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■石炭火力発電を輸出し、他国に嫌われる日本

 5年前の2010年、NHKスペシャル『夢の新薬が作れない ~生物資源をめぐる闘い~』(1011日午後10時~1049)を見た。
 開発途上国が持っている希少な動植物から、先進国が人工合成ではなかなか作れない画期的な新薬が作れる。

 この生物資源の市場規模は年間70兆円にも上る。
 そのため、これまで自国の資源を不当に搾取されたり、乱獲されてきた途上国は利益の分配を主張し始めた。
 だが、先進国はそのコストを払うのを嫌がるため、双方の主張が噛み合わず、新薬の開発が足踏みしている。

 南アフリカ原産の花ペラルゴニウムの根はドイツに輸出され、新しい風邪薬の原料として10年で10倍の売上になった。
 採取できるエリアは失業率が50%以上の南アで最も貧しい村で、栽培への投資もできない。
 無許可の乱獲で今年ペラルゴニウムは、南アでは「絶滅危惧種」として記録された。
 先進国に搾取されたまま資源が消える。

 一方、ペルーのアマゾン川流域に繁殖している木の樹液は「竜の血」と呼ばれ、下痢止めを始めとする万能薬になる。
 これをアメリカの製薬会社が買い上げ、栽培への投資も始めているが、ペルー政府は売上の15%の分配を求める。
 政府は「竜の血」は先住民の伝統的知識であり、自国の固有の資産だと主張するが、町の露店でも瓶詰めでふつうに売られているほど一般的な商品として定着している。
 そのため、ペルー政府はこれまで一度も外資からの利益分配を受けたことがないという。

 サモアのママラという木からとれるプロストラチンはエイズを完治できると見込まれ、アメリカのエイズ研究同盟という市民団体が製薬会社に開発を求めている。
 だが、分配率を政府が求めるほど高くは支払えない。
 そうこうしているうちに、人工合成が可能というニュースが入ってきた。
 人工で安く作れるなら、サモアへの分配話はなくなる。

 貧しい途上国では、先進国による搾取・乱獲を「バイオパイラシー」(生物資源を奪う海賊行為)と呼ぶ。
 この番組と同じ年に名古屋で開催されたCOP10生物多様性条約第10回締約国会議)でも、この話題について激しい議論が交わされた。

 この「先進国VS途上国」という構図は、2015年の今年のCOP21まで不安視されている。
 CO2の排出によって繁栄を極めた先進国が規制を嫌がるだけでなく、これからCO2を排出しても経済的繁栄にありつきたい途上国にまで厳しい排出規制を求めるからだ。

 もっとも、CO2排出の主な「元凶」であり、経済大国の1位・2位を占めるアメリカ・中国が、今回ばかりは折れて、途上国も含めて協調路線をとると期待を示すメディアもある。
 アメリカでは低コストのシェールガスや再生可能エネルギーによる経済活性が見込めるとわかってきたし、中国でも「途上国の代表」として見本を示す必要に迫られているからだ。

 しかし、今回僕ら日本人が見ておきたいのは、外国に原発を売り始め、石炭火力発電まで売ってCO2と石炭による公害をまき散らしている安倍・自民党の時代錯誤ぶりだ。




●日本の石炭火力発電の輸出は、世界に嫌われている

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ここ20年における、日本の石炭火力発電所の平均エネルギー効率は約40%。
 2011年の福島第一原発事故の影響で、ほとんどの原発が止まっている日本は火力発電に頼りすぎ、年間120億ドル近くの石炭を消費している。
 しかも、日本は、世界最大の石炭プロジェクト出資国だ。

 この惨状は、再生可能エネルギーに舵を切らない無能な政治家たちにすっかり不信感をもってあきらめがちの日本人よりも、海外の市民の方が深刻に受け止めているようだ。

 イギリスの活動団体Brandalism」は、COP21のスポンサー企業を偽善的だと批判する600もの広告をパリに設置した。
 その一つは、原発事故以後、CO2をまき散らす石炭火力発電を国内の主力発電インフラとして促進するばかりか、アジアの途上国に石炭火力発電を売りまくる日本に対して抗議するものだった(下の画像)。


 発電インフラを作る日本企業は、石炭火力発電でもCO2を排出する量を劇的に減らせる技術革新ができると主張する。
 これを安倍総理は鵜呑みにするわけだけど、再生可能エネルギーへの投資の伸び率が高いことを無視しているか、石炭火力発電で儲けたい企業と仲良くなると、安倍・自民党にとって良いことがあるんだろう。

 スマートジャパンの昨年のニュースによると、再生可能エネルギーに対する世界全体の投資額は、2000億ドル(20兆円)を超える高いレベルの投資が依然として続いていて、太陽光発電システムの導入量は2012年の31GW(ギガワット=100kW)から2013年には39GW26%も増えている。

 日本は80%も投資額が増えて、上位10カ国の中では最高の伸び率にまでなっている。
 2013年の投資額は286億ドルで、第2位の米国に迫る勢いなのだ。
 日本の投資額のうち8割は出力1MW(メガワット)未満の発電設備が占めている。
 だが、今後はメガソーラーの投資案件が増えてSDC以外の伸びが予想されるそうだ。


 なぜ、ここまで投資が伸びている再生可能エネルギーに政府が力を入れないかを思えば、イギリスの活動団体だけでなく、ほかの多くの国々の市民も、日本の時代遅れに対していらだつのも当然だろう。

 政治のありようは、その国の民度そのものだ。
 安倍・自民党が利権にまみれていようと、それは日本人の一部にそういうあり方を歓迎する人たちがいることの証拠にすぎない。

 TBSの報道特集によると、日本の石炭火力発電はインドへ輸出され、彼らの農地を石炭の灰で汚染し、牛を殺し、人間にも健康不安を与えているという。
 これは、現地の貧しい農夫たちにとって、自分たちの愛してきた土地を奪われる「バイオパイラシー」(生物資源を奪う海賊行為)そのものだ。
 技術支援の名を借りた「経済的侵略」といってもいい。

 このブログで僕は何度も「当事者固有の価値」について書いているが、途上国には途上国なりの「当事者固有の価値」があるはずだ。
 外国の政府の要請があろうと、開発対象になる土地の市民の声を無視して石炭火力発電を強引に進めれば、市民を敵に回す。
 市民を敵に回すことが国内で頻繁に進められれば、外交政策上、日本は不利になりかねない。
 あちらの政府だって、民主化が進めば、遅かれ早かれ、市民の声を無視できなくなるからだ。

 目先の利益ばかりを追うのではなく、再生可能エネルギーの技術革新と普及の仕組みにもっと輸出のチャンスを広げていく方が、他国との関係を長期にわたって発展させることができるはずだ。
 こういう大型インフラの受注は、日本企業を富ませ、日本の国益を守るかもしれないが、そういう良い面だけでなく、他国の市民の健康を害することがないような仕組みまで含んだ開発投資のあり方を、僕ら日本人は日本政府に求めていく必要がありそうだ。

 ただでさえ日本は戦争当時にアジア人を下に見て、隷属させてきた歴史がある。
 同じ敗戦国のドイツのように率先して謝罪し、自ら見本となって再生可能エネルギーにシフトしていけば、もっと有効な関係を近隣諸国と結べる。
 今日ではヨーロッパ諸国のドイツを見る目はマイルドになった。
 ナチスに対する恨みも、ドイツ自身がナチスに対する徹底した制裁を施すことでやわらいでいった。

 安倍には、それができない。
 その程度の小さな器の人間を、僕らは総理にしてしまった。
 その意味を、このブログ記事(←クリック)とセットで考えてみてほしい。

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