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■ロフトプラスワンはなぜ20年以上も続いたのか?

 元ストリッパーの友人から、「劇場を作りたい」とSkypeで相談を受けている。
 そんな時、ロフトプラスワンが20年以上も続いているスゴさに思い当たった。

 ロフトプラスワンとは、新宿に1995年に作られた「トーク」のライブハウスだ。
 連日、異なる「1日店長」が話題とゲストをステージに持ち込む。
 この1日店長はその日の企画者だが、チケットノルマなど無く、売上が一定以上になれば、店からギャラが出る(※些少なので誰も当てにしないが)。

 こうして毎日違うテーマでステージと客席との間で話し合いが交わされるのだ。
 同店の公式サイトには、こんな言葉が掲げられている。


 この「なんでもあり」を本当に実現してしまうところに、同店を作ったロフトプロジェクト席亭・平野悠さん(下記の写真)のスゴさがある。

 オープン以来、ロフトプラスワンのステージや客席には、AV女優・政治家・ヤクザ・おたく・新興宗教団体・右翼・左翼・変態・メンヘラ・前科者・フェミニスト・学者・ジャーナリスト・ニート・起業家・医者・アイドル・映画監督・障害者・格闘家など、有名・無名を問わず、じつに多種多様な人材が彩った。

 20年以上も前の当時、毎日トークライブを行う「トークライブハウス」は日本には存在せず、寄席か、シンポジウムを時々やるようなハコしか無かった。
 だから、周囲から「いつまで続くか」「当たらない」と否定的な意見が聞かれることが珍しくなかった。
 しかし、平野さんはオープン当初は、「客が入らない」「なんとか助けてよ」と会う人会う人に声をかけていた。

 こんなわけのわからん店、最初は「ぴあ」とか「東京ウォーカー」とかの情報誌はスケジュール載せてくれなくってさ。
 仕方がないので有料広告をうったのが、「噂の真相」「創」「ガロ」「模索舎月報」(当時この辺が一番安かった)だったっけな。
 当時この店の適当に考えたコンセプトは誰も理解してくれなくってさ~。
(中略)
 今でこそめったにないけど、当初はいろんな出演して欲しい著名人に電話して企画書送って出演交渉すると「なに~! 私に酒の席で喋れって言うのか、バカにするな!」って何度言われたか?
 「私の講演料は1時間30万円です。払えますか?」なんて言われて、もう「そんな偉い奴なんか来なくっていいよ」って思った。
(ロフトプラスワン10周年について平野さんが書いた文章

 初めのプラスワンのスケジュールを今見てみると、みんな自分の知り合いですよ。
 いろいろな人に電話をかけても誰も出演してくれないし、だから酒呑んでワイワイやれて、お客さんからチャージは取らない。ギャラも払えないけど、酒は呑ませますよぐらいの感じで営業していたね。
 毎日赤字だった。モロな赤字が23年ぐらい続いたかな。
 だけど自分の友達が、さらに友達を連れてきて徐々に賑わうようになっていったんだよ。たとえばAV監督のバクシーシ山下さんが客で来たら、彼がカンパニー松尾さんを連れてきたり、さらにそこから他の監督も来るようになったりという感じでね。(中略)
 酒を呑みながら、出演者と客がフェイス・トゥ・フェイスで向き合って、時には殴り合いになることもあるんだけど、そんなことも含めて楽しんじゃう空間というのがそれまで日本になかったからじゃないかな。
(ロフトプラスワン20周年についての平野さんへのインタビューより)

 商売には、「どんなに人にどんな価値を提供するのか?」という命題が付きまとう。
 客の顔が見えて、その客が喜ぶ価値を明確に言葉にできないと、商品として成立しないのだ。

 ロフトプラスワンは、日常の一般社会ではマイノリティとしてはじかれてしまいそうな人たちに、「サブカルの殿堂」としての居場所という価値を提供している。
 これぞ、社会的包摂そのものだろう。
 少なくとも高学歴エリートばかりが集まってダイバーシティを議論してるような大学の学術系シンポジウムより、はるかに多様で有益な社会性が体現されてるといえるだろう。

 同時に、既存のイベントのありようや演出に対する不満を回収するだけの「ゆるさ」が同店にはあったことも特筆すべきことかもしれない。



●田舎でも多目的のトークライブハウスを作れないか?

 実際、自治体や学校、民間のカフェで行われている「ふつうのトークライブ」では、酒も飲食もタバコも禁じたまま、黙って1時間以上もステージにいる人の話を一方的に聞かされるばかりで、最後にとってつけたような質疑応答があるだけだ。
 そういうお硬いトークイベントで得るものは、そこで使う入場料や時間に対して多いとはいえない。

 ロフトプラスワンでは、「1日店長」になった人が有名人だろうが、ステージで話してる最中に「わからないよ!」とか、「ちょっと待って!」という声が客席から飛ぶ。
 そのように双方向のコミュニケーションが気軽にできるところに、属性や立場を超えた対等な関係が演出できるし、その場での名刺交換や友人の紹介も進むのだ。

 これは、ルールに縛られている不自由さを疑いもしない学校や自治体ではできないことだし、そこに民間のビジネスチャンスがある。
 既存のトークイベントではなく、ロフトプラスワンのような「ゆるさ」と「寛容さ」を備えたトークライブの市場はまだまだ開拓の余地がある。

 事実、ロフトプラスワンのスタッフだった男は、独立して東京カルチャーカルチャーを運営しているし、ロフトグループでもネイキッドロフト、阿佐ヶ谷ロフトA、ロフトプラスワンwest(大阪)、渋谷Loft 9とトークライブハウスを増やしてきた。
 ネイキッドロフトの店長だった男は、高円寺パンディットというトークライブハウスを運営している。

 僕もロフトプラスワンのオープン以来、同店でさまざまなイベントを行ってきたが、どんなタイトルにし、どんなゲストを呼べば、どれだけの客を集められるかを学ばせてもらった(※下記の動画は、2015年6月15日にロフトプラスワンで行ったトークライブ)。



 ここで冒頭の元ストリッパーの作りたい「新しい劇場」を考えると、既存のストリップ小屋や芝居小屋、あるいはロフトプラスワンのようなトークライブハウスには無いものを価値として言葉にするところからしか、商品として成立しにくいだろう。

 既にあるハコと同じようなハコにするなら、既存のライバル店との熾烈な競争の中に参入していく厳しさを覚悟する必要がある。
 人はそこにしかないものを楽しむために、その時間を空け、その店に足を運んでお金を払うのだから。

 自分は、どんな人にどんな価値を売りたいのか?
 どんなガマンをしてる人に、どんな解放を提供したいのか?
 それを突き詰めて言葉にすれば、おのずと「新しい劇場」の姿が見えてくる。
 それは「食えるアーチストになれる劇場」でもいいし、「誰も見たことのないショウが観られる劇場」かもしれない。

 ハコを作るのではなく、定期的なイベントができればいいのなら、僕ならたとえば2時間で終わるトークライブの企画・運営を学校や企業などから受注し、そこを舞台にネット配信とアーカイブを含めた運営費を1回10万円~で月2回の年間契約から請け負うだろう。
(※そうしたトークライブ運営を発注したい方は、conisshow@gmail.comまで)
ロフトプラスワンの店内の様子(HORIEMON.COMより

 もっとも、僕の住む千葉県市原市の五井駅周辺でも、ロフトプラスワンのようなトークライブハウスとコワーキング・オフィス、シェアハウスや音楽スタジオなどを兼ね備えた文化的拠点を作りたいという気持ちがある。

 誰もが学校的価値観から解放され、自由に表現や議論、ビジネスができる場所。
 遠方からのトークゲストもシェアハウスを併設すれば宿泊できるし、音楽スタジオがあれば、新世代のミュージシャンも育成できる。

 トークライブには、有名人はもちろん、ふだんはなかなか市民が会えない政治家や役人、ローカルアイドル、地元の高齢の大地主、女子高生、外国人、社長、10代起業家、生活保護の受給者、ホームレス、Jリーガーなどをステージに上げて、気軽なぶっちゃけ話をしてみたい。

 また、起業塾を開講し、小学生から自分の力で人のために役立つことをしてお金を稼げるノウハウを教えることで、貧困世帯を救う知恵を分かち合える場所にもしたい。
(千葉~市原~木更津周辺に在住の方は、Facebookページを参照)

 この夢の実現には、物件の確保、資金調達などさまざまな課題が山積しているため、一朝一夕にはいかないが、東京から1時間ほどの五井に面白い文化的拠点を作れれば、それは全国のどこの田舎町でも応用できるノウハウになり、若い世代による地域活性化を全国的に促進できる突破口になるだろう。

 若者たちが生まれ育った地元を「スッゲェ面白い場所なんだよ!」と人に自慢できるようにならない限り、その街は若者に見捨てられ、廃れていくしかない。
 それは介護人材の不足を導き、高齢と孤独に悩む生きづらい人たちを増やすだけなのだ。
 その深刻さを思えば、地元のために蓄えを拠出してくれる人も現れるだろう。

 退屈な田舎町の若者が切実に求めているのは、圧倒的な「ワクワク」だ。
 それこそ、上の世代が退屈に慣れきって忘れてしまった明確なニーズだろう。
 世代・学歴・所得・国籍などの文化的差異を越え、田舎の閉鎖性に風穴を開けたいね。

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