よのなかには、貧困や障がい、差別や自殺など、深刻な社会的課題がたくさんある。
それらの課題を解決するための仕組みは、日に日に洗練されている。
こうした課題解決の仕組みを考えることは、面白いし、楽しいことだ。
ボールの中に振り子のような発電装置と蓄電装置が備わっており、ボールを蹴ると電気が蓄えられる、LEDライトなら30分のプレイで3時間点灯する。
2008年にハーヴァード大学で出会ったジェシカ・O・マシューズとジュリア・シルバーマンは、クラスのプロジェクトとしてこの「SOCCKET」を発想し、卒業後の2011年にはUncharted
Play社を仲間と立ち上げ、2013年に商品化にこぎつけた。
商品として販売されるパッケージは、ライト付きボール1つと充電できるポータブルライト10個。
ボールからライトへの充電は25秒でできるので、電気が貯まるたびに充電しておけば10人がライトを、1人がボール自体を持ち帰れば、1チーム11人の全員が家でライトを使える。
(以上、WIREDの記事より)
Uncharted Play社という社名は、「新しい遊び」を意味する。
彼らの社是は、「play out of bounds」(使用範囲以上の遊び)である。
遊びながら自分たちの使う電気を自分たちで作ることで、少しでもよのなかを良くしていこうという仕事を、彼らは自分たちで作ったのだ。
実際、同社ではサッカーボールのほかに、飛んでるだけで発電・蓄電する縄跳びのロープも商品化している。
同社のtwitterアカウントをフォローしておけば、最新情報も得られる。
●同情<共感<欲望の発想によるソーシャルデザイン
Uncharted Play社のように、アイデアがあったら時間と金をかけてカタチにして、商品化までやり遂げるというプロジェクトは、もっと教育現場で試行錯誤されていいはずのものだ。
ただでさえ資源がない日本なら、そういうイノベーションの発想法と事例を教育現場で養う必要がある。
もっとも、学力偏差値ばかり高くて時代のニーズに応じられないほど知恵のない文科省の官僚では、そんなプログラムは組めないだろう。
というのも、自由な発想のできる環境には、さまざまな泥臭い人間の欲望とひもづけることが許される必要があるからだ。

開発元のポルノサイト「PornHub」のページには、こう書かれている。
「毎日、何百万人もの人たちがアダルトコンテンツで時間や電力を浪費し、環境を傷つけています。
我々はPornhubでそれについて何かを行うことを決めました。
あなた自身を愛することで、地球を愛することができます」
つまり、オナニーによる発電ガジェットを開発することで、ポルノを見てオナニーしたい人がその時間で文字通りの「自家発電」を行えるようにしようってこと。
ポルノサイトにとっては、そのサイトを見るユーザが増えれば広告収入が上がり、ユーザは「地球のために」と言い訳しながらオナニーにふけることができる。
こんな柔軟な発想は、「教室」からは出てこない。
新しい仕組みを作り出すクリエイティブな現場には、こういう泥臭い欲望をふまえて考えられるおおらかさが必要になるからだ。
遊び心が歓迎されるリラックスな環境こそが、新しい仕組みを生み出すのだ。
以前にもカラオケで歌うだけでチャリティになる仕組みや、おっぱいを見ない時間1分につき5円が寄付されるオンラインサービスについて書いたが、4時間以上のボランティア活動に参加すれば、人気の音楽フェスに参加できるチケットが入手できる「ロックコープス」というという仕組みもある。
チームで楽しく競技に参加するだけで高齢化の除雪問題を解決する「スポーツ雪かき」もあれば、ライブをするまちがきれいになるお掃除ユニットのアイドル「CLEAR'S」も最近ではテレビに出るようになってきた。
このように、誰もが素直に面白がれる仕組みによって、社会的課題を解決する仕組みを「ソーシャルデザイン」という。
ワクワクしないプロジェクトなんて、有益でも、社会に広がらないし、根付かない。
しかし、人間の欲望と社会貢献を楽しくひもづけることでよのなかを良くする(=社会的弱者が生きやすくなる)仕組みは、まだまだ増やしていけるだろう。
人間には、性欲・食欲・睡眠欲という3大欲求が常にあるし、遊びたい欲求もあれば、名誉欲もあるし、金銭欲やダイエット欲もあるからだ。
そうした自然な欲求と、発電・チャリティ・ボランティアなどのひもづけて発想をするにも、自分がどんな人たちが困っている問題を解決したいのかが問われるのだ。
アイデアやデザインセンスがあれば、何かが動くということではない。
それについては、べつの機会に書こう。
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