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■「ひとり親を救え!プロジェクト」への公開質問状

 「ひとり親を救え!プロジェクト」では、児童扶養手当の加算額を1万円に増額してほしいと政府へ要望する署名を集めている
 貧困は子どもの教育機会を奪い、子どもも貧困となっていく「負の連鎖」があるので、その状況を打開するのが目的だそうだ。
 このオンライン署名は、1万人を超えた

 この件については、以下の2本のブログ記事をすでに書いている。

 上記の記事を読んでもらえれば、僕がこのプロジェクトに賛同して署名したことや、「総論は賛成だが、各論は疑問」という構えをとっていることがわかるだろう。

 「ひとり親家庭出身者」の常見陽平さんは、同プロジェクトを「応援しない」と表明している。
 理由は、彼のブログ記事を参照されたい。

 要は、「ひとり親を救え!」という呼びかけの言葉が、ひとり親家庭の一部には貧困のイメージをかぶされて「複雑な思い」を抱かせる懸念があると常見さんが指摘したのだ。
 でも、プロジェクト・メンバーの駒崎さんがその訴えを軽視し、「それでも貧しい人を現行の制度では救えない」と自説を主張するばかりで、当事者である常見さんは心を痛めたという次第だった。

 僕は「ひとり親家庭」の出身者ではないし、養う家庭もない独身男なので、この話題については「非・当事者」である。
 自分がよく知らないことだからこそ、当事者の声には真摯に耳を傾けたいと思う。

 その思いだけで言わせてもらうなら、「ひとり親を救え!」という呼びかけよりは、「ひとり親と共に生きよう!」という呼びかけのほうが誰も傷つけない気がする。
 それでも説明不足なら、「彼らに月1万円を~」をサブ的に足しておく程度のシンプルな呼びかけをすれば、プロジェクト・タイトルとしては十分だったのではないか?

 貧しさをことさら強調する必要はないし、「ひとり親家庭」がマイノリティゆえに孤立を強いられてる状況を示唆することもできる。
 今から直すことだって、検討してみる価値は十分にあるはずだ。

 しかし、それができそうもない事情が、「ひとり親を救え!プロジェクト」メンバーのみなさんにあらかじめあるような気がしてならない。
 というのも、そもそもの疑問として、このプロジェクトが、「ひとり親家庭」の当事者から出てきた内容なのかどうかが、公式サイトを見る限り、判断できないからだ。
(※あくまでも「判断できない」のであって、プロジェクトの趣旨を否定してるわけではない)


●当事者の声がないために署名をとまどう人の気持ちも…

 公式サイトの一部のページには、「ひとり親家庭」で育っている子どもの声が3名ほど紹介されてはいる。
 サンプル数があまりに少ないアンケートや、厚労省の統計数字も紹介されてはいる。
 しかし、一番お金に切実なはずの「ひとり親」の声は、どこにも紹介されていない。
(それどころか、いったいどの程度の税金を支出するのかの試算額も発表されてない)

 ただでさえ借金と増税で歳入の半分を埋め合わせている日本で、ニーズがあいまいなプロジェクトに巨額な投資をしたがる国民はいるだろうか?
 そんな税金の使い方を平気でしてしまえば、ただでさえ予算をぶんどるのが極めて難しい児童福祉の他の予算が削られる可能性も出てくる。
(例:親がいない子どもへの福祉は、貧困の再生産の現状になっている)

 だから、僕は「ひとり親を貧困から救うために署名する意味」というブログ記事で、手当の増額を政府に訴えるより、初年度はむしろ全国的な実態調査のコストだけを国に負担してもらった方がいいと提言した。

 東京のような都市部と北海道の田舎では、同じ「ひとり親家庭」でも生活実態やニーズはかなり違うはずだ。
 移動の交通費も、暖房費も、交際費も、教育投資の文化も、学歴層も、将来像も違う。
 それなのに一律に1万円だけ手当を増やす法案を政府に求めるのでは、「1万円」という額面の正当性や公平性が怪しくなってしまう。

 統計だけを見れば、日本のひとり親家庭の子どもの貧困率は54.6%で先進国で最悪かもしれない。
 しかし、「貧しい人は金が欲しいんだろ」で思考停止する前に、当事者自身のニーズの多様性について考えてみなかったのだろうか?

 金が切実に欲しい人は、いる。
 それでも、ほしい額面はそれぞれ違う。
 金よりも、今より高い収入を得られる仕事に就ける教育が欲しい人もいる。
 金や仕事より、休息や癒しが欲しい人もいる。
 一人でいられる時間や愛が欲しい人もいる。

 そうした当事者ニーズの多様性を浮かび上がらせる実態調査が、「ひとり親を救え!プロジェクト」の公式サイトには発表されていない。

 全国の当事者みんなが本当に「月1万円の手当増額」を望んでいるの?
 当事者がなによりも一番切実に欲しがっているのが「月1万円」なの?

 そう問うとき、僕にはハッキリ「YES」と言えるだけの自信はないし、それゆえにプロジェクトの公式サイトの説明にもリアリティが乏しいと感じてしまう。
 それは、趣旨に賛同して署名した僕だけが感じた疑問ではないはずだ。
 賛同の署名をしたいけど、ためらってしまった人たちも、同じ疑問を覚えたのではないか?

 賛同を増やすためにも、わからないので答えてほしい。
 そこで、以下の4つの点について、「ひとり親を救え!プロジェクト」メンバーのみなさんに質問したい。

Q1:ひとり親家庭の当事者の中で、何%の方が「月1万円の手当増額」を切実に求めているのですか?(※厚労省の統計ではなく、独自調査があれば教えてください)

Q211月末までに集めた署名を厚生労働省や関連諸機関に陳情した後、どういう戦略で手当増額の予算通過を実現させるつもりなのですか?

Q3:「ひとり親家庭」の親子が求めれば、NPOや企業などのプロジェクト・メンバーが日ごろから提供している有料サービスを月額1万円(年額12万円)だけ減らす仕組みを作ってくれますか?

Q4:親がおらず施設や自立援助ホームなどでで育つために教育投資が受けられないまま貧困化していく子どもや、ホームレスの子どもより先に、「ひとり親家庭」を公的資金で支援したい理由は何ですか?


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