もっとも、この本がニッチ市場向けであることは、先刻承知だ。
1994年に『日本一短い母への手紙』という本が出版され、200万部の大ヒットになった。
その内容は、母親へ感謝の手紙を公募し、収録したものだ。
これを宛名にされた母親たちがこぞって買うのは、容易に理解できる。
母親たちは、長らくワンオペで苦しんできた子育てを、わが子にいたわってほしいからだ。
その読者ニーズに対して見事に応じたのが、『日本一短い母への手紙』だった。
当時から僕は「これはポピュリズム(大衆迎合主義)ではないか」と見ていた。
「自分がこんなに子育てに苦しんできたんだから子どもから見返りを求めたい」という母親たちの本音の欲望を満たす商品は、売れるだろう。
しかし、親から見返りを求められて育てられる子どもは、親に心の底から感謝を捧げるだろうか?
自分がほしくて産んだ子どもから「見返りを求める子育て」は、美しいだろうか?
1997年、僕は『日本一醜い親への手紙』を公募し、編集した。
「見返りを求める子育て」によって心や体を傷つけられた痛みをもつ人たちから「親への手紙」を公募すると、小学生から80代の高齢者まで2ヶ月間で300通以上も集まった。
そこに、親への感謝の言葉はなかった。
すると、10万部しか売れなかった。
出版社としては10万部でも十分ヒットだが、『日本一短い母への手紙』の200万部と比べると、その5%にすぎない。
これは、子どもの人権にとって、きわめて憂慮したい数字だ。
親に対して「ありがとう」と言うのが「ふつう」「正しい」「すべきだ」という同調圧力を作り出すからだ。
よのなかには、親に感謝どころか、憎しみを抱いたり、親元から早く避難したい人もいる。
そういうマイノリティ(少数者)の声に耳をすませることなく、「どんな親もお前を育てるのに苦労したのだから、一方的に感謝するのが当たり前」という空気に居直るなら、それは子どもにも女性にも発言権がなく、家長に一方的に支配されていた家父長制の時代へ逆行してしまう。
だから、僕は1997年に『日本一醜い親への手紙』を作ったのだ。
それから20年後の今、新たに「親への手紙」を公募し、『新編 日本一醜い親への手紙』(仮題)を作ろうと思ったのは、全国の児童相談所に寄せられる虐待相談の件数が1990年―2015年の25年間で100倍に増えたからだ。
この間、若者の死因の1位がずっと自殺であることを考え合わせると、対人関係や問題解決を乗り超えるだけの自尊心を家庭で育まれなかったことが推測できる。
つまり、虐待相談の件数が100倍も増加したことは、「虐待の顕在化」を意味するだけでなく、虐待の実態も増えていることが懸念されるのだ。
だからこそ、20年前とは違って、インターネットを中心に公募を呼びかけ、若い世代が親から受けた虐待がどんなものかを拾い上げようとしている。
誰も、親から虐待されたマイノリティ向けの本を作らないからだ。
少数者向けの本は派手には売れず、しかも親が読めば「にがさ」を味わうことになる。
そんな本を進んで買う人は多くはなく、20年に出版した時も「自分が親を愛していないことを認めるようで怖かった」「本屋でタイトルを見てから買おうかどうか何度も迷って買った」と書かれたアンケート葉書をもらったものだ。
それでも、この本は今こそ必要だと思う。
親と分かり合えないまま、親を受け入れられない自分を責め続けた果てに自殺してしまった人もいる。
分かり合えない親との暮らしから自力で避難できなくなり、「親のため」をいつまでも生き続けてしまったために、やがて親が高齢化し、介護する苦労まで背負うことになった時、親を虐待したり、殺してしまった人もいる。
あるいは、親から愛されなかったために、誰かを愛するということがどういうことなのかわからず、恋愛や結婚に失敗し続けたり、自身の家系を呪って生涯独身を決めたり、自分がわが子を虐待してしまう不安や恐怖から、出産や性行為をあきらめる人もいる。
そんな彼らに親への感謝を求めることは、「死ね」と言うのと同じことだ。
彼らに必要なのは、むしろ親と距離を置き、親との縁を切り、「親のような生き方をしない」ことで、親からの支配に左右されない自分自身の人生を作り上げることだろう。
そのためには、親からされて心底イヤだったことに向き合い、親からの心理的離乳を果たし、親に「さよなら」をつきつける必要がある。
それが、『新編 日本一醜い親への手紙』(仮題)なのだ。
●他にない手紙本の大量購入に、知恵と人脈を貸して下さい
『新編 日本一醜い親への手紙』(仮題)は、企業内での人権教育用の教材として使ってほしいため、法人名義による大量一括購入の場合、総額20万円以上から購入特典をつけている(※この記事を参照)。
実際、虐待による親の逮捕が増えている昨今、社員が逮捕された企業内で事前の子どもの人権の研修を怠っていた場合、メディアからのバッシングやネット上の炎上は避けられない。
また、「虐待とは何か」を知らないために児童虐待になってしまう商品・サービスを売り出せば、それまで築き上げてきた企業イメージと社会的信頼は一瞬で地に落ちる。
親に虐待された痛みを社員どうしで学び合わないままでいることは、時限爆弾を抱えるようなもので、経営上のリスクなのだ。
逆に、社内で購入希望者を募って法人名義による先払い購入をしておけば、自社の社員の逮捕を未然に防げるし、商品開発も安全に進められるし、社名も本のクレジットに載せられるのだから、良いことずくめだ。
この『新編 日本一醜い親への手紙』(仮題)の先払い購入と寄付は、日々増えてはいる。
しかし、その多くは個人からの発注だ。
会社などの法人名義での大量一括購入は増えておらず、本を作りのに必要な制作資金400万円の1割にも満たない(5月29日時点)。
この国では、子どもの人権を守り、児童虐待を止められるのは、実質的に親が働く職場のトップ以外にいない。
つまり、会社社長や学校長などのトップ自身が、トップダウンで社員たちに子どもの権利として虐待の痛みを学び合うチャンスを作り出す必要があるのだ。
ところが、大企業100社、中小企業100社、国会へ議員を輩出している政党のすべてのトップに先払い購入を呼びかけたところ、返信が届いたのはたった3通。
子どもの権利が企業にとってどれほど関心外であるかを思い知った。
児童虐待を減らせるチャンスをすぐにでも作り出せる立場の人間が、動かないのだ。
だからといって、ここで出版をあきらめるわけにはいかない。
そこで、みなさんにお願いしたい。
『新編 日本一醜い親への手紙』(仮題)を先払いで大量一括購入してもらうための知恵と人脈を借りたいのだ。
どうやったら、早めに大量に売れるのかについて、教えてほしい。
「あそこの団体は100冊くらいなら買ってくれそう」というアイデアから、「◯◯会社の社長ならスグ紹介できるよ」という具体的に話が進む案件まで、何でもいいので、この本の制作資金を早めに賄うための情報をメールで僕(今一生)に教えてほしい。
「私の勤務先の塾の経営者に相談して保護者による一括購入を呼びかけてもいいかな?」という具体的な相談も受け付ける。
児童福祉に関心が高くて多額の寄付をしてくれそうな団体や富裕層の名称を教えてくれるだけでも、ありがたい。
営業マンなら、販売代行でお小遣いを稼いでもらっても、かまわない。
「数百人が集まる研修会の教材として一括購入したい」というオファーも歓迎だ。
「社内で購入希望者を募ってみたい」という方は、このPDF(A3サイズのチラシ)をダウンロードされたい。
社内のメールマガジンに、公式サイトへのリンクを紹介してくれるだけでもうれしい。
「おじいさんがネットできないから寄付の代行をしていいか? その際の代行マージンは?」という問い合わせにも応じよう。
「この国から親から虐待される子どもを1人でも多く減らしたい」という熱い思いがある方なら、「虐待された100人の痛みを伝える」という他にはない価値を持つ『新編 日本一醜い親への手紙』(仮題)をよのなかに出すために、寄付で応援していただきたい。
ただし、寄付には何ら特典がつけられない。
それでもポンと100万円ほど寄付する方がいたら、子どもたちだけでなく、虐待されて大人になった方も、この生きづらい社会の中に確かな希望の光を見る思いがするだろう。
僕は引き続き、休みなく企業のトップに向けて大量購入を働きかけていく。
もちろん、社員有志が社内で本の購入希望者を募り、法人名義による一括購入を働きかけていくことも期待したい。
1冊2000円(税・送料込み)という安い商品が、この国の子どもたちの未来を変えていく起爆剤になることを夢見て。
みなさまから、「売るための知恵」と「売れる人脈」の紹介をお待ちしています。
メール(今一生)
★『新編 日本一醜い親への手紙』を先払い購入で買う
★『新編 日本一醜い親への手紙』の制作資金ヘ寄付する
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社長さん、この本を社員の数だけ買い占めて!
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