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■社会の姿は、政治と民間の両輪の仕事で作られる

 日本社会には、深刻な社会的課題が山積している。
 その一つが、「子どもの貧困」だ。
 親が貧しいために、子どもが十分な食事にありつけないまま、地域の片隅で親子が孤立し、貧しさをさらにこじらせてしまうという課題だ。

 厚生労働省が発表した「子どもの相対的貧困率」によると、2012年の時点で過去最悪の16.3を記録した。
 17歳以下の6人に1人に相当する約325万人の子どもが、貧困状態にある。
 325万人の子どもが今、「おなかがすいて眠れない」現実を必死に生き残ろうとしている。
 しかも、貧困率は先進国の中でも高く、ひとり親世帯では最悪の水準だ。

 そこで政府が主導する形で「子どもの未来応援基金」を立ち上げ、2015年10月から日本財団がその基金で運用するための金を寄付で募った。
 すると、今年(2016年)5月1日の時点で、1億6000万円が個人・法人などから集まったという。

 一見、巨額に見えるかもしれない。
 しかし、子ども1人の食費の月額が1万円に抑えられたとしても、年間では12万円になる。
 1億6000万円÷12万円=約1,333人
 47都道府県もある日本全国で、たった1333人分の貧しい子の食費代にしかならない。
 325万人の子どもが今、「おなかがすいて眠れない」のに、だ。

 6月から基金に集まった現金を、全国の子ども支援の市民団体に配るそうだ。
 たとえ、その金が団体を通じて子どもの食費に充てられても、最大で1333人。
 団体が人件費や光熱費、事務所費などに使うことで、より多くの子どもに食事を提供できる仕組みを作れるなら、1333人以上に増やせることも可能だ。
 しかし、その仕組みをどう作るかは、団体の代表者やスタッフの裁量次第。
 仕組みを間違えれば、直接給付なら1333人よりはるかに下回る恐れも十分にある。

 いずれにせよ、切実に食事を必要とする子どもにこの金が行き渡る保証は、どこにもない。
 それが、政府主導による「官民一体の取り組み」の実態であり、政治的解決の限界だ。
 しかし、政治的解決にばかり頼ろうとせず、民間で市民自身が動き出せば、もっと効率的に、もっと速やかに、もっと自由に子どもの貧困を解決できる余地が大きい。

 神奈川新聞の2016625日の記事によると、鶴見駅近くのラーメン店「北海道ラーメン赤レンガ」(横浜市鶴見区鶴見中央4-19-18 八千代ビル1F)は629日(水)、「子ども食堂」を始めるという。
 店長の原賢美(かしみ)さん(56歳)は、幼少時にひとり親家庭で育ち、兄弟だけで夕飯にラーメンを食べた経験がある。
 「同じ境遇の子たちを励ましたい」と月1回、ひとり親家庭の小学生20人にラーメンセットを無料提供することにしたのだ。
店長の原かしみさん(神奈川新聞の記事jより)

 7月以後も、毎月第4水曜日の午後5時から1時間、しょうゆラーメンとギョーザ3個、半ライスのセット(1000円相当)を無料提供するという。
 同店にはテーブル席も16席あるため、宿題もできる。
 対象は市内在住のひとり親家庭の小学生20人で、事前予約制。
 問い合わせや予約は、同店の電話045-503-40464まで。
北海道ラーメン赤レンガ

 原さんは、月1回、1時間だけ、1000円☓20人分=2万円を自己負担することになる。
 実際は、20人前の料理を無償で提供する分だけ、他の一般客のために料理を作る時間が無くなるため、その時間帯の儲けは減ることになる。
 それでも毎月実施すると宣言した原さんの男気に惚れたなら、一度くらい、この店に足を運んでみてほしい。


●無理なく、楽しく、気軽にできることが、民間の社会変革

 原さんの取り組みに共感したなら、以下のようなアクションを始めてみてはどうか?
★この店を覚えてるうちに、友人を誘って食べに行くアポを決める
★店のファンになったら、facebookでファンページを作って継続的に応援する
フードバンク活動に声をかけ、食材の無償提供を打診する
★店の近くまで行く時は、外観だけでもスマホで撮影し、SNSで拡散する
★小学生の子どもがいるひとり親を知っているなら、メールで教えてあげる
★月1回、「子ども食堂の応援オフ会」をこの店で開催し、売上に貢献する
★「#子ども食堂」のハッシュタグでこのブログ記事を拡散し、地元市民に情報を届かせる

 このように、「応援したい!」と思ったアクションは、自分にできる応援を1つだけでも実行すれば、原さんは売上を損ねることなく、子ども食堂をいつまでも続けることができるようになる。

 数ヶ月後、原さんが持続的に子ども食堂の試みを続けられる様子が他の飲食店のオーナーたちの耳に入れば、「うちの店もやってみようか」という気持ちにさせられるだろう。

 地域の貧しい家の子どもたちを救うというアクションをすれば、地元市民から応援され、「愛される店」に育っていく。

 そうなれば、経営者なら「これは商売の持続可能性を担保する」とピンとくる。
 地元の商店会や青年会議所も、「鶴見エリア30店舗・子ども食堂プロジェクト」を始めるだろうし、高校生や大学生が地域内の飲食店を1店ずつ口説いて回ってみてもいい。

 地域には、和食の定食屋、イタメシ屋、ピザ屋、ハンバーガー屋など、さまざまな店がある。
 コンビニやファミレス、カフェや居酒屋だってある。
 それらが続々と「うちもやる!」「俺もやるぜ!」と続々と参加し始めれば、市民も自分が無理なくできる貢献のあり方を考えるようになるだろう。

「じゃあ、私は栄養士なのでバランスの良いメニューを店側と一緒に考えます」
「それならウチは食品メーカーと取引してるから、原価での入荷を打診してみよう」
「私は塾を経営してるから、宿題を見てあげられるよう、講師を派遣しよう」
「僕は学校でソーシャルデザインを学んでるから、新たに20名の子を飢えさせない仕組みを作る」

 …という具合に、それぞれの市民が自分の能力・資質を活かして子ども食堂を盛り上げれば、子育てを地域のみんなで頼り合い、助け合える文化も作り出せる。

 実際、原さんと同じように子ども食堂を始める店が、鶴見駅周辺エリアに30店ほどでき、20人の子どもたちと20人の親たちが日替わりで店を転々とすれば、それ自体が30店舗に加盟した店にとって”クチコミ宣伝”となり、集客増が見込める。

 参加店舗は、親子が安心して食事ができることが証明されたようなものだからだ。
 これは、新聞記事やテレビのニュース番組でも取材したくなるネタだろう。

 しかも、30店舗を地図上とリスト化で示せるようにし、スタンプ・ラリー形式で全店制覇すれば特典がつくようにすれば、遠方からの集客も見込めるし、該当店舗の周辺にある飲食店以外の店舗にもお金が落ちるようになる。

 つまり、子ども食堂を同じ地域内で30店舗まで拡大するプロジェクトは、それ自体が町おこしになるのだ。
 参加店舗では、近隣の高校や専門学校、大学などから子どもに勉強を教えるボランテイアの学生たちを呼び寄せれば、集客増で店側の自己負担も相殺できる。

 困っている人に少しでも力を貸そうと動き出せば、みんなが幸せになるのだ。

 これが、政治に頼らず、市民自身が社会的課題を解決できる仕組みだ。
 無理なく、楽しく、気軽にできるアクションは、より多くの人を巻き込み、アクション前なら考えられなかった稼ぎが多様に生まれ、満足度の高いまちづくりになる。

 最初から大きなことを考えるのではなく、誰もができる小さいアクションを始めてこそ、より多くの人が真似できるため、大きな変革のムーブメントに育てやすいのだ。
 しかも、税金を一切使わないので増税や借金の必要もなく、若い世代へのツケ回しもない。
 政治家の出る幕もないので、権力で支配されることもない。
 法律を作らなくても、市民自身が運営の仕組みを自由に作ればいいし、仕組みに問題があれば民間だからスグ改善できる。
 それでも、政府主導の「子どもの未来応援基金」にばかり期待し続けるの?

 SEALDsの奥田くんらは、参院選を前に政治的解決にばかりこだわって、若者による提言「PROPOSAL2016」を6月26日に渋谷駅前で発表した。

 しかし、社会は、政治の仕事と民間の仕事の両輪で作られている。
 そして、政治より民間で動く方が自由だし、政治より大きな変化を社会に速やかに作れる。

 民間で日頃から社会変革の仕事を続ければこそ、「僕もこの社会を作り変えられる主人公」という主権者意識がより多くの人に目覚め、政治家や官僚よりも優秀な課題解決の仕組みを作れるようになるのだ。
 政治にばかり期待できるのは、政治家まかせでも課題解決を待てる余裕のある人だけ。
 貧しい人は政治的解決など待ってられないから、市民として民間でできることを始める。

 今日では、全国各地で、世界中で、市民自身が課題解決に動き出している。

 その課題解決の仕組みを作り出すソーシャルデザインソーシャルビジネス(社会起業)も、高校や専門学校、大学などで教えられている。
 なのに、誰に投票しても変わり映えがない選挙にばかりこだわっていれば、同じ世代の若者たちからも、遅かれ早かれそっぽを向かれてしまうだろう。

 立候補者の政策を少しでも知ろうとすれば、高校生や大学生だって「よくわからない」と素直な感想を持つ。
 選挙や政治に関心を持つのと同じくらい、市民自身が生きづらい社会を変えられるだけの課題解決の仕組みを作り出している現実に関心を持ってほしいものだ。



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