『24時間テレビ エロは地球を救う!』というテレビ番組によるチャリティ・キャンペーンのことだ。
「STOP AIDS! チャリティ」という副題がついているこの番組では、「ストップエイズ啓蒙活動」に寄付される以下の3つのアクションが用意されている。
☆女の子のおっぱいを揉んで1000円以上の募金をするイベント「おっぱい募金」
☆おっぱい募金の会場でリリー・フランキーさんがデザインしたチャリティTシャツを購入
☆おっぱいを見ない時間1分につき5円が寄付されるオンラインサービス「愛って、ガマンだ。~おっぱいを見ないおっぱい募金~」
一部の方には、ばかばかしくも見えるだろう。
でも、「自分の体で社会貢献になるなら」と参加する女性たちも、おっぱいに釣られる男たちも、誰に強制されたわけでもなく、自発的に参加している。
社会貢献への参加には、直感的に「なんだか面白そうだ」と思ってもらえる仕掛けが必要になる。
それが参加しやすい仕組みなら、参加者も寄付総額も増やしやすい。
実際、2002年から 12 年も続けられ、12 年間で募金総額は 3,350 万円を超え、エイズ予防財団へ毎年全額を寄付してきたという。
その点では、このチャリティ・キャンペーンは成功しているといえる。
ただし、寄付のリテラシーの点では、残念なところがある。
今年から、募金の入金先がエイズ予防財団から未来支援委員会に変わった。
昨年の番組サイトにはあったエイズ予防財団のバナーの代わりに、この団体のバナーがあったので調べてみると、『24時間テレビ エロは地球を救う!』を立ち上げたリレー株式会社が新設した団体らしい。
そこで、以下の課題が浮上した。
① これまで寄付金を受け取ったはずのエイズ予防財団は、その額面を公表していなかった
② 未来支援委員会は、「寄付金をティーンエイジャーのエイズまたは感染症の予防のための支援を行っていきたい」と発表しているものの、その具体的な用途の例示は今後の経過を待たなくてはわからない
③ なぜ今年から寄付の入金先がエイズ予防財団から未来支援委員会へと変わったのかがわからない
④ 『24時間テレビ エロは地球を救う!』の公式サイトに、①②③に関するわかりやすい説明がない
以上の4点は、どんなチャリティ活動にも寄付者から求められる課題だ。
とくに、「エロ」というだけで煙たがる一部の市民がいる逆風のアクションの場合、寄付のリテラシーを満足させないと、自分の胸を触らせたり、見せる女性たちの「社会に役立ちたい」という思いをふみにじる恐れが出てくるため、バッシングされやすくなってしまう。
12月のチャリティなので、まだ日数があるため、情報公開が遅れているだけかもしれない。
でも、早急に解決したほうがいい課題だろう。
僕は、このばかばかしくも面白いチャリティ・アクションを応援したい。
だからこそ、あえて指摘しておきたいのだ。
●性の多様性を理解してない「代理店病」の人たちのクソ正義を笑え
昨今、都市部を中心に社会貢献活動は盛んになってきてはいる。
しかし、「性」に関するアクションを楽しく語ろうとするだけで煙たがる人たちが一部にいる。
もちろん、性虐待やレイプなど、性被害の当事者支援活動には笑えない深刻さが確かにある。
それにしても、「かわいそうね」という同情のまなざしだけで寄付金が増えるということはない。
課題が深刻であればあるほど目をそむけたくなるのも、人情だからだ。
「STOP! AIDS」アクションも同様で、性病をこじらすと大変なことになりかねない深刻さがある。
しかし、だからこそ意識高い系の金持ちや大企業が大金をポンと寄付すればいいのかといえば、それは違うだろう。
どんな人にもAIDSのような性感染症にかかるリスクはあるのだから、気軽に参加できるチャリティ・アクションがあった方が関心を早めに持てる人を増やせるし、それによって増えた寄付金で病気にかからずに済む人も増やせる。
そうなればセーフセックスや少子化問題の解決にもつながる。
ところが、社会貢献活動に「性」がからんだ瞬間に「ばかばかしい」と一蹴し、思考停止したがる人が、生きやすくなるための社会設計(ソーシャルデザイン)に関心がある人たちの中にもいるのだ。
彼らは、風俗やアダルトビデオ、エロ雑誌などの「性」の業界に対しても、健全化ばかりを求める。
まるで中絶を禁止したがるアメリカのキリスト教原理主義者のように、苦しんでいる当事者視点には立たず、性の多様性についても「自分の交際範囲になければOK」という構えをとる。
これは、「広告代理店病」と呼んでいい属性かもしれない。
大手の広告代理店は、大企業や政府から金をもらって仕事をするので、大企業や政府にいかがわしいイメージがつかないように、「性」のような生々しく切実な社会的課題の解決にはコミットしない。
要するに、自分自身が明日も明後日も豊かな暮らしをするためには、お行儀良くしておこうってわけだ。
こうした「代理店病」の属性では、性の問題だけでなく、ホームレスやニート、ひとり親などの貧困問題はもちろん、障がい者や精神病者、難民、ユニークフェイスなどに対する差別問題も含め、深刻で切実な社会的課題への関心が高まらず、それゆえ課題が残り続ける現実を温存してしまう。
彼らは既得権益そのものなので、従来の価値観を揺るがすような社会変革を嫌がるし、誰にとっても生きやすい社会を作ることは自分たちの利益を減らすことだと勘違いしてるので、口先だけのソーシャルデザインを平気でやってしまう。
しかも、金を出す企業も政府も「電通」や「博報堂」の名刺で信用してしまうのだから、やれやれなのだ。
(昨今では、教育現場にまでその手の輩が進出しているので、若者たちはダマされないでほしい)
日本テレビの『24時間テレビ』では、有名人の出演者と広告代理店にスポンサー企業から莫大なギャラが支払われて、世界中のチャリティ番組制作者からバカにされているが、その愚かしさ・さもしさに比べれば、おっぱいを揉ませている低予算番組『エロは地球を救う!』の女性たちのほうが、はるかに潔く立派な人たちに見える。
「代理店病」でお涙ちょうだい番組に感動してる人たちは、その現実の違いにも目をそむけるのかな?
性は、その国の民度を図る一つのものさしだ。
世界的にも珍しい「性のタブーのない伝統」を持つ日本で、性をおおらかに笑える文化を下に見るだけで思考停止してしまうのなら、それは近代化という病に毒されただけの小人物にすぎない。
アフリカで未開部族を見てパンツを履かせた西洋人と同じように、他人を自分色に染め上げて「おまえを幸せにしてやろう」なんて支配欲求を正義と勘違いする人には、なりたくないもんだね。
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