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■親からの虐待でつらいなら、自殺より家出を!

 2013年秋、神奈川県相模原市で小学校6年生だった少年の顔にあざがあるのを学校が気づき、児童相談所(児相)に連絡した。
 児相は親からの虐待と認定したが、翌20145月に少年は「暴力を振るわれている。家に帰りたくない」とコンビニに駆け込んだ。
 その後もトラブルは続き、「親と離れて施設で暮らしたい」と助けを何度も求めていた。
 だが、果たされず、彼は同11月に首を吊り、意識不明のまま今年2月に亡くなってしまった
毎日新聞2016年3月22日付より

 なぜ少年は、親から虐待されながら、首を吊らなければならなかったのか?
 この国の児童福祉が機能不全のまま、改善の見込みが無いからだ。
 児相は20年以上も前から深刻な慢性的な職員不足で、虐待の相談件数は増え続ける一方なのだ。
 2014年度(平成26年度)の児相への児童虐待の相談件数は、年間8万件を突破した。
 速報値で8万8931件と9万件に届く勢いだ。

 この増加の追い風には、以下の2点の条件があることを政府が明言している。
①前年に「子ども虐待対応の手引」きが改正され、心理的虐待の例示に兄弟に対する虐待が追加されたこと
②配偶者に対する暴力がある事案について、児相へ警察からの通告が増加したこと

 これだけ虐待相談が急増しているのを見れば、児童相談所の機能不全は否めない。
 対応に当たる児童相談所の職員は慢性的に不足しているし、親権が強すぎて早期に虐待親の親権を一時停止するのが困難だし、未成年は有権者ではないので政治家も児童福祉への予算を劇的に増やそうとしない。

 こうした状態は、実は1990年代でも同様だった。
 だから僕は『完全家出マニュアル』という本を1999年に書き、未成年でも合法的に自立できる方法を示したのだ(※既に絶版だが、古本か図書館で読める)。
 虐待する親から早めに避難しないと、冒頭の少年のように首を吊ってしまいかねない。
 10-20代の死因の1位がずっと「自殺」であることは、前のブログ記事でも紹介したが、これから人生を歩んでいく10代を殺しているのは、「家出は不良」というトンデモな思想なのだ。



●自殺を考えるくらいなら、家出して面白い人生を始めよう!

 家出すると、家出した本人になにか困ることがあるのか?
 少なくとも、犯罪に巻き込まれたりするような深刻な事態があるのか?
 『完全家出マニュアル』を作る際、それを調べてみた。

 警察発表の統計では、家出人として保護された未成年が犯罪の加害者・被害者になるケースを当時7%と発表していた。
 家出に関するテレビや新聞、ドラマなどもチェックしていた僕は、この数字を最初、信じられなかった。
 しかし、家出人100人調査を独自にやってみると、やはり10%未満だった。
 ほとんどの家出人は、ふつうにアパートを借りて、仕事をしていた。
 家出したからといって、犯罪に巻き込まれるような深刻な事態に陥ることはまれなことなのだ。
 僕も当時は、テレビや新聞などにすっかり毒され、騙されていたのだ。

 家で親から虐待され続け、自殺にまで追いつめられる危険にさらされている未成年にとっては、家より家の外の方が安全と安心を確保できるチャンスが大きい。
 それが現実だ。
 そこで、べつの観点で検証してみる。
 犯罪に巻き込まれた未成年の中で、家出人は多いのだろうか?
 警察庁の生活安全局少年課が発表している「平成26年中における少年の補導及び保護の概況」を見てみよう。
 平成26年中では、福祉犯被害少年6,341人中、家出少年の総数は390人で、全体の6.2%にすぎなかった。
 これも、家出することで被害に遭うなんてレアケースであることを示している。
 むしろ、もともと犯罪に近い人間関係だった人か、あるいは犯罪に関心を寄せてしまう人が家出人にもわずかにいると考えたほうが実情をふまえた解釈だろう。
 家出と犯罪は、「ほぼ無縁」だ。
 むしろ、家出することで「死因1位」の自殺のリスクを減らせる。

 では、なぜ家出は不良行為のように語られてきたのか?
 おそらく、「親子関係はよく話し合えばわかりあえるはずだ」という神話を信じる人が少なくないからだろう。
 それは、親子関係にさほど問題を感じないで済む人たちの「良識」が、児童虐待という深刻な現実を知らないまま押し通そうとする人たちによって、常識や報道、国の政策の中にどっしりと定着させられた歴史があるから、かもしれない。

 家出に関心を持って調べてみるということを、ふつうの人はしない。
 家出した当事者を探し、彼らの声をちゃんと聞くこともない。
 だから、マイノリティ(社会的少数者)である家出人の声を聞く前に、ニュース報道などで植え付けられた妄想のまま家出を語ることになるのだろう。
 しかし、現実を知った今、僕らが親に虐待されている未成年に言うべきは、「児相に保護を求めても断られたら家出しよう」だ。
 家の中で父親にレイプされる毎日が続くより、家の外で生きる方がよほど安全だ。
 家の中で母親に心と体を傷つけられ続けるより、家の外の仲間といる方が安心だ。

 社会には既に、保証人不要で即入居できるシェアハウスもあれば、前払いする家賃を調達するために中古品を売れるネットショップやヤフオクもあるし、その後の暮らしを支えていくための仕事もネット上には山ほど紹介されている。
 どうしてもその子の済む地域にシェアハウスや仕事がなければ、東京などの大都市に青春18きっぷでやってくればいい。
 どうしても仕事がなければ、元気なおばあちゃんたちがたくさんいる施設に足を運んで、スマホやパソコンを教えてあげたり、マッサージをしてあげる出張サービスで日銭を稼ぐこともできる。
 小学生なら民間の子どもシェルターに入れるし、民泊できるところも増えてるし、中学生で起業して自分の仕事を自分で作ってる子もいる。

 時代はどんどん変わってきているんだ。
 家の外は、家の中より、怖くない。
 つらい状況に耐えてきた子どもを邪険にする人ばかりではないのだ。
 親から避難したいなら、この社会には既に多くのシェルターがあることを忘れないで。
 きみは生きていい人間なんだよ!

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