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■なかったことにしたくない虐待 ~東小雪さん

 親から虐待された100人の「親への手紙」を1冊にして出版するプロジェクトでは、現在、公募を進めると同時に、前払い購入寄付によって本の制作資金を調達しようと、企業経営者に大量購入を呼びかけたり、新聞やテレビ、ラジオなどへプレスリリース(報道資料)を送るなど、出版の実現に休みなく奮闘している。

 そうした中、この出版プロジェクトに共感いただける著名人の方も増えている。

 新たに、LGBTアクティビストの東小雪さん(※この記事の後半を参照)と、8bitnewsを主宰する堀潤さんが、応援メッセージを寄せてくれた(※近日発表)。

 今日でも、児童虐待という言葉に、特殊な人の経験というイメージを持ってしまう人は少なくないだろう。

 でも、幼いころに自分が親からされていることが虐待だと気づく人もいれば、結婚・出産してから親からの支配の大きさに気づく人もいるし、親を介護する年齢になって親を愛せないでいる自分を発見する人もいる。
 虐待は時限爆弾のようなもので、見ないふりして先送りしても、やがて立ち現れてくる。
 人生を通じて人を生きにくくする、とても恐ろしいものが、児童虐待なのだ。


 苦しんでる人がみなそうであるように、親に虐待されてる子は、自分が相談したい・相談しやすい相手を選んで相談を持ちかける。
 だから、被虐待児の相談先がいきなり児童相談所になるわけではないし、支援NPOとも限らない。
 自分が非行や不良と呼ばれる行為をしていたら、それに寛容な相手を探すこともある。
 僕は、彼ら当事者に選ばれる人でありたい。

 ネットが普及した昨今では、小学生からもメールが僕のもとへ届く。
 学校のパソコン端末からだったり、友達のスマホからだったりもする。
 親からの虐待は地域社会の中でも言い出しずらい案件なのだ。

 自分の親の耳に入れば、虐待がエスカレートしかねないという不安におののいてる小学生にとって、大人から言われる「気軽に相談して」は無理というもの。
 だから、親しい間柄でも友人が被虐待児であると気づかないことは多いし、虐待された子ども自身が誰にも頼れないと判断するケースも珍しくない。

 たとえば、母子家庭で毎晩のように違う男が家に来るので、夜は家に入れないという中学生から相談を受けることもある。
 その子は朝まで街をうろつくしかないが、お金がないので、ファミレスにも入れず、寒い冬空の下で駅前交番の警察官を話し相手にしては、その晩をやりすごす毎日だった。

 彼女は先生や地域の大人に家に入れない事情を言えるだろうか?
 言ったところで、母親は既に生活保護を受けており、暮らすので精一杯であり、教育投資や学校が求める教材費などは売春でしか調達できないことが察せられる。
 そうした親に養育の責任を一任させるばかりで、子どもを社会のみんなで支え合う仕組みは作られていない。

 少女の孤独な痛みは、誰にも言えないまま、小さな胸の奥にしまい続けることになる。
 そして、そういう子どもたちは今、全国各地に少なからずいるのだが、彼らの痛みを知らないままでいる大人がいかに多いことか。
 僕らが知るべきなのは、専門家や研究者の作った児童虐待の文脈ではなく、虐待されながら育って来た子どもの肉声ではないか?

 だから、虐待が何かもわからずに軽視する習慣はやめて、まずは彼らの声に耳を澄ませられる社会にしたい。
 そのためにこそ、彼らの痛みを言葉にして出版したい。
 それが『新編 日本一醜い親への手紙』(仮題)であり、この本の出版を実現するために、前払い購入寄付を募っているのだ。

 大企業が本社勤務の精鋭社員1000人に読ませるために買っても、たった200万円だ。
 虐待された人の痛みを100人分も知ることのできる本は、他にない。
 大企業ほど、経営者に気づいてほしい。
 中小企業なら社員100人分で20万円程度なのだから、今スグ買ってほしい。

 虐待されても上げられなかった小さな声を、なかったことにしてほしくない。
 職場で虐待を学べば、わが子への虐待に気づく親も増えるし、何より自分が虐待されて育ってきたゆえに生きづらかったのだと気づける社員も増えるだろう。
 それは不当に奪われた自尊心を回復し、一方的に貶められた自己評価を上げるチャンスになり、労働意欲さえ担保することになるだろう。
 東小雪さんが親から受けた性虐待を、まずは読んでみてほしい。


大人が権力に乗じて子どもを傷つけること
LGBTアクティビスト 株式会社トロワ・クルール取締役 東小雪

 私は実の父から性虐待を受けて育ちました。
 3歳の頃から、中学2年生の秋まで、お風呂場で性虐待を受けていました。

 私がそのことに直面し、受け入れ、立ち上がるようになるまでには、非常に長い時間と、筆舌に尽くしがたい苦しみがありました。

 被害は、3歳の頃、体を洗うふりをして、性器を触られることから始まりました。
 小学校3年生頃になると、挿入を伴うようになりました。

 幼い頃から虐待されていたので、私にとってはそれが当たり前になっていて、逃げるという選択肢はありませんでした。
 一度だけ母に「お父さんが私のお尻を触って、恥ずかしい感じがするから、やめるように言ってほしい」と訴えたことがありました。

 しかし母は、椅子に腰掛け遠くを見つめたまま、私の目線まで降りてきてくれることはありませんでした。そのとき私は幼いながらに「言ってはいけないことを言ってしまったんだ」と感じました。

 母も祖母も、父が私にしていることを知りながら、私が助けられることはありませんでした。
 そのことは、大人になった私を、長く苦しめました。
 被害そのものが私にもたらした影響も大きかったのですが、私は「大切な人にも助けられない子」「親にも愛されない私」というどうしようもない思いを抱えて、何度も自殺未遂を繰り返しました。

 『日本一醜い親への手紙』が出版されて20年。
 AC(アダルトチルドレン)という言葉が世に広まったのも1995年頃ですから、やはり20年ちょっと。
 しかしまだまだ虐待の真実が、広く一般に知られているとは言い難い現実があると思います。

 性虐待であっても他のどんな虐待であっても、大人が権力に乗じて子どもを傷つけることは、絶対に許されてはならないことです。
 『新編 日本一醜い親への手紙』が出版されることで、サバイバーの人たちを励まして、そして社会全体に児童虐待の理解が広がると思います。
 クラウドファンディングの成功と出版を、心から応援したいと思います!

東小雪(ひがしこゆき)

『新編 日本一醜い親への手紙』の関連イベントが、6月10日(土)の午後、新宿であります。
 詳細は、コチラ

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