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■福祉の仕事をラクにする商品、続々と登場

 市川裕康さんが現代ビジネスに執筆した記事『グーグルの調査で明らかになった「興味ある傍観者」の存在---政治・市民活動を「自分ごと」として理解してもらうためには』には、市民的な活動に参加する場合として、以下の3点が指摘されている。

① 自分や自分の家族に直接関係する争点がある
② プロフェッショナルなスキルなどが活かせる
③ 過去に同様の成功体験があり、感情的に意義や満足感が得られる

 上記のうち、②について日本の福祉シーンにおける事例を拾ってみよう。
 実際、仕事を通じて社会的課題を解決できる商品・サービスを生み出したものには、面白いものが少なからずある。
 聴覚障害者向けの福祉グッズを製造・販売している東京信友の屋内信号装置「シルウォッチ」(専用腕時計タイプ受信器セット)は、身のまわりの必要な情報を腕時計タイプの受信器が文字と振動で知らせてくれる。

 玄関のチャイム(インターホン)の呼び鈴や電話、ファクシミリの着信などがあった場合、送信機から信号が発信され腕時計で受信し、知らせてくれるのだ。

 送信機は誤作動防止機能と呼び出し機能が標準装備。腕時計タイプの受信機は文字表示が消えた後も、ボタン操作で直前の文字情報を再表示する。
 しかも、聴覚障害者手帳2級以上の人なら、最寄りの役所の福祉課に福祉助成金(日常生活用具の給付)を申請して購入できるという。
 仕事に就くろう者にとって、こうした機器があると便利だろう。

 商品を通じて解決できるのは、障がいを持つ当事者自身の困りごとだけではない。
 障がい者の就労を支援する福祉事業所も、障がい者が作った商品をより多く売るための販路拡大が課題になっている。
 しかし、オンラインショップを立ち上げている事業所はまだまだ少ない。
 そこで、Amazonでの販売を代行しようというNPOも現れた。



●近所の福祉事業所にある授産品をAmazonで代行販売

 NPO法人目黒Green World Projectは今年1030日から、障がい者福祉施設「しいの実社」で製作されているマフラーやラグマット、雑貨など120点の代行販売をAmazonで開始した。
 目黒区内の自閉症を始めとする知的障害ともつ人の生活介護・就労継続支援B型事業を行うしいの実社には、障がい当事者が約30名が在籍。
 同区内の店舗で手作りの織物製品をはじめ、クラフト製品、焼き菓子、天然酵母パンを製造・販売している。

 目黒Green World Project理事長トベタ・バジュンさんは、ブログでこう書いている。
「福祉施設で作られた商品は、繊細な色使いやデザインなど市販の製品と比べても、素晴らしいものばかり。
 ひとりでも多くの人に、ほとんど手作りで作られている、素晴らしい商品を知っていただくきっかけを作っていきたい。
 この取り組みを目黒区で成功させ、全国へと広げていきたい。
 福祉施設の生産者、購入者、皆がハッピーになれるような仕組みを作っていきたい」


●高齢者介護の現場で働く人もラクにする商品

 横浜市中区の関内フューチャーセンターに事務所を置く株式会社トライフというベンチャーでは、オーラルピースという商品を製造・販売している。

 歯磨きと歯周病予防などの口腔ケアの両方ができる商品だが、抗菌成分や香料といった原料のすべてが天然由来のため、飲み込んでも消化され、腹痛を起こすこともない。
 幼児や高齢者に安心して使えるので、使用者だけでなく介護をする人の負担軽減にもつながる。
 これは、生活介助を業務とする介護福祉の現場では重宝するアイテムだろう。

 ジャーナリストの池原照雄さんの記事によると、この商品の発売は20137月で、今年7月までの1年間は前年比で約5倍の1億円弱を売り上げたそうだ。
 海外からも注目され、今秋からドイツ、スウェーデンなど欧州5カ国で発売予定とか。
 その記事には、こうある。


「トライフは代表取締役の手島大輔(45歳)と取締役の永利浩平(44歳)の2人だけで運営するベンチャーだ。
 転機となったのは、手島が重篤な父親の介護で、歯磨きやうがいが、いかに大変かを実感したこと。
 こうして永利が開発したシーズが口腔ケアというニーズに結びついた。
 高齢者の死因では唾液や胃液などが肺に流れ込んで発生する誤えん性肺炎が上位を占めるが、その肺炎を起こす細菌への抗菌力も確認されている。
 事業運営もユニークで障害者の就労支援スキームを導入している。
 トライフが障害者に650円で商品を供給、卸売りや小売りによって250350円が障害者の収入になる。
 すでに全販売数量の半分ほどがこのスキームに乗り、障害者の雇用を促進している」

●介護者の負担をラクにする、片手で車イスを上げられる商品

 11月17日付の琉球新報によると、石垣市のファーストハンドコミュニケーションが運営する義肢装具工房ライフジグが、車いすの片方の車輪を片手で簡単に持ち上げる道具「手であが~る」を開発し、商品化を目指して研究に取り組んでいるという。

 これは、車いすの車輪をジャッキのように上げるL字形のてこ。
 車いすの利用者が屋外から屋内に入る際、車輪の汚れを拭き取るために使用する。

 支点に小さな車輪を取り付けることで、力を加えずより円滑に車いすの片方の車輪を持ち上げることを可能にした。

 1人が車いすを持ち上げ、別の1人が拭き取り作業をするなど介護者の負担を目の当たりにして、今年2月から開発を進めてきたとか。

 これも、介護サービスの現場をよく見ているところから生まれた発想だろう。
 介護は世界中で課題になっているユニバーサルなイシューなので、こうした福祉商品の開発はローカルビジネスとしても注目したいところだ。

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