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■経営者の方へ ~児童虐待は想定外の経営リスク

 昨今では、貧困の深刻化や離婚増などのストレスで子どもを殺傷・心中強要する親が逮捕されるケースが報じられやすくなってきてはいる。
 Googleで「虐待」「逮捕」の2文字でニュース検索すれば、それは一目瞭然だ。

 だが、そうした報道における「無職の親」という言葉に目を奪われ、「児童虐待は貧困層がするものだ」と認識するのは、間違っている。


 1997年に僕は、親から虐待された方から「親への手紙」という原稿を公募したところ、2ヶ月間で300通以上が集まり、100通分を『日本一醜い親への手紙』という本にまとめた。
 そこには、9歳から80代までの100人分の手紙が収録された。

 だが、彼らを虐待した親の属性は、バラバラだった。
 つまり、親の所得・世代・生い立ち・性別・国籍・学歴などは一切関係なく、虐待は家という密室で毎日のように続けられていたのだ。



 全国の児童相談所に寄せられる相談件数は、1990年からの厚労省調査によると、25年間で約100倍に増え、2015年時点で年間10万件を突破している(※下記のデータは厚労省HPより)。
 この爆発的な件数の伸びは、児童虐待に対する関心が国民の間に広がっていることをハッキリと示している。



 しかし、注意しておきたいのは、「自分は子どもに虐待している」と思いたくない親は、決して相談などしないという点だ。

 虐待は、加害者である親自身が「自分がわが子に対してやってることは虐待だ」と認めない限り、相談件数に反映されない。
 つまり、実際の児童虐待は、年間で10万件どころか、100万件以上あるかもしれず、虐待は決して珍しい社会問題ではないのだ。

 しかも、厄介なことに、虐待をしている親ほど世間体を取り繕うのが上手だったり、虐待の自己認知がないために何の反省もなく虐待を繰り返している。

 だから、職場では何食わぬ顔で仕事をこなしているし、むしろ「良い人」で通っているかもしれない。

 親にとって都合の「良い子」を強いられた子どもが、やがて勤務先で上司や経営者にとって都合の「良い社員」になれば、会社での隷属関係を反転させるように、家庭では子どもに支配的に振る舞う親になることで心のバランスをとることは、心理学では半ば常識だが、このことに多くの人は気づいていない。


 それでも、その社員が日常業務をそつこなくこなしている以上、「社員の家庭のことまで私が指導する立場にない」と考える経営者は少なくない。

 彼らは、「良い人材」として手放したくない社員の親子関係に関心をもつことはないだろう。

 すると、虐待された子どもがどんなに周囲に自分の苦しみを訴えても、なかなか大人に理解されないし、どこに相談していいかもわからないまま孤立し、精神を病んでしまうケースが珍しくない。


 何事もあきらめる自己評価の低い暗い性格の子に育ったり、あるいは自分の内面とは裏腹に家の外では「超良い子」として明るく快活なキャラを演じる”解離”を常態化させてしまいかねないのだ。

 すると、ご近所でも、学校でも、その子どもが親から虐待されているなどと、誰も気づかない。

 気づかないまま、ある日、突然に親が逮捕されることで明るみになる。

 小児科医やスクールカウンセラー、ソーシャルワーカーなどが被虐待児を見れば、それとわかるから、彼ら専門職によって児童相談所に通告され、警察が親を傷害や殺人などで逮捕・捜査することになるからだ。

 そうなれば、どうなるか?



●社員の児童虐待は、企業のイメージダウンと売上減を生む

 遅かれ早かれ、逮捕された親の勤務先の企業名が、ネット上にさらされる。
 逮捕された親が住んでいる地域の近所の人々や職場の同僚、昔からの友人・知人などが噂をし、誰かがネット上に身元をさらすからだ。

 勤務先が、誰もが知る有名企業の支店ならもちろんのこと、全国に販売店や支店を展開している大企業やオンラインショップ、子ども向けの商品・サービスを扱う企業などは、虐待でわが子を死傷させる社員を平気で雇っていたことに対する市民の怒りが向けられやすい。

 同様に、警察や消防、自衛隊や中央官庁などで働く公務員、肩書きが立派な医者や弁護士、政治家や教職員、裕福で有名な社長なども、やり玉にあげられやすい。
 そのようにネットの片隅に少しずつ悪い評判がたまっていくと、そうした職場に対する社会的信頼は見えないうちに失墜していき、やがて売上ダウンに現れてくる頃には手遅れにもなりかねない。

 たとえば、小学2年の双子の兄弟に日常的に暴行を加え、重傷を負わせ、母親の元交際相手の友弘修司・容疑者(35歳 ※右の写真はfacebookから)が逮捕された事件では、容疑者の住所が東京都府中市晴見町1丁目」と個人特定ができるまで報道された。

 この事件では、長男(8歳)が20164月に急性硬膜下血腫を発症して一時意識不明になり、現在も寝たきりの状態だ。
 学校の担任教師が次男の傷に気づいて母親に確認したところ、兄弟2人は「転んだ」と説明したという。

 子どもたちは、「父」として振る舞う男にどれほど恐怖を抱いていただろう?
 それがわかるから、ネット上では義憤にかられて男の素性を調べ上げる人も出て来る。

 容疑者のfacebookに書かれた情報から、プルデンシャル生命保険ボディービルダーの大会NPCJ GRAND PRIX SERIES BLAZE OPENむさし府中青年会議所など容疑者の所属する団体まで事件と関連づけられ、それらの団体名で検索すれば、いつでもその団体の一つの側面として見る者に記憶されるようになってしまった。
 児童虐待という犯罪が、容疑者の勤務先・所属先の団体までイメージダウンさせてしまう事例は他にも山ほどある。

 そうした関連団体に嫌なイメージを持つ人が増えていく恐れは、経営者の関心外のところで深海のヘドロのように蓄積していく。
 そのヘドロの中に埋もれた時限爆弾は、忘れた頃に地上へ吹き出すことになるわけだ。

 ただでさえ商品・サービスが売れない今日、ロングテールの先に「自社の社員が児童虐待で逮捕」と報じられれば、売上ダウンの大打撃を受けるだけでない。
 その後の信頼回復は難しくなり、ビジネスの持続可能性など吹っ飛んでしまう。
 だからこそ、児童虐待の放置は、企業にとって想定外の致命的なリスクなのだ。


●僕は「個人クラウドファンディング」に挑戦する!

 冒頭の児童相談所への相談件数の増加が示す通り、今日の消費者は児童虐待に対して極めて敏感になってきた。
 それでも、「うちの家庭だけは大丈夫」とか、「うちの会社にはまさか子どもを虐待する社員がいるわけない」という根拠のない盲信を続ける管理職や経営者は珍しくない。

 しかし、彼らに「児童虐待とはどんなものですか?」と尋ねると、多くの人が答えられない。
 身体的虐待まではイメージできても、心理的虐待について具体例を挙げることもできないし、ネグレクト(育児放棄)を忘れていることもあれば、子どもが内心では嫌がっている性的虐待を自分もしてしまっていることなど思い当たらない。

 それどころか、昨今では経済的虐待文化的虐待などの新たな虐待のタイプが子どもたちを苦しめていたり、この国が児童虐待の対策予算を十分に割いていないことも関心外かもしれない。
 「あ、それって私のことかも…」
 そう思ったら、下記の動画を見てほしい。




 この本は、親から虐待された人が「親への手紙」を書き、それを100通分まとめて1冊に収録するものだ。

 100通りの虐待のバリエーションを知れば、そのどれかに自分の行動があてはまることを発見し、虐待が特別な言動ではなく、日常生活にありふれているものだと、誰もが気づけるようになる。

 自分や社員、家族が知らないうちに子どもを虐待してしまっていたり、児童虐待をいつまでも放置してしまっている自分を、恥ずかしく思うかもしれない。

 この本は、今年(2017年)秋、『新編 日本一醜い親への手紙』(仮題)として千葉市の小さな出版社dZEROから出版予定だが、制作資金をクラウド・ファンディングで調達する。

 もちろん、領収書は発行される。
 この本の用途は、いくらでもある。

CSR(企業の社会的責任)アクションとして、イベントなどで顧客に無償提供

★自社初の「非営利商品」として販売(プレスリリースを出すとメディアに歓迎される)
★児童虐待を予防するため、外部スタッフを含む社員研修の教材として活用
★子ども用品・教育の企業なら、虐待防止啓発でブランド向上の販促グッズとして頒布

 あなたが社員なら、同僚たちにこのブログ記事を見せ、みんなで上司にかけあい、『新編 日本一醜い親への手紙』(仮題)を全社員が読めるよう、経営トップにまで声を届けよう。

 もちろん、個人的に1冊だけ買うこともできるが、社内の部署ごとに「みんなで買おうよ!」と呼びかけ合い、各自負担にする形で部署名義で一括購入すれば、その小さな場所から「もう児童虐待はやめよう」という空気と一体感を作ることができる。

 国がいつまでも児童虐待の対策予算を割り当てない以上、民間の企業まで児童虐待に関心を持たずにれば、今日の日本では5日に1人、子どもが虐待で殺され続けるのだ。

 僕ら大人が残してきた宿題を、次の世代まで残さず、僕らの生きている間になんとか片付けたい。
 親から虐待された当事者たち100人分の痛みがわかる本は、他の誰も作らないので。

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