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■子どもが稼いで何が悪い? ~10代の起業家たち

 「子どもの貧困」が叫ばれて久しいが、なぜ子ども自身が働いてはいけないんだろう?
 そういう疑問を持つ時、学校自体に「稼ぐ技術」を教える機能が期待されてないことに思い当たる。

 世界中で「多様性」が重視されてる時代なのに、学校に行ってないだけでハンデに感じたり、「かわいそう」とさげすむ視線がある。
 それは、「ふつう」から外れることを不安に感じる人たちが一方的に向ける同調圧力だ。
 学校に行ってないからといって、「みんなと同じように行きたい」とは限らないのにね。

 現実には、学校の教育内容やいじめ、先生の教え方などに不満を持っても、解決しないために、学校に行きたくない子もいれば、さまざまな事情で行けない子も少なからずいる。

 そうした子どもは、学校で教わるものとは異なる知識や技術、感性や能力を日々蓄積している。
 学校文化に毒されなかったからこそ身につけることのできた「当事者固有の価値」に、親や教師、周囲の大人たちは意外と気づきにくい。
 だから、学校に行かない子ども本人が自分で自分なりに「学校の延長線上にはない人生」を切り開いていくしかないことが、これまでも少なからずあった。

 そういう履歴を持つ人が、僕の友人には珍しくない。

 昔、NHKに「真剣10代しゃべり場」という番組があった。
 その第一期生として出演していたのが、松本創(はじめ)くんだ。
 彼は小学校5年で中退し、10代後半には不登校の当事者として全国各地で講演していた。
 その頃から自分でホームページを作っていた松本くんは、『しょうがねぇじゃん俺生きてるし』(河出書房新社)という自叙伝を書き、山田洋次監督の映画 『学校Ⅳ 15才』の原案になった。
 その後、22歳でITベンチャーを興し、現在はモンゴルにまで進出している。

 義務教育を自らやめて、自分の道を自分で切り開いていったのは、僕にとって松本くんが初めてではない。

●「稼ぐ力」を身につけられない学校よ、さらば!

 1985年、僕が20歳の頃、成人式を同い年で運営する委員を東京の中野区が公募していた。
 運営委員になった僕は、同い年の高野生という男を成人式のシンポジウムに起用した。

 彼は10代でマガジンハウスに企画を持ち込み10代のメッセージマガジンとして投稿型雑誌「ヒストリーズラン」を創刊していた。
 彼の弟・高野大くんは、小学校はほとんど不登校で、中学校も中退したが、十五歳でスワヒリ語を学びたいと決意し、一人でアフリカのタンザニアに旅立った。

 学校に行かなくても、生きていける。
 それは、偏差値の高い高校に通い、早稲田大学に入って、すぐ辞めた僕にとっては、新鮮な驚きだった。

 高校時代、親からバイトを禁じられ、金の無かった僕は、参考書や問題集だけは買ってもらえることに目を付け、それらを新品同様にきれいに使っては校内でタンカ売(バイ)し、小遣いを作っていた。

 「稼ぐ力」を身につけられない学校のあり方や、高学歴→高所得の仕組みに対して受け身のままでいては、自分の人生を自分で作り上げるには不自由だと感じていたのだ。

 21世紀に入ると、10代で起業する若者が珍しくなくなった。
 しかし、10代が自分で仕事を作り出すことを不安がる大人は、時代の変化についていけない。

 株式会社ノーブル・エイペックス代表取締役社長・大関綾さんは、1992年生まれだ。
 彼女は、小学生のころから起業を目指し、14歳で神奈川ビジネスオーディションに入賞した。
 ところが、進学した私立高校では起業が認められず、都立高校に1年遅れで入学することになった。
 そして、17歳でやっと、中学時代に発案した「ノーブルタイ」の製造販売で起業できたという。
 僕は彼女には会ったことが無いが、ネット上で早くから注目している一人だ。

 『よのなかを変える技術』(河出書房新社)で紹介した、1999年生まれの米山維斗さんは、9歳の時に元素カードを結合させて分子を作るカードゲーム「ケミストリークエスト」を発案し、12歳でケミストリー・クエスト株式会社を起業し、商品化を実現した。
 自分が面白いと思ったものを個人的に面白がるより、みんなでシェアしたいと思えば、商品化を親などの周囲の大人と一緒に考えてやってしまえるのは、90年代生まれの特徴でもある。

 3歳から15歳まで小学校も中学校も行かず、ひきこもってゲームばかりやっていた小幡和輝くんは、15歳で夜間部の高校に入ってから会社を作り、高校生どうしの集まるライブカフェを運営した。
 高校在学中にほりえもんを和歌山に呼んで講演会を主催するなど、地元を面白くするイベントをさんざん行った。
 学校文化に毒されていない彼は、自由な発想でイベントという収益事業の仕事を作り出し、現実をゲームのように面白く変えている。

 今でも「人ごみが苦手」という対人恐怖気味の小幡くんは、ほりえもんから「500人は集客して」と言われて講演チケットを一人で手売りして完売した「ぼっち属性」だ。
 それでも、現在は和歌山大学の学生をやりつつ、新規事業を次々に生み出している。





●多様な仕事を自分で作る起業と、起業を応援する仕組みへ

 中高生・大学生向けのクラウドファンディングサービスBridgeCampを手掛けるGNEXの代表を務める三上洋一郎さんは、高校1年生だった15歳でGNEXを設立した。
 しかし、16歳になった現在は、高校を中退し、事業に専念しているという。
 この記事(←クリック)で彼は、現在の教育現場に多様性が無いことを指摘している。


「中高一貫校で、同級生の間では『MARCH以上の大学に行けなかったら終わり』みたいな話があったんですね。
 それって、すごく生きづらい、多様性がないって感じて。
 だから、学力だけで考えたら中学から社会と接点を持っても良いんでしょうね。
 最終的には全ての人たちが自分のやりたいことで家族を養っていける社会ができればいい。
 職業としてやりたいことっていうよりは、解決したい社会の雰囲気みたいな話です。
 ただ今の就職というレールに乗ってできるか考えたときに、なかなか難しいだろうなって。
 何十年も働く中で、確実にやりたいことの軸がブレるだろうと。
 転職を余儀なくされるみたいな。
 そのとき心配せずに、自分の価値だけで生きていける社会ができないかなって」

 こうした「稼ぐ10代」を考えておきたいと思ったのは、子どもの貧困が問題視されても、その解決が「親に金を与える支援」で思考停止してしまっているからだ。
 なぜ、「子どもと一緒に稼ぐ」ことを、親も、教育関係者も、福祉関係者も、考えないのか?
 それは、自分自身に経験が無いことを始める不安と、チャレンジが怖い自己評価の低さが、大人の側にあるからだ。

 しかし、前述したように、現代の10代たちは自分自身の関心事の延長線上に、商品・サービスを生み出している。
 ものすごく努力して身につけた大きなスキルによってではなく、自分の関心分野で無理なく蓄積してきた知識や能力によって、自分のしたい仕事を自分で生み出しているのだ。

 今日、僕は生活保護を受給しているシングルマザーと彼女の息子(12歳・発達障がい児・不登校)から相談を受けていたのだが、その息子の描いた絵は、目を見張る素晴らしさだった。
 もちろん、彼は好きで描いてるだけなのだが、ビジュアルをスキャンしてデータとして売ることもできるだろうし、それは広告ポスターやホームページの壁紙、名刺のデザインや、有名ミュージシャンのCDジャケットなどで収益化できるポテンシャルがあるように感じた。

 実際、アウトサイダー・アートの作品はいろんな形で商品化されている。
 だが、たとえば、Yahoo!オークションが「青田買い版」として10代の描いた絵を売り出せるようにすれば、ひとり親もわが子の絵を売ることができるかもしれない。
 そこには、商品説明以上に、作り手の10代の人生ストーリーが必要だろう。
 金を出す側は、その子の将来性を買うのだ。
 買っておけば、後年、その子が有名なクリエイターになった時、オークションで何ケタも高く売り出せるかもしれない。
 絵や写真だけでなく、歌声やファッション・デザイン、文藝ものやキャラクターデザイン、LINEスタンプなどまで、子ども自身の遊びの中で作られるものから収益化できるものは少なくない。

 生活保護を受給している人たちどうしで一般社団法人を作り、親子で作った収益を団体収入にしておけば、団体がその収益で食事や衣類などを購入し、地域内の生活保護の受給者に分配すれば、上限のある受給費を少しでも浮かせることができるかもしれない。
 そして、何よりも、成長していく子どもたちが、自分で親を助けられる喜びに目覚めるだろう。

 学校は、そもそも「食えるようになるために必要な知識」を学ぶところだが、実際は学力・学歴で分断し、高学歴で高所得者になる人たちが「幸せになれる仕組み」を作り出し、一方的に低学歴・低所得者を従わせるばかりだ。
 しかし、低学歴・低学力には、高学歴・高所得者とは異なる幸せ観があるし、それは会社に入る仕組みを押し付けられるだけでは実現しにくい。

 貧しさから立ち上がるには、むしろ起業教育とその実践の試行錯誤が必要であり、12歳から始めれば、大人になる頃には会社で低賃賃金の仕事しか得られなくても、自分で自分の仕事を作り出して食える人材に育てられるのだ。
 そのためには、低所得者層にも開かれた起業支援のあり方が必要になる。
 そうした起業支援をやってみたい方からの相談も、このサイトこのサイトで受け付けている。
 そういうことに関心を持ってくれたら、このブログ(←クリック)も読んでおいてほしい。

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