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■事故としての子ども虐待 ~責任を覚悟すること

 子ども虐待については、いろんな誤解がある。
 その多くは、関心不足のメディアによる浅い取材が作ったものだ。

 代表的な誤解とは、以下の通り。

① 子ども虐待は、「幼児」「児童」に集中している
② 子ども虐待は、中高生になれば数が減ったり、深刻さが消えたりする
③ 20歳を越えた子どもは、親から虐待されることはない
④ 性的虐待は、虐待の4タイプの中ではレアケース(※厚労省発表)
⑤ 子ども虐待は、身体的虐待・性的虐待・心理的虐待・養育放棄の4つしかない
⑥ 児童相談所に保護されれば、虐待案件は万事解決
⑦ 被虐待児は、誰でも保護することができる

 こうした誤解をなくすためにも、『日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?』(Create Media編/dZERO)という本を僕は作ったんだ。

 この本には、経済的虐待、文化的虐待、教育虐待、場面緘黙症なども収録されている。
 1冊でも多く売って、多くの読者を獲得したい。

 売れれば売れるほど、同様の本を他の出版社が続々と試みるかもしれないからだ。
(※1997年版が10万部のベストセラーになった後から、毒親関連本ブームが起きた)

 多くの日本人が、この国で起きている子ども虐待の深刻な現実を知るようになれば、国際的にも自己評価の低い国民性を変えられるかもしれないし、精神病になる人を減らせるかもしれない。

 子どもの自尊心を虐待から守れればこそ、「自分は社会はもっと生きやすい場所へ変えていいんだ」という主権者マインドを獲得し、困ったことがあるとすぐに政治家に「お願い」するような奴隷根性をやめて、自分たちで自分たちの目の前の問題を解決しようという人が増えて、ようやく自治による本来の民主主義を始められる。

 つまり、子ども虐待とは、「小さな子どもが親から暴行されてかわいそう」という小さな問題ではないんだ。
 虐待のタイプだって、まだ名付けられていないだけで他にもいろいろある。

 大人になっても自己評価の低さに苦しみ、「どうせ自分には~できない」と思ってしまう人が多数派のこの国では、親から虐待されていたことに無自覚な人があまりに多い。
 逆に言えば、わが子を虐待したつもりのない親、自分自身の加害者性を受け入れたくない親が、呆れるほどたくさんいるのが、21世紀の日本社会なのだ。

 そこで、わが子を虐待したつもりがない親による「事故としての子ども虐待」について考えてみたい。


●毒親に理解を求めても、損をするのは子ども側だけ

 たとえば、親が高卒で、子どもが大卒という親子は、昨今では珍しくなくなっている。
 大学進学率が50%に増えてきた以上、親のほうが低学歴であるがゆえに本を読む習慣も親になく、子どもを親に隷属させる戦前の家父長制の文化のまま、「親は親というだけで子どもは親を尊敬すべきだ」という考えで子どもを支配したがる親も少なくない。

 家父長制のあった戦前の時代なら、「親は親というだけで子どもは親を尊敬すべきだ」(=どんな親でも子どもは文句を言う権利などなく無条件に従うべきだ)が法的に守られた考えであり、一般常識だった。
 しかし、敗戦でこの国は民主主義社会となり、やがて女性にも参政権を認めることになった。
 「妻は夫に従うもの」という考えもおかしいものとなり、女性は雇用機会均等法で労働者としての平等を得るまでにはなった。

 ところが、子どもの人権は、子ども自身に参政権がなかったことから法的に守られることはなく、日本の大人たちもずっと関心外にしてきたし、そのことで政府も国際的に非難を浴び続けている。
 人類最弱の子どもを守れないなんて、まったく情けない国だ。

 戦前まで子どもの人権を守る文化がなかったのだから、戦後になっても、家庭や学校で子どもに人権を教えるチャンスを作ろうなんて、日本人の親は考えない。
 低学歴なら、なおさら、子どもの人権なんて考えない。
 すると、自分より圧倒的に弱い人間である子どもに自分の腕力・経済力・経験値を使って、力任せに子どもを自分の思い通りに動かそうとしてしまう。

 「お父さんが認めた学校でないと進学させないぞ」とか、「お母さんが認めた使いみちでない限り、お小遣いはあげないわ」とか、「お母さんが作った食事だ。栄養過多だろうが、文句を言わず食え」とか、「お父さんの言うことをきかないとぶん殴るぞ」とかね。

 これらの台詞は、子どもが深い傷を残したり、親から承認されないと何も判断・決定できない大人になってしまった場合、虐待として生きづらさを作り出す記憶になる。
 しかし、それらを平気で言う親は、自分の言動が親権の濫用であり、強者が弱者を支配・隷属させるものであり、力任せに女性をレイプする男と同じ卑怯な構えだと認めないし、加害者としての自覚も薄い(か、まったくない)。

 なぜなら、彼らの親の世代にも子どもの人権を守るという文化がなく、虐待することを「しつけ」だと思い込まされてきたから。
 それは、傷害罪に相当する暴行を学校が「いじめ」と言い続けているのと同じ欺瞞だ。

 親自身が人権を守られてこなかったのだから、わが子の人権を守ることなど考えもしないし、レイプ犯のような自分の育て方によって子どもがどんな大人になろうと、責任を取ることなど絶対に考えない。

 たとえば、親が言う通りに気の進まない進学をさせられたために、入学後に何もやる気が起こらず、5月の段階で学内の心療内科に駆け込む東大生が毎年いるが、精神がぶっ壊れても、その責任を親は取らない。
 「親の自分が間違っていた」と認めて、わが子が高校時代までに魂を込めて取り組んでいた進路へ再挑戦するためのべつの学校に入る学費を死ぬまで働いて償った親なんて、1人もいないだろう。

 たとえば、車の運転中、目の前に小さな子どもが飛び込んできたので、避けたら、カーブの先にいたべつの子どもを轢いてしまった親は、その子の足が一生動かないと知れば、相手の親子から責められる事実に対して一生申し訳ない気持ちを持つかもしれない。

 しかし、そういう親でも、同じ状況でわが子を車で轢いて一生車椅子生活にさせることになっても、「轢くつもりはなかったんだ。私を許せ」と迫るだろう。
 そう迫っても、世間から叱られることもなく、むしろ世間から同情されるからだ。

 そのように、自分では良いことをしたつもり(=虐待したつもりはない)という気持ちでわが子に甘えるばかりで、わが子より世間から後ろ指を刺される方が圧倒的に怖いと感じている親は珍しくない。
 子ども虐待とは、親が子どもの人権を無視して甘えることなんだ。
 世間を敵に回してでもわが子の自尊心と命を守る覚悟がないなら、親権者をやめてほしいよね?

 親が自分の責任を取れないことまでわが子に強いること自体が、人権無視の虐待なんだ。
 だって、他人の子どもに同じことを強制しないでしょ?
 世間から後ろ指を刺されるのがわかっているから。
 自分が何かを強制できるのは、親権者として独占的に支配できるわが子だけだから。
 そこが決定的に虐待親=毒親のずるいところ。

 毒親は、自分の子どもが何歳になっても支配したがる。
 親の責任とは親無しで生きられるようにすることなのに、毒親はこれを理解できていないし、知らないし、知ろうともしない。

 だから、経済的自立という目的を果たす手段が進学しかないように子どもを洗脳したり、自分の介護を子どもの稼ぎに期待したり、「介護しなくていいから家にいる間は親の言うことを聞け」と迫る。
 親の責任は果たせないのに、王様のように子どもを支配する権利だけを行使する。

 そんな親といつまでも付き合っていれば、子どもは奴隷根性から抜け出せなくなる。
 先生とも主従関係、勤務先の上司とも主従関係、国家に対しても「政治家先生、おねげぇしますだ」と主従関係でいる弱者として一生を送る。

 でも、そもそも毒親は子どもの頃から人権意識を奪われて育ってきたのだから、自分の犯した罪を「事故」としか認識できない。
 それゆえに、加害者としての当事者性を獲得できないままだ。
 この国の歴史や文化をふまえて自分自身のずるさを自覚できるような学力も学歴もないとなれば、この国では事故としての子ども虐待がそこらじゅうにあると気づくはずだ。

 そして、そうした事故としての子ども虐待があまりに多すぎるので、その深刻さに親も子も鈍感になってしまっている。
 しかも、毒親は、老いていけば、子どもの頃に自分が親から虐待されたことも忘れてしまい、老化した脳によって「やさしい親だった」と認知をゆがめてしまう。

 これが理解できれば、自分を虐待した親に「もっと私を大事にしてくれ」と望む子どもの願いは、何歳になっても果たされないことにもピンとくるだろう。
 親に理解を望めば望むほど、苦しむのは子ども側だけなのだ。

 そのように既存の虐待のタイプに当てはまらず、あるいは当てはまっても親が自分にしたことが虐待だと認めるのが苦しくて、一人で苦しみ続けているのなら、全国各地で急増している集まりに顔を出してみてほしい。

 そこには、あなたが出会いたかった仲間がいる。
 同じ悩みを抱えているから、解決の方法を知っている人にも出会える。
 そういうチャンスは、誰かが開催するのを待ってるより、自分で作ってしまったほうが早い。
 実際、初めてそういうアクションを始める人が、全国各地で急増している。

 昨年(2017年)、仙台で僕の講演会を主催してくれたゴータイさんが、今年になって岡山で初めて毒親お茶会を主催した麗慈さんをインタビューした動画を見てみよう。



 他のエリアやお茶会の開始方法については、下記リンクを読んでみてほしい。
■毒親カフェ、全各地で続々開催!
#親への手紙の朗読会・読書会をやってみよう!

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 『日本一醜い親への手紙~』の目次



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