国分太一が日テレの社長から「コンプラ違反」を指摘され、無期限の活動休止を宣言した後、所属していたグループのTOKIOが解散した。
TOKIOは30年以上も続いたグループだが、2018年にメンバーの山口達也が書類送検されて脱退し、2021年には長瀬智也もジャニーズ事務所をやめていた。
残った城島茂と松岡昌宏の2人は、「このような状態になった以上、グループ『TOKIO』として活動して皆様から再び信頼をいただき、応援いただくことは難しいと判断」し、解散を発表した。
TOKIOが国分の一件で信頼を失ったことは明らかで、日テレの冠番組『ザ!鉄腕!DASH!!』のスポンサー企業は続々と降りてしまってACの広告が増え、他のテレビ局や福島県にも影響が出ていた。
こうなると、主な収入源であるテレビや広告に出演する機会を完全に失うのだから、解散というより、事実上の引退と見る方が実情に近いだろう。
それでもTOKIOは、国分太一の「コンプラ違反」が何だったのかをまったく説明しないまま、ホームページに引退宣言をしてしまった。
これは、中居正広がコンプラ違反で引退した時と同じで、細かい事情説明をファンにもしないまま、逃げようとしているわけだ。
これをわかりやすく言うなら、「不祥事がバレたら消えます。もうたっぷり稼いだし」という居直りだ。
プライバシーを盾にして詳細な説明を避けたテレビ局の方も、「不祥事でベテラン勢のタレントが抜けてくれれば世代交代ができるし、高いギャラを払わんでいい」と考えているだろうし、結果的に”膿を出した側”を自己演出できる。
テレビ局は、「コンプラ違反だ」といえば、いつでも過去の違反を理由にタレントを追い出して、あたかも自分は被害者で、悪者を外へ追い出す正義が行ったかのように振るまえるわけだ。
そのくせ、広告収益を失っても、コンプラ違反でその原因を作ったタレントに損害賠償を求めていない。
総務省も、そうした放漫経営のあり方を疑問視せず、放置している。
こんな茶番につき合っていられない。
というのも、ジャニーズ問題を何十年も放置していたのは、発言力のあるアイドルとテレビ局自身だったからだ。
ジャニー喜多川は2019年に亡くなったが、2012年には当時15歳のカウアン岡本さんが被害に遭っている。それも15回以上で、彼以外に同時期に3人の被害者がいたと明言している。
カウアンさんは現在29歳なので、彼より上の世代、つまり30歳以上のジャニーズ・アイドルは、当たり前のようにジャニー喜多川の餌食になっていたおそれがある。
ジャニーズ事務所が大きく利益を増やし始めた1980年から2010年頃までの30年間に、多くの男性アイドルやグループが人気者になっていった。
同時に、ジャニーズ所属のアイドルには不祥事が多く、それは今日にいたるまで増え続けてきた。
表沙汰になった事件以外でも、ジュニアに入ったばかりの新人の子に先輩が「パンツを脱いで見せろ」と命令したり、仕事と通学の両立ができずに高校を中退せざるを得なかったなど、常識では考えられないほどの労働環境にいたわけだ。
そもそも、ジャニー喜多川による被害を申告できた人は1000人を越えていて、これが30年間に行われたとするなら、少なくとも年間33人(毎月3人程度)の子どもが被害に遭っていたことになる。
とてつもなくストレスフルな環境であることは、容易に想像できる(この文章も参照してほしい)。
NHKの取材に答えた元ジュニアの男性は、次のように語っている。
「私の場合は、マッサージをそけい部のギリギリまでされたにとどまった。一緒に泊まりに行った仲間たちが別室で個室に呼ばれて被害に遭っていたり、私の横で寝ていた仲間がゴソゴソと夜中何かをされている。
翌日『きのうもされちゃった』とか話題になっていた。実際に被害に遭っている人がかわいそうと思うと同時に『自分は無事でよかった』だなんて、今思うとひきょうな考えだったなと思いますね。今もそのときの状況は脳裏に焼き付いています。そのときの感情は忘れられないですね」
こうした証言から伝わってくるのは、自分がひどい性被害を受けていなくても、周囲に被害を受ける人が当たり前にいる環境を強いられていれば、それは心に傷を残すということだ。
だから、性被害を受けていないから大丈夫という理屈は成り立たず、むしろ「次は自分が被害者になるんじゃないか」という不安を日常的に与えることが心理的虐待だったと気づく必要がある。
心理的虐待を軽いストレスのように勘違いしている人は多いが、今日では夫婦がケンカしているところを子どもが観たら、警察は心理的虐待があったとみなし、夫婦を逮捕して、子どもを児童相談所へ保護する。
これを面前DVと呼んでいるが、子どもが直接親に殴られたりしなくても、「いつか自分も母親のように殴られるんじゃないか」という強い恐怖と不安を子どもの心に残すことが懸念されるからだ。
心に深い傷を残すことの深刻な影響を示す例として、2001年のにアメリカで起きた9・11同時テロ以降の戦闘任務に参加して亡くなったのは7057人だったのに対し、1人でお亡くなりになってしまった現役・退役軍人は3万177人と推計されている。
つまり、戦場で亡くなる数より、無事に帰国できた後でストレスフルな戦いで緊張した記憶によって苦しみ続けて亡くなる方が、4倍以上も多かったのだ。
体の傷より、心の傷は、治るが遅いのだ。
一生、心の傷に苦しむ人も少なからずいる。
ジャニーズ事務所に10代で入って、ジュニアとしてデビューを待っていた少年たちはみんな、性被害を受けていなくても、いつかは被害をガマンしないとデビューできなくなるおそれを抱えていた。
彼らは、銃弾が飛び交う戦場で「当たりませんように」と祈りながら戦っていた兵士と同じ強いストレスを、ジャニーズ事務所で受けていたのだ。
まさに、「ガラスの少年」だったのだろう。
どんなタイプの被害にせよ、虐待されることは、時限爆弾を埋め込まれるようなものだ。
どんな被害も、つらければつらいほど忘れたいものなので、すっかり忘れた頃にうつ病や睡眠障害、アルコール依存症などの精神病として現れることもある。
あるいは、自分がジャニー喜多川からされたように、弱い存在を支配し、性的な奴隷にしたがる欲望を持て余し、実行してしまうこともある。
これを心理学では「再演」と呼ぶが、再演によってコンプラ違反をやらかした場合、PTSDになるほどの強いストレス環境が子ども時代の過去にあった証拠かもしれない。
国分太一は、2009年4月の『女性自身』で、後に妻となる彼女について《頭がいいですし、普通の心を持っているというか、そういう部分に惹かれました》と証言したそうだ。
これは、国分自身がジャニーズ事務所で「普通の心」を奪われてしまったことを告白したものではないか?
もっとも、中居正広も、国分太一も、他の30代以上のジャニーズ系のアイドルたちも、自分が少年時代に負った傷の深さを自覚しているようには思えない。
だから、中居の事案も、国分の事案も、他人事として見る人も多いだろうが、それはまだ精神病になったり、コンプラ違反を犯してはいないからだ。
時限爆弾が心に埋められてしまえば、それが爆発するのは、50代かもしれないし、70代かもしれない。
せめて不発弾として一生爆発しないでいてほしいと望むだろうが、それは早めに精神科医やカウンセラーに相談してこそ、対応できることだ。
しかし、顔と名前がバレバレの有名人になってしまうと、精神科の受診やカウンセリングを受けることは難しいかもしれない。
週刊誌にバレてしまえば、テレビや広告のスポンサー企業から仕事を干されるおそれは高いからだ。
それでも、そうしたメンタルケアをしたくてもできない事情を持つ人は多いだろうから、今後もジャニーズ系アイドルから続々とコンプラ違反や、精神病に悩んでの活動休止が報じられることが増えるだろう。
有名になればなるほど、メンタルケアさえ十分にできない環境に置かれるリスクを、ジャニーズ事務所はジュニアや契約代行者の親たちに、契約前に十分説明しただろうか?
実は日本人は、契約や交渉をする練習を、子どもの頃から積み重ねてきていない。
だから、就職面接でも、自分にとってリスクになるような働き方を志望する会社の人を前に確認したりしない。
その結果、想定外のリスクに苦しめられる。
せっかく近畿財務局で働けるようになったのに、財務省の上司から文書改ざんという犯罪を強制されて、一人で苦しんだ挙句、命を捨ててしまった人がいる。
高給取りのフジテレビの正社員になった人たちは、若い女性社員が不当な接待を命じられても、誰も止めなかった。
正社員になるとは、自分の生活の安定と引き換えに、まともな人間性を奪われるリスクを引き受けるってことなのだ。
こういう残酷なリスクを、高校生の頃までに大人はちゃんと教えてきただろうか?
良い面だけを教えてきたなら、それはあまりにも罪深いことだ。
そこで、あなたにお尋ねしたい。
大人になってから、「そんなこと、誰も教えてくれなかったよ」「もっと早く教えてくれたら違う道も選べたのに…」と思うことは何?
たとえば…
●義務教育は誰もが普通教育を受けられる権利のことであって、学校に行く義務じゃないから、フリースクールに通っても校長が認めれば出席扱いになるなんて、親も教師も教えてくれなかったよ
●学歴社会だから「偏差値の高い大学に入らないと高い収入を得られない」と思ってたけど、それは就職する場合だけで、自営業をすれば、学歴なんて一切不問だって誰も教えてくれなかったよ
●銀行の借金なんて、自己破産すれば払わなくてよくなるし、10年も経てば、また借金できるようになるなんて、知らなかったよ!
●どんなにひどく自分を苦しめた親でも、近所に住んでたら子どもに介護の義務が突きつけられて、その義務を放棄したら保護責任者遺棄罪で逮捕されるなんて知らなかったよ
●「本なんて才能がないと出せない」と思ってたけど、どんな有名作家も出版社の編集者と一緒に内容を練り上げていくから、文才や国語の成績なんてほとんど関係ないってこと、国語の先生ですら教えてくれなかったよ
あなたの実体験も、以下の動画のチャット欄やコメント欄に書いてみてほしい。