2008年1月11日、NHK総合テレビで『きょうも家族会議 ~親子4人大道芸にかける~』(午後11時~11時29分)を観た。
2007年3月から名古屋を拠点に遊園地やデパートなどで大道芸を披露している一家の活動を追った番組だった。
父母は、共に46歳(当時)。
19歳(当時)と21歳(当時)の二人の息子は、幼い頃からジャグリング(複数のものを空中に投げ続ける技)が上手で、二男の高校卒業を待って一家を挙げて「スピニングマスターズ」と称し、大道芸で生計を立てることを目標に活動を始めた。
夫婦は揃いの黄色いチェックのシャツを着て、父はコミカルな司会役、母はアシスタントに徹し、息子たちを盛り立てながら、毎日その日の出来を家族みんなで反省する。
父は、1999年まで自動車ラリーのエンジニアだった。
海外を転戦し、家族と過ごす時間が少なかった。
「(収入面では)今とは比べられない生活。
それを投げ捨てても家族で何か一緒にやりたいと思っていた」
息子たちが寝静まった後、妻に「あと4,5年だな。ビジュアル的に人前に出られるのは」と語った。
長男も、「家族でやってるところが売りになってるけど、どこまで続けられるか。将来は兄弟の自分らが食わしてやる」と言う。
ナレーションは一切なく、淡々とテロップが状況を説明する静かな番組だった。
それゆえに映像がものをいう。
長男は一座の公式サイトの掲示板で「シリアス、激論ばかりで暗い、寂しい雰囲気タップリの映像」と残念がっていた。
常にベターな芸を目指す厳しさがこの家にあったのは事実だろう。
だが、息子は自分の家族の明るさが十分に描かれてなかったことを残念がった。
それは、父親が「家族で何か一緒にやりたい」と思ってくれたことで自分の仕事を真剣に応援してくれている喜びが息子にあるからだろう。
あれから7年後、「スピニングマスターズ」はどうなったんだろう?
●厳しい道だからこそ、やりがいも成長も生まれる
ネットで調べてみると、今日でも全国で公演していることがわかった。
公式サイトを見ると、兄弟だけで「大道芸じょんがら」としてパフォーマンスしているようだ。
Youtubeに1年前のパフォーマンス動画があった。
兄弟仲良く津軽三味線をかき鳴らし、ジャグリングをし、路上のお客さんたちとの楽しい掛け合いの面白さで魅了している。
この7年間で、息ピッタリで安心して見られる芸を披露できるようになったのがわかる。
パフォーマンスの後、二人は自分たちが兄弟であることを明かす。
帽子を差し出し、観客からおひねりをいただく。
「僕たち、これだけで生活をしております」
芸の道は、きっと厳しいだろう。
大道芸は、もっと新味を求められたり、多彩な内容も問われたり、路上での披露の機会も奪われていくかもしれない。
それでも、僕はこうした芸人がたくましく生き残れる社会の方が生きやすいと感じる。
そして、その厳しい道でも、うしろから応援してくれる親がいることが、なんともうらやましい。
どんな失敗でも、苦労でも、乗り越えていける力が息子とたちにあることを信じてくれる親は、この国では珍しいからだ。
こんなふうに、若い人の失敗も含めて挑戦を応援できる大人でいたい。
失敗させないように先回りしてあれこれ禁じる大人になんか、なりたくない。
どんな失敗もしてみるもんだし、失敗から学ぶことでしか人間は成長しないのだから。
若い人から成長のチャンスを奪って、成功術だけを教え込もうとするのは、自己評価の低い大人が採用する生存戦略にすぎない。
彼らは地に足のつかない「安定」という幻想にすがるしかないのだろうが、今日という時代の激変には適応できないだろう。
「スピニングマスターズ」は今、親が息子たちのマネジメントや裏方を務める「オフィス・マム」で出演オファーを受け付けている。
ぜひ、多くの方がこの記事をRT・シェアし、彼らを招くイベント主催者の目に届くチャンスを増やしてほしいなぁ。
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