、みやき町55.2%、玄海町59.1%、大町町57.1%、白石町50.6%、太良町64.8%。

 佐賀県では8市町が「消滅可能性都市」なのだ。
 2014年5月14日付の佐賀新聞には、こう書かれている。

 これは九州に顕著な傾向で、出生率の高さと同時に、人口移動が地域の存続を大きく左右している。
 分科会(※前述の日本創成会議・人口減少問題検討分科会は試算だけでなく、対策も掲げ、「若者に魅力ある地方拠点都市」をつくるように提言している。
 その拠点都市を中核にして周辺の市町にも若者がとどまるといい。
 流出を防ぐだけでなく、大都市に出た若者を地方に呼び戻す施策も必要だろう。
 地方から大都市への若者流入が、日本の人口減少に拍車をかけている。
 「人の流れ」を変えれば、人口減少に歯止めがかかるかもしれない。
 これまでも各自治体は、企業誘致や農林水産業の支援など若者が地元で就労できるように、住み続けられるように努力をしてきた。
 しかしそれでも多くの自治体で人口減少が進んでいく。

 こうした事情をふまえて佐賀県のCSO誘致策を読み解くなら、地元の政治家や県の役人が考えた政策や条例では人口減少に歯止めがかからなかったことを、佐賀県は全国で初めて潔く認めたことになる。
 だから、他県から優秀なCSOを招き、「良い知恵をくれ。その仕事にお役所を乗っからせてくれ」という意味で、「CSO提案型協働創出事業」を始めたのだろう。
 言い換えるなら、有権者である佐賀県民が人口減少に無策な県議や知事を選んでしまったツケを、他県のCSOに支払ってくれとお願いしてるわけ。

 そこで、地元の財政を担う県議や県知事がどれだけ優秀か(あるいは無能か)を知る一つの基準である財政力指数を見てみよう。
 総務省の発表するデータに基づく財政力指標は、基準となる収入額を支出額で割り算した数値。
 では、自治体の財政力を示す指標=財政力指数は佐賀県の場合、どうなのか?
 1.0であれば収支バランスがとれているが、それを下回れば財政力が弱くなっている証だ。

 かつて東京都と愛知県だけが1.0を上回っていた。
 だが、2012年度では、ついに東京都も愛知県も1.0を下回った。
 地方自治体全体では、飛島村(愛知県)が驚異の2.0超えの反面、佐賀県は0.30-47都道府県中、36位の下位。
 佐賀県の県議や県知事は、全国でも財政の苦手な部類に入る人たちなのだ。
 だから、自前では「若者に魅力ある地方拠点都市」を作れず、他県から”知恵者”を集め、そこに行政の役人をからませ、自分たちも”知恵者”の手柄のおこぼれにあずかりたいというわけ。

 ただし、役人や議員が考えるそんな都合の良い思惑は、長い目で見ると裏切られるかも。
 なぜなら、優秀なCSOであれば、地方ならではの安い人件費と家賃によって地域の課題を解決する仕組みの普及に本腰を上げれば、それまで行政がやっていた事業も費用対効果の良い仕組みに変えていけるし、それによって市民の共感も広がっていく。

 そうなれば、前年度までの大きな予算を割く必要もなくなり、「その事業を担当する役人の人数もムダだ」と多くの県民が気づくので、公共事業を税金でやる正当性はどんどん薄まっていく。

 そうなれば、役人のリストラがどんどん進むだけでなく、それまで愚かな政策に税金をじゃぶじゃぶ使ってきた県議や県知事にも、県民から「NO!」を突きつけられることになるだろう。
 そうした身を切る覚悟で優秀な民間人からの提案による事業と協働していくのなら、佐賀県の知事や県議はなかなか大したものだ。
 それでこそ、「佐賀から日本を変えていける」という言葉に説得力がついてくる。

 こうして市民自身による地域社会の課題解決という「自治」の文化が根付いていけば、既得権益を壊し、政治や行政の力を最小化・最適化していくことができる。
 税金をじゃぶじゃぶ使って費用対効果の悪い社会的課題の解決政策を打ってきた歴史が終わり、民間資金で課題解決できるようになれば、政治家も役人も存在価値が低まるからだ。
 そうなればこそ、「自分たちの暮らす社会は(政治や行政まかせではなく)自分たちで作る」という国民主権の自意識も生まれ、日本人は初めて民主主義を理解できるのだろう。

 これは、国家財政も同様だ。
 財源を作り出せず、増税と借金でしか歳入不足を補えない愚策をとる政治家や官僚に「おまかせ」だった国民が、戦争さえやりかねない権力の暴走を食い止めるには、優秀なCSOの台頭と、それによって市民の間に広く「自治」の意識が目覚めることが必要不可欠なのだ。

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