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■高校生は社会を変えるのは政治だけではないと知ろう

 2016年夏の参議院選挙で、選挙権が18歳以上となる。
 NHKは、改正公職選挙法が施行される6月19日の時点で18歳・19歳になっている男女3000人を対象に郵送で世論調査を行い、調査対象の60%から回答を得た。

 この世論調査で、今の日本の政治の在り方にどの程度満足しているか尋ねたところ、「満足している」と答えた人は24%、「満足していない」は74%だった。


 戦争を放棄し、戦力を持たないことを決めている憲法9条については、「改正する必要がある」が16%、「改正する必要はない」が57%、「どちらともいえない」が26%。
 つまり、未成年の有権者の4人に3人ぐらいが「9条を変えてほしくない」と望んでいるわけだ。

 そこで、高校生の一部も、SEALDsのようにデモで政治アピールをしようと動き出している。
 主に高校生などの10代を中心として活動しているT-nsSOWLは、戦争法案に反対するために立ち上がったグループだ。

 今のところ、彼らは「SEALDsの劣化コピー」以上のものではない。
 こう書くと瞬間湯沸器のように頭を沸騰せ、「disってる」だの、「高校生の政治的関心を認めない」などと勘違いする輩が出てくるので、丁寧に説明しておこう。
 僕は政治的に保守派(右)でも革新派(左)でもなく、ノンポリに近い。
 だからといって、「高校生が政治的関心をもつべきではない」などとは考えない。
 誰が何に関心を持とうと、そんなの自由に決まってる。

 では、僕はなぜT-nsSOWLになんともいえない違和感を覚えているのか?
 安保法制も含め、さまざまな社会的課題を解決できるのは、政治だけじゃないからだ。

 むしろ、政治によってしか社会を変えられないと思い込んでしまえば、「政治ヲタ」にはなっても、現実の政治を変えるだけの資金調達にまで考えが及ばないし、それゆえに経済基盤の強い既存の保守政党に対抗する勢力には育ちにくいからだ。

 政治による社会的課題の解決では、予算のぶんどり合戦を避けられない。
 だから、「民間でどこまで社会的課題を解決できるか」を知らないまま無尽蔵に税金を使う政策を増やされても、増税と借金で歳入不足を埋め合わせる現体制を維持するだけになり、それは財政を圧迫し、戦争の引き金にすらなりかねない。

 つまり、「民間でどこまで社会的課題を解決できるか」を学ぼうとしないこと自体が、平和を望んでいるはずなのに、1200兆円という借金大国の日本を結果的に戦争へ近づけてしまう恐れがある。

 民間でできることは、民間でやる。
 これを徹底すれば、税金という公金を使う必要はなくなり、同時に政治家が予算をつける権限や正当性も薄まっていくので、政治権力も弱まっていき、政治家は国民の声を無視できなくなる。

 しかし、民間で何がどこまでできるのかを学ぼうとしないのなら、「何でも政治的に解決すればいい」という発想にしがみつくばかりになる。
 つまり、民間でできることを学ばない構えは、「政治家におまかせ」の民度を温存し、いつまでも「自分たちの社会は自分たちで作る」という主権者として責任を負う国民に育たないのだ。

 国民が自分たち民間でできることを考えず、真っ先に「政治家にお任せ」(あるいは政党にお願い)という構えで困らなかったのは、高度経済成長時代までの話だ。
 十分に成熟化し、経済の低成長時代を迎えた今日では、国に金がない以上、民間でできることは民間でやるという転換をしなければ、消費税率のアップはもちろん、新しい課税もどんどん増えていくだろう。

 それは、これからの日本を生きる10代にとって歓迎できる社会?
 生きにくいに決まってるじゃないか。


●10代の有権者は、「安全保障」以上に「雇用」に関心がある

 T-nsSOWLの高校生やそのシンパには、「オールド左翼のおじさん」たちに喜ばれているうちはいつまでも成長できないよ、と言ってやりたい。
 デモをやるのも結構だし、憲法勉強会をやるのも結構だけど、活動経費をカンパで集めるなんて、口には出さなくても「60年安保の時代かよっ!」とトホホに思ってる10代もいるんだよ。

 本当に価値の高い活動なら、カンパや寄付によって資金調達しなくても、商品・サービスとして値付けして売れるはずだからだ。
 フジロックなんて、3~4万円も払う客を10万人以上も集めてるんだぜ。
 無料で参加できるデモで同じ程度にしか動員できない現状は、集団オナニーのようなものだ。
 デモに行くのも主催するのも自由だが、1万回繰り返しても社会は変わらないという冷徹な現実にはきっちり向き合ってほしい。

 他方、いまどきの10代では、起業家として商品やサービスを開発し、その収益によってクソつまんない社会を少しでも面白くしようと動き出している人もいれば、政治がいつまでも解決してくれない深刻な社会的課題を解決できる仕組みを事業化している社会起業家を志す人もいる。

 SEALDsのような「政治ヲタ」がいくら増えても社会がいっこうに変わらないのは、戦争法案の強行採決を見てわかったはずだ。
 自民党による強行採決なんて、あれが初めてじゃない。
 歴史的に自民党の得意技、伝統芸なんだよ。
 今さら「ずるい」なんて思うとしたら、歴史を知らなすぎる。

 ああいうダメな大人の作法には、「べき」論では絶対に勝てない。
 だから、左派政党はいつまでも対抗勢力にならないし、たとえ対抗勢力になれたとしても、民間でどんな社会的課題がどこまで解決できるかを知らなければ、結局は「なんでも税金で解決しましょう」という姿勢を崩せないから、自民党とさほど変わらない政治が続くだけなんだ。

 1990年代の後半、イギリスではブレア首相が、社会福祉や教育などの予算をカットしなくても済むように社会起業家に投資し、財政を立て直した
 それ以来、世界中で若者たちが民間のソーシャルビジネスによって、政治より優れた解決の仕組みを生み出して社会的課題を続々と解決し始めたんだ。
 そして、日本でも10年以上前から、社会起業家が急増している。

 こういうことは、教科書にもマンガにも書かれていない。
 テレビや新聞のニュースでも、まだそんなに報道されていない。
 しかし、ネット世代なら、50年前の左翼学生のようにデモしか無いように思いつめるのではなく、自分と同世代の10代が取り組み始めている社会起業(ソーシャルビジネス)に関心を持ち、民間でできることの可能性と成果について学んでみては?

 デモと同じだけの労力と時間をソーシャルビジネスを学ぶことに割けば、本当に政治によってしか解決できないことは何なのかが見えてくる。
 そして、政治ヲタではない多数派の同世代が何を望んでいるかに真摯に耳を傾けることこそが、民主制の基本であることにも思い当たるはずだ。

 前述のNHKの世論調査では、政治に関するテーマのうち、今興味のあるものを複数回答で尋ねたところ、「雇用・労働環境」が53%でもっとも多く、「年金や医療などの社会保障政策」が49%、「景気対策」が48%だった。
 戦争反対を訴えるのも自由だけど、「外交・安全保障」に対する関心は36%にすぎなかった。


 戦争より、平和でいたいのは、国民全員の意志だ。
 政治家だって、べつに好んで戦争をしたいわけじゃない。
 戦争は、国家財政の行き詰まりを打破する方法が他にない時に選ばれてしまう選択肢。
 それを知っているなら、なぜ「べき」論を繰り返して満足できるのか?
 なぜ、財政が行き詰まらないように、民間でできることを学ばないのか?

 本気で平和を維持したいなら、デモに入れる力と情熱を、ソーシャルビジネスにも注いでみてはどうだろう?
 同世代の有権者だって、一番の関心事は「雇用・労働環境」だ。
 やりがいがあってワクワクする働き方のできる会社を作り出し、仕事を通じて社会的課題を解決していける時代を、若い力で作り上げる方が面白いと思わないか?
 それにピンときた10代は、もう起業を始めてるんだよ。
 きみが知らないだけでね。

 「オールド左翼のおじさん」たちは、政治が何かもわからず、理想論ばかりふりかざして惨敗し、結局、政治を変えることができなかった。
 おかげで、自民党政権が戦後、今日まで長らく続いてしまった。
 長期政権は、必ず腐敗する。
 そんなこと、みんなわかってるのに、反対論しか叫ばず、金の話を避けたがる。
 そして、自民党の一人勝ちの構図が残り続ける。

 こんなバカバカしい社会を本気で変えたいなら、社会的課題を解決する仕事を作り出し、その価値に見合う収益を生み出し、既得権益に居直る政治家から権力を奪うことだよ。
 でなけりゃ、デモはこれまでと同じように「ただのお祭り」で終わる。
 それが嫌なら、税金を使わずに社会的課題を解決できる民間事業を作り出すことを恐れないことだ。
 SEALDsより若い世代がその現実の重さから逃げずに立ち向かうなら、日本は劇的に変わる。
 血を流さない革命は、そのようにしか成立しないはずだよ。

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