とても「議論」などとは言えない一連の騒動の中で、同プロジェクトは3万人の署名を達成した。
しかし、この3万人署名について、どこか素直に喜べない人もいるのではないか?
僕自身、早くから賛同の署名をした。
それは、「2人目以後の児童扶養手当を1万円にまで増額する」という陳情が、ひとり親の当事者自身が最優先で望んでいることかもしれないと考えたからだ。
もしそうなら趣旨には賛同したいと思って署名したのだが、同プロジェクトの公式サイトは明らかにしていない。
そこで僕は、「ひとり親を救え!プロジェクトへの公開質問状」というブログ記事を発表した。
すると、プロジェクトのメンバーの一人、駒崎弘樹さんからtwitterアカウントをブロックされてしまった。そのことにはたいした感慨もわかないので、端的に不思議だなと思うだけだ。
(ちなみに僕は、他のメンバーから「ぜひ作戦会議をしましょう」と声をかけられている)
当事者ニーズに基づいた陳情なら、そのことが同プロジェクトの公式サイトに明記されてもよさそうなのだ。
というのも、「ひとり親」とひとくくりにされても、求める支援内容はそれぞれ異なるからだ。
だから、切実に「1万円の増額」を求める当事者がひとり親の何%に相当するのかを知りたかった。
もっとも、署名は11月末まで受け付けているので、まだ公開されてないだけで、ただの「準備中」なのかもしれない。
現時点では、「わからないので教えてほしい」としか言えない。
つまり、疑問に答えてほしいだけで、同プロジェクトに対して批判してるわけではないことを、このブログ記事の賢明な読者には理解しておいてほしい。
●なぜ「当事者ニーズ」にこだわる必要があるのか?
一口に「支援」といっても、ひとり親が切実にほしい内容はさまざまだ。
そこで、Facebookで当事者向けに、下記の質問への回答を求めてみた。
「ひとり親家庭」の親子に尋ねたい。最優先でほしいのは次のうちどれかな?①月1万円の手当増額②3万円以上の月収増を誰でも無理なくできるようになる職業教育③親がどうしても休みたい時に収入減にならない助け合いの仕組み④小さな子を一時的に手軽に預けられる安心の仕組み⑤その他
Posted by 今 一生 on 2015年10月27日
回答のサンプル数が少ない上に、現金が切実にほしい貧困家庭がネット環境にあるかどうかもわからないので、統計としては精度の高いものとは、とてもいえない。
ただし、いろいろ考えさせられたことがある。
それは、このように「ひとり親の当事者が切実に求めるものは何か」という問いかけが、今回のプロジェクトをめぐる一連の騒動の中では、大きな関心事になっていなかったことだ。
つまり、「貧しい親子に金をつけるのは当たり前だろう」というところで思考停止してる人が、署名に賛同した人の中にも少なからずいたのではないか?
貧困からの解決手段は、現金とは限らない。
世界で貧困解決といえば、魚を渡すより釣りの仕方を教えること。
「貧しい人には恵んでやれ」しか知らない国民が多ければ、貧困当事者はいつまでも自助努力の仕方を教えてもらえないまま、他人からの施しを受けるしかできなくなり、いつまでも貧しいまま。
貧困当事者を貧困のままにしてしまうのは、安い同情はもっても、支援の方法には関心を持たない国民自身なのだ。
自分が支持した支援の方法が結果的に当事者を貧困のままにすることになっても、署名した人は何ら責任を負わないだろう。
署名による陳情で予算がついた場合、その増額によってべつの予算が削られることもあるのに。
17年間で約18倍にも増え続けている児童虐待の対策予算が削られるかもしれない。
中卒でバイトしながら高校に通学し、虐待のトラウマと戦いながら自立援助ホームで暮らしてる「親なし子」への自立支援がカットされるかもしれない。
事実、軽減税率の対象品目の範囲を広げたい公明党が1兆円規模の財源が必要としているため、新たな財源を子どものいる低所得者世帯への給付を削減することなどでひねり出す案が自民党から出てると報じる新聞もあった。
子どものいる低所得者世帯への給付削減が、「ひとり親を救え!プロジェクト」の署名の高まりによって難しいと考えた自民党は、「親なし子」への支援削減をこっそりやってしまうかもしれない。
国民にとって、「親なしの子」の貧困は、「ひとり親」の貧困よりはるかに関心が薄い。
しかも、「親なし子」には票になる親がいないのだから、票を集めたい政治家に苦情や要望の声が届くこともなく、予算を削減するのに好都合に映るかもしれない。
それでも、「ひとり親を救え!プロジェクト」へ署名した人は、「ひとり親よりはるかに貧しい『親なしの子ども』のことは知らない」という構えに居直るのだろうか?
それを考える時、賛同の署名をした僕は、なんとも苦い思いをかみしめるのだ。
●署名は取り下げられない。せめて「支援」とは何かを学ぼう
国家予算をぶんどり合うのは、泥臭い現実と向き合うことだ。
キレイゴトではない。
一つの予算を引っ張るなら、それによって割を食う存在にも関心を寄せてほしい。
だからこそ、「ひとり親を救え!プロジェクト」には、ひとり親の中でも現金が最優先でほしい人たちの割合を示し、最小化した試算額面を公式サイト上で明らかにしてほしい。
その程度のことは、ひとり親より貧しい存在への予算削減を避けるために必要な配慮ではないか?
自分より過酷な環境で生きてる人たちを思うことは、社会福祉では大事な構えだ。
「自分の安易な選択が、生きづらい人をさらに生きづらくさせる結果を生むかもしれない」
そうした懸念やとまどいなしに、どんな正義も成り立たない。
しかし、そこまで深く生きづらさを考える人は、残念ながら多くはない。
みんなが賛同していれば、自分もワンクリックぐらい簡単にしてしまう。
そういう心当たりがあるなら、押してしまった署名は取り消せないので、せめて下記のブログ記事で今回の騒動の意味を振り返ってみてもらえないだろうか?
「ひとり親を救え!プロジェクト」に賛同の署名をした僕は、署名し、拡散した責任を感じる。
だからこそ、不安を払しょくできるだけの回答が遅かれ早かれ得られることを心待ちにしている。
なお、11月2日(月)夜7時から、TOKYO MX「モーニングCROSS」のMC堀潤さんのニコニコチャンネル「発信は誰にも止められない」(有料)に、プロジェクト(駒崎さんを含む3人のメンバー)が参加するという。
「ひとり親家庭が貧困だというイメージを植え付け配慮が足りないでのではないか」といった声も寄せられたため、「番組ではこうした問題をユーザーの皆様と一緒に考えて」いくそうだ。
視聴される方は、ぜひこのブログを読まれて不安を覚えたことなどを質問してみてほしい。
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