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■全国の貧しい親子の「未来応援」が寄付でできる?

 「やるな」とはあえて言わないけど、やったところで大した結果を生まないことは山ほどある。
 「子供の未来応援国民運動」も、その一つになるだろう。

 政府は、子どもの貧困対策を強化するため、地方自治体や経済界などの代表による「子供の未来応援国民運動」の発起人会議を開いた。

 そして、民間の財団法人「日本財団」とともに新たに創設した「子供の未来応援基金」への寄付を広く呼びかけていくことを決議した。
Yahoo!ニュースより)

 集まった寄付金を、経済的に厳しい状況にある家庭の子どもに対する教育支援(=支援するNPOなどに資金を提供する)の拡充などに充てるとか。
 でも、この「子供の未来応援基金」は、今月1日に創設されたのに、3週間弱が過ぎても、寄付金の総額はたったの約150万円

 「今後は企業を訪問して寄付を呼び掛けたり、ホームページから手軽に寄付できるシステムをPRしていく」そうだ。
 しかし、日本財団に災害の緊急支援を除き、莫大な寄付額を短期間に集めた実績はないはずだ。
 だから、ネット上には、こうした取り組みを冷ややかに見る向きが少なからず表出している。

 子どもの貧困対策といえば聞こえはいいが、ただでさえ予算がつかない児童福祉への今後の歳出を抑制する材料に使われるんじゃないかという恐れがあるからだろう。
 国税からの歳出ではなく、民間の財源に頼るなら、政治家自身が「われわれ政治家の作った児童福祉政策は費用対効果の悪いものだった」という反省を表明しなければ、おかしな話だ。

 現在の日本の歳入の約半分は、借金と増税だ。
 日本にはもう、財源が無い。
 それでも軍事費は増やしてるわけだから、「子どもの貧困」にだけ金が無いわけではない。

 イギリスのブレア首相だったら、民間シンクタンクにビジネスによって救済できる貧困当事者の子どもの数を試算させ、民間ではどうしてもできないものだけを国の歳出で補うと発想するだろうし、それでも足りない額面を明示した上で、新たな民間基金の正当性を訴えたことだろう。
(※事実、ブレアは民間の社会企業家に仕事をさせ、福祉・教育の歳出を切らずに済んだ)

 今回の「子供の未来応援国民運動」に参加した民間の顔ぶれを見ると、寄付をもらう側と寄付を出す側ばかりで、ビジネスで貧困の解決ができる社会企業家は見当たらなかった。
 貧困を解決できるビジネスへ投資すれば、毎日仕事として持続的に取り組めるのに、だ。



●おそらく発起人の政治家は、1円も寄付してないはず

 政府・自民党は、NPOなどの「人の好い民間人」をダシにして、「軍事費を増やしても子どもの貧困は忘れていませんよ」というポーズを見せたかったのだろう。

 寄付では、Room To Readのような戦略的な資金調達ノウハウで莫大な寄付金を短期間に集められる社会企業家と組まない限り、集まったわずかな額面の範囲内でしか活動できない。

 表向き政府が呼びかけ、実態は民間に丸投げし、政府への責任追及を免れるつもりなんだろう。
 つまり、この「国民運動」は、与党・自民党にとっては「子どもの貧困に取り組む」という姿勢を宣伝したかっただけの取り組みだと思う。

 それならば、3週間で150万円しか寄付金が集まらなかったのも、うなづける。
 「子供の未来応援国民運動」の発起人の政治家は、自ら寄付して国民に見本を示したか?

 安倍総理には、約1億円の資産約4000万円の年収がある。
 菅・官房長官には、約6000万円の資産約2700万円の年収がある。
 塩崎恭久・厚生労働大臣には、約7000万円の資産約2700万円の年収がある。
 下村博文・文部科学大臣には、約3000万円の資産約2700万円の年収がある。
 有村治子・内閣府特命担当大臣にも、約2700万円の年収がある。

 「子供の未来応援国民運動」の会議は、今後も続く。

 TBSや読売、NHKのトップも発起人になっている以上、最初の150万円に政治家がそれぞれいくら寄付したのかを質問し、テレビで生中継してほしい。
 その程度の情報公開をしないまま、「俺たち金持ちは寄付しないけど、民間企業や国民はどんどん寄付して」なんて理屈が国民に納得してもらえるわけがないだろう。

 さらに言うなら、「国民運動」とブチ上げてしまったからには、日本財団が費用対効果の悪い資金提供をしてしまった時の責任が政府にも問われるため、それを理由に政府もこの基金にまったく口を出さないわけにもいかなくなる。

 そうなれば、民間事業として不自由な運営になる恐れも出てくるわけだ。
 つまり、日本財団が国民に寄付を訴えるために、発起人の政治家(=公人)がいくら寄付したのかについて額面を公開をしたくても、政府が止めに入る恐れもあるってこと。
 それを思うと、なぜ日本財団がそんな面倒を背負ってもこの基金を引き受けてしまったのか、気になるところだ。

 そもそも日本の福祉政策はかなり費用対効果の悪いものだが、それでも高齢者・障害者については受益者が有権者なので予算をぶんどれる(=政治家にとっては自分への得票に使える)。
 だが、児童福祉の受益者の中心は、有権者ではない小さな子どもだ。

 彼らを育ててる親も貧困だから、毎日クソ忙しい。
 政策を精査して投票する習慣もなければ、選挙に足を運ぶ余裕すら乏しい。
 自民党は、自分たちの票にならない政策分野の課題を、民間に丸投げしたかったのだ。
 そう見るのが、実情に即したものだろう。


●貧困層は、高学歴文化の価値基準では幸せにはなれない

 財源の無さを理由にして特定の予算を削ったり、借金と増税以外の歳入増の仕組みを作れずにいる政治家は、「俺はバカで無能です」と宣言してるようなものだ。

 予算を縮小するなら、減らしても課題解決の費用対効果を上げられる仕組みを作るのが政治家の仕事だし、その新しい仕組みを作るために官僚を使いこなすのが優秀な政治家というものだ。

 しかし、安倍総理のようなボンボンに育つと、自分と同じ「ボンボンの発想」のお仲間を周囲に配置するので、自分の政策の間違いに気づかない。

 安倍のお仲間・菅官房長官は、言った。
「生まれ育った環境にかかわらず、未来の担い手である子どもたち一人一人が活躍できるよう、誰でも努力しだいで大きな夢を持てる社会にしなければならない」

 これぞ、生活に困ったことが無い人の”トンデモ発言”の典型だ。

 今日では、親の所得と子どもの学歴は正比例している。
 親が貧しければ、子どもも教育投資が受けられず、どんなに努力しても、塾や通信添削などの教育投資を当たり前に受けている他の多くの子どもたちの学力を超えることは難しい。

 もちろん、自分の努力でなんとか大学に入れた人もいる。
 しかし、今日では、そんな人は超レアケースだ。
 2人に1人は大学に入れる時代にはなったが、2人に1人はまだ大学に入れないのだ。
 (同じ大卒といっても偏差値による序列に組み込まれ、それが就活の際も反映される)

 偏差値50を下回る高校では、「高学歴しか高所得になれない」という傾向を鵜呑みにした進路指導が行われているために、高卒後、子どもたちは低所得を遺伝のように受け継いでしまう。

 それどころか、高校中退(=中卒)のまま、高卒認定すら知らない親子も珍しくない。
 高卒認定に合格するための指導塾やボランティア団体は今、全国に増えまくっている。
 しかし、合格しても、大学に行く金も無ければ、バイトの面接でも避けられてしまうことがあるぐらい、高卒認定は一般国民に知られていない。

 学歴不問で東大卒の年収を超えられる職場はいくらでもあるが、そうした情報を豊かに教えるように進路指導に当たる教師たちを研修する必要がある。

 また、学歴社会では、勤め人では低所得の職種にしかなれないどころか、雇用のパイにありつくのも大変なのだから、起業を教え、自分の仕事を自分で作り出せる人材に育て、食いっぱぐれが無いようにする教育も必要になる。
 子どもが小さい頃から親子で起業を実践的に学べるなら、10年後は自分で学費を出せる子どもにも育つかもしれない。

 世界中どこでも、起業は弱者の選択肢だ。
 貧農の女性支援でも、ホームレス支援でもね。

 高学歴なら高所得サラリーマンになるのが幸せへの道かもしれないが、低学歴では起業し、経営者として自分の仕事を自分で作れることがリスクヘッジになる。
 それを知ってるなら、高学歴文化の価値観で貧困層を救おうとすること自体に無理があることにも気づけるだろう。

 こうした教育を貧しい親子に施せる仕組みを政府が作れないとしたら、母国だけでなく中国の貧しい人民まで救い始めたムハマド・ユヌス氏を招いて、仕組みを作る仕事を公式に一任した方がマシだった。

 もっとも、ボンボンかつ時代遅れの安倍総理には、外国から優秀な人材を引っ張ってくるだけの発想はできないだろうし、ソーシャルビジネスを知ってるかどうかすら怪しい。
 せめて「家庭内野党」を公言する奥さんと仲良くしてたら、ユヌス氏から早めに教えを乞うこともできただろう。

 ノーベル賞を受賞した社会企業家ユヌス氏はビジネスで多くの貧困者を救いまくってる一方、アホな日本の総理は「財源が無い」と言い訳して民間の寄付に頼るってわけ。

 安倍や自民党を批判してても、らちがあかないので、国民の僕らはソーシャルビジネスを学んで賢くなろう。
 政治家にあれこれ文句をつけてるだけじゃ、現実は変わらないままだし。
 それに、社会企業家はこの瞬間も、貧困など深刻な社会的課題を解決する仕事に取り組んで、成果を出してるんだからさ。

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