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■三条市の議員は市民を「正常な形でない人」と呼ぶ

 このブログで書こうかどうか、迷ったけど、書くことにする。
 LGBT差別って、社会的少数者の当事者だけで権利主張しても、当事者以外の人が「自分には関係ない」で思考停止していたら、なかなかマイノリティの権利は公に認められないままだと思うから。
 この件は、どこの地方でも多かれ少なかれ起こっている。
 しかも、地方であればこそ、マイノリティは声を上げにくいだろう。
 やっぱり「おかしい」と思ったら、そう思った自分が「おかしい」と疑問を表明した方がいいはずだ。

 この件とは、新潟県三条市の地元紙「三條新聞」に2016年3月11日に掲載された下記の記事についてだ。
 Facebookで回ってきた画像だが、目を疑った。


 記事は、ざっと次のように書かれている(※わかりやすくするため一部を削除)。

 三条市3月定例会は市民福祉常任委員会(岡田竜一委員長・9人)を開き、平成28年度一般会計予算や同27年度一般会計補正予算などの審査を行った。
 今月末にオープンし、新年度から本格運営が始まる街なか交流広場の関係で運営事業費8614000円を計上、そのうち燕三条エフエム放送番組制作委託料として2862000円を計上していることに関連して、同広場からの生放送番組のパーソナリティーについて「オカマと聞いている。社会常識からして、正常な形でない人を支援する必要はないのでないか。人の趣味、趣向など何をやってもいいのだろうが、行政が支援することはないのでないか」との反発も出た。
 11日も審査を続ける。

 要するに、三条市の予算を審査する人たちが、地元のコミュニティFM局「燕三条エフエム」に出演するパーソナリティに「オカマ」がいると耳にしたことで、「正常な形でない人を支援する必要はないのではないか」と発言したのだ。
 端的に言えば、「『オカマ』を雇う金はうちの市にはない」と発言した委員がいたということ。

 三條新聞地元紙である以上、全国紙とは違ってわざわざ扇情的なフレーズでより多くの読者を獲得したがるようなあざとさは取材記者に要求されないはずだ。
 また、市の予算に関する審査の場合、よほど紛糾するような問題のある用途について議論がない限り、粛々と会議が進んでいくため、「オカマ」発言が記事になったのは、その点だけがほかの多くの議題よりも目立った論点だったことが窺い知れる。

 問題は、この「オカマ」や「正常な形ではない人」などの表現が、税金で雇われた市民福祉常任委員会(議員)のメンバーの発言として出てきたことだ。
 誰がどんな考えを持とうと、自由だろう。
 それがどんなに幼く、愚かなものであろうとも。
 しかし、公共を担う行政の仕事の一環として行われる審査会での発言として、「オカマ」や「正常な形ではない人」などの表現は適切だろうか?



●国定市長は、地元の三條新聞を読んでないのか?

 市民福祉常任委員会のメンバーには、それらの発言について「LGBT(性的少数者の総称)に対する差別ではない」と考えている人がいるのは確かなようだ。

 予算の審査結果については、「11日も審査を続ける」そうなので、地元の三条市の市民が確認しなければ、わからない。
 もっとも、その結果がどうなろうと、予算を審査する市民福祉常任委員会に差別発言をするメンバーを入れた人事上の責任は、三条市の市長・国定勇人さん(写真)にあるはずだ。

 国定市長は、twitterもやっているので、三条市の市民で前述の発言について「おかしい」と思われた方は、@kunisadaisatoまで問い合わせてみたらいい。
 市長のツィートは、3月11日時点で三條新聞の記事について触れていない。
 記事を読んでも、何ら問題意識を持たなかったのだろうか?
 それとも、まだ読んでいないのか?
 それは、わからない。

 僕が気になったのは、この差別発言が市民福祉常任委員会のメンバー間で問題にならなかったのかどうか、だ。


 いずれも市議会の議員がメンバーを務めているが、女性は1人しかいない。
(※岡田竜一さんが委員長。武藤元美さんが副委員長。いずれもFacebookに登録されている)

 地方議会の小さな予算委員会なら「オカマ」程度の発言が許されると思ったのかどうかは知らないが、「正常な形ではない人」という発言が事実なら、LGBT当事者でなくても怒りたくなるんじゃないだろうか?
 たかが議員に、「正常な形ではない人」などと言われる筋合いはない。
 三条市の有権者の市民たちは、自分や友人のことを「正常な形ではない人」と言う政治家や、それを何事もなかったように許容する委員会や市長に怒りを覚えないのだろうか?
 僕はモヤモヤとした気持ちを持て余してる。

 この差別発言をしたのは、前述のメンバーに名を連ねている西川重則・議員(66歳・自民クラブ=写真)であることが既に報じられている
 西川議員は、常任委が再開した11日に委員長に発言撤回を申し入れ、認められたという。
 発言は議事録から削除されるが、取材に対して「個人的に男は男らしくという考えだが、性的少数者の方への侮蔑的な表現だった」と話したという。



 もっとも、議会と地元メディアで陳謝したところで、この案件、収まるだろうか?
 全国放送のテレビのニュースや全国紙にとっては、好都合なネタだからだ。
 国定市長は、ネットの怖さをご存知でないのかもしれない。
 こうした差別をめぐる案件は、すでに処分を命じる前例が積み重ねられているのだ。

 昨年(2015年)1129日、神奈川県海老名市の鶴指(つるさし)眞澄・市議が自身の公式Twitter同性愛について「異常人間の行動」と書いた。
 彼は、「生物の根底を変える異常動物」とすら書いていた。
 その後、ネットから火がついたこの案件はテレビや新聞などに広く報じられ、123日に海老名市議会は鶴指議員に対する辞職勧告決議案を賛成多数で可決
 辞職勧告決議案に法的拘束力はないため、鶴指議員は議員を続ける意向を示してはいたが、彼の公式サイトには謝罪文がアップされ、「現在は辞任し、自宅にひきこもっている」と指摘したブログ記事もあった。

 鶴指議員は、「深酔いし過ぎた中で勢いでふざけて書き込んでしまった」と言い訳していたが、三条市の市民福祉常任委員会では酒が飲めるわけがないのだから、言い訳は通じない。
 ちなみに、鶴指議員に同調し、「同性愛は異常でしょ」とツィートした岐阜県の技術検査課の30代の男性主任は、同県の人事課が「県の信用を失墜させる行為で遺憾」として処分も検討中とか。
 一連の差別発言について、国定市長が西川議員に何の厳しい処分もせず、放置するなら、国定市長に全国から批判の矢が向けられること必至だろう。

 時代遅れの三条市の知らないところで、日本社会はどんどん変わってゆく。
 三重県伊賀市は310日、申請のあった同性カップルにパートナーとして認める公的書類を4月1日から交付すると告示した。
 市によると、同様の制度は東京の渋谷区、世田谷に続いて全国3例目。
 兵庫県宝塚市や那覇市も、年内実施を目指しているという(産経新聞より)。

 日本IBM2012年から、同性パートナーがいると申告した社員に結婚祝い金を支給している。
 今年(2016年)1月からは、転勤に伴い、登録した同性パートナーの旅費支給や、同性パートナーへの介護などで必要な休暇取得も認めている。
 パナソニックも社内ルールを変更し、今年4月から同性カップルを結婚に相当する関係と認めて慶弔休暇や福利厚生の対象とする。
 会社の行動指針を見直し、「LGBT」(性的少数者)を差別しない姿勢を明確化するという。
 サッカーJ3のFC琉球も、新チーム発足に伴いユニホームも一新され、左袖にはLGBTへの理解を表すレインボーカラーが取り入れられた。
 ドイツやスペインのクラブでは導入例があるが、Jリーグでは初の試みだ。

 社会は、常に変わってゆくものだ。
 時代の風向きに鈍感なままだと、「無自覚な差別主義者」と呼ばれてしまうだろう。
 それは誰も幸せにしない。
 僕も含め、誰もが時代の風向きを考えておく必要があるはずなんだ。

 なお、差別発言に関する三条市長のリアクションは、この記事(→クリック)。

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