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■マイノリティの自由と権利は、消費と仕事で拡張しよう

 「レインボー消費」と電通が名づけたLGBT向けの商品・サービスの一環として、生命保険が話題になっている。
 渋谷区が今月5日から、同居の事実などを確認した上で「結婚に相当する関係」との証明書の発行を始めるのを受け、第一生命保険は証明書があれば第三者の受取人として認め、これまで行ってきた独自の確認作業はしない方針という。

 日本生命保険も証明書があれば認める方向で、ライフネット生命保険は渋谷区に限らず、住民票やパートナー関係継続の意思を確認する書面を提出すれば受取人として認めることをルール化し、4日から運用を開始するという。
(以上、Yahoo!ニュースより)

 日本では「13人に1人がLGBT」と試算されており、彼らが商品・サービスを買う市場規模は5.9兆円に上ると見積もられている。
電通報より)

 日本は、経済の低成長時代に入って久しく、従来通りでは儲からなくなった。
 だから、少しでも市場が見込めるところには、商品・サービスを提供することで収益化を図りたいと考える企業が増えるのも当然の成り行きだ。

 もっとも、それを裏返せば、「市場が見込めないほど少ない属性の人たちは関心外にされる」ということでもある。
 だから、「レインボー消費」のターゲットにされることを喜べない人たちもいる。
 LGBTも、これまでずっと保険の消費者として関心外にされてきた。
 だから、「今さらかよ!」と思った人もいるかもしれない。

 ただ、そこで考えておきたいのは、消費者になる(=金を払う側になる)ことは、商品・サービスを提供する側に対して、自分たちの不満や不平を実現させる権利や自由を得るのと同じだってことだ。
 これは、納税者が税金を使って政策を実現する政治家に対して、自分たちの不満や不平を実現させる権利や自由を持っているのと似ている。
 しかし、ビジネスの方が政治よりもはるかに要望を反映しやすいし、しかもニーズに応える速度も勝っている。

 消費者のニーズに応じられなければ、商品・サービスを提供する企業は儲けを得ることができないから、消費者の声を正確に読みとろうとするし、その声を受けて商品・サービスを他社よりも優れたものに常に洗練させていかないと、生き残っていけない。

 渋谷区のパートナーシップ条例の施行という行政側を待ってから始まったこととはいえ、レインボー消費として市場が可視化されたことは、LGBTにとって自分の自由や権利を主張できるチャンスが今後もますます拡張できることを意味している。

●当事者の自由と権利を拡張する「当事者主体のビジネス」

 LGBTの自由や権利が実際にどのような商品・サービスにおいて拡張されるかについては、電通報を参照してほしい。
 もっとも、LGBTの当事者自身も、自分たちに必要な社会変革を実現するために、ビジネスを通じた活動をさまざまに始めている。

 たとえば、LGBTならではの困りごととして、結婚式場を借りられなかったり、賃貸物件に同棲しにくかったり、遺産相続などの法制度の恩恵がどこまで受けられるかに不安を感じることがある。

 東京では、Letibeeというベンチャーが、LGBTの結婚式や結婚生活を中心に式場選びから法律相談まで包括的なサービスを事業化している。
 同性愛者の結婚式をためらってきた式場も、不景気や非婚化で結婚式自体が減れば、経営的に厳しくなる。
 しかし、利用者(=消費者)が増えるとわかれば、経営者は風向きを変えるのだ。

 Letibeeでは、LGBT関連のオンライン・ニュースの配信も手がけるなど、当事者視点の社会啓発も始めている。



 大阪では、虹色ダイバーシティというNPO法人が、主に企業から受注する形でLGBTの社員が働きやすい労働環境についてコンサルティングや研修などを請け負うサービスを事業化している。

 企業が海外への事業拡大を考え、LGBTを死刑にするような国へ派遣しようとする際、現地で社員が殺されるかもしれない。
 また、世界中には日本よりLGBTの権利を大事にする国が多いので、自社の社員のLGBTに対する認識が甘いと、対等な文化の企業としてみなされず、ビジネスが上手くいかないこともある。

 こうしたビジネス上のデメリットを作っているのは、日本の企業の中でLGBTが相談しにくい仕組みがあるから。
 それを解決できる知恵を、虹色ダイバーシティは当事者ゆえに持っているのだ。

 彼らは当事者を中心に動いているが、非・当事者である外部の団体や行政などとも積極的な連携を広げ、コラボイベントを共催したり、当事者ニーズを浮き彫りにするアンケートを大学と共同で実施するなど、社会に開かれたアクションを意識している。



 このように、マイノリティの当事者ゆえに困っていたことを、当事者自身がビジネスを使って解決していったり、商品・サービスの消費者として発言力を持つようになる例は、LGBTに限らない。

 障がい者・在日外国人・ひとり親・メンヘラ・生活保護の受給者など、社会にはさまざまな属性のマイノリティが生きている。
 それぞれの市場は、必ずしも大きくないかもしれない。
 だが、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・その他の総称として「LGBT」という市場の大きさが見過ごせないものとして「非・当事者」に認知されたように、一つの属性の内側で孤立することなく、自分と同じことで切実に困っている他の属性のマイノリティと連帯すれば、より大きな市場規模になることに気づく必要があるだろう。

 困っている人が多ければ、その困りごとを解決することを仕事にできる。
 解決できる商品・サービスを生み出すことこそ、ビジネスなのだから。

 自由や権利を求める運動は、今日では仕事や消費を通じて「日常的な取り組み」の中に位置づけられつつある。
 1日1日、仕事や消費で積み上げられていく蓄積は、日に日に確実に大きくなる。
 さまざまな業界で働く人が自分の勤務先で「マイノリティの声を聞かなければ非・当事者の自分たちが生き残れない」と気づくところから、この社会は誰にとっても生きやすいものへ変えていける。
 それは、夢物語ではない。
 どんな人も、人生のどこかでマイノリティの当事者になるのだから。

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