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■AV被害調査報告書から始めてほしい「プロとの対話」

 54日(水)、東京・高円寺のトークライブハウスPUNDIT(パンディット)で、AV業界で働く人々はHRN(ヒューマンライツナウ)AV被害調査報告書をどう読んだか?〜公開検証ミーティング』というイベントが緊急開催された。

 国際人権団体HRN(ヒューマンライツ・ナウ)が今年3月に発表したポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、女性・少女に対する人権侵害 調査報告書」の内容が、被害者支援団体からの一方的な調査によるもので、しかも、AV(アダルトビデオ)への出演を強要された事例などを引き合いに監督官庁の設置を求める性急なものだった。
 そこで、AV業界で長らく働く当事者たちが、その報告書の内容を公開で検証しようというのが、上記のイベントの趣旨だった。

 これを書いている僕は、母親は認知症の初期のため、父親がいない時には外出できない事情が有り、このイベントには足を運べなかった。
 しかし、前のブログ記事で、HRN関係者や新聞記者にぜひ足を運んでほしいと訴えていた。
 そこで、twtterで相互フォローしているHRNの伊藤和子弁護士にこのイベントの開催を知らせると、以下のようなレスをいただいた。


 これを読んで、伊藤さんは大きな勘違いをしているのではないかと思った。
 そもそも、HRNは2015年5月からAV業界の調査を始めたばかりであり、AV業界に数十年も携わってきたプロたちとは、業界事情について知識と経験に大きな開きがある。
 たった1年しかAV業界に足を踏み込んでいない立場の人が、先達の話を軽視しているとしたら、あまりにも失礼な構えだろう。

 また、イベントの出演者がAV業界で長らく働いてきた人たちだからといって、「業界が健全だとアピールされる機会」だと考える根拠はどこにあるんだろう?
 AV業界でなくても、自分の業界を「健全だ」と思って働いている人なんて、いるだろうか?
 介護業界でも、映画業界でも、マスコミ業界でも、教育業界でも、どこの業界でも「健全だ」なんて思う人がいるとしたら、ものすごく鈍感な人か、不健全ぶりを見たくない人にすぎないだろう。

 今回のイベントは、あくまでもタイトル通りHRNの調査報告書をどう読んだかが焦点のはずだ。
 なぜそんなイベントをしたのかといえば、たった1年しか調査していない報告書がプロから見れば実態を見誤っているがゆえに、「出演強要被害という深刻な人権被害をなくす」ことを難しくさせるからではないか。

 現場で働くプロの方が、被害を無くして少しでも健全化しなければ、メシが食えなくなる恐れを切実に抱いているのだから、被害について弁護士や人権活動団体よりもはるかに深刻に受け止め、生存戦略として人権問題に取り組んでいる。

 その意識を読み取れないとしたら、伊藤さんは自分のよく知らない業界のプロを最初から軽視している(=職業差別をしている)と疑われても仕方ない。
 前のブログ記事でも書いたが、AV業界にある深刻な問題を解決したい気持ちは、人権派NGOAV業界で働く人たちも、分かち合えるはずだ。

 人権活動家は、なぜ公開イベントのようなオープンの場所でプロと対話しないのか?
 AV業界の側がクソ忙しいGW中に緊急にイベントを開催したなら、その意気に感じて、同じ志を持つ者として、HRN側も会場に集結するよう、仲間に呼びかけてもよかったはずだ。
 プロから学べば、それだけ精度の高い解決の仕組みが作りやすくなるのだから。



●法制化の前にプロと対話し、精度の高い解決の仕組みを!

 AV業界の人だからといって、「うちの業界には不健全な問題は一つもありません」と言う人などいないし、「人権被害はあくまでもゼロです」なんていう人もいない。
 実際、「自分や自分の周囲には人権被害を見聞した人はいない」という人は、どの業界にも多い。
 それだけ強制労働のような人権被害は、どこの業界でも目立たないところで存在する。
 だからこそ、調査をするなら、現場のプロと組まなければ、いつまでも見えないままなのだ。
 それでソンをするのは、被害者ばかりではないか。

 なお、この問題における僕自身の意見は、「まず人権派団体とAV業界関係者との対話によって解決の仕組みを生み出し、機能させること」だ。
 それがどうしてもできないほど絶望的な「交渉の余地なし」の場合にのみ、法制度による解決を検討しても遅くない。
 少なくとも、対話の余地をすっ飛ばして、何でもかんでも真っ先に法律で市民を縛ればいいという発想では、いつまでも対話を前提とする民主主義の文化がこの国に根付くことはないだろう。
 法律が増えれば、公権力が大きくなるばかり。

 民主国家の市民が対話より法制度を先に求めるとしたら、それは自ら「支配されたい」と望んでいる証だろう。
 それじゃ、「国民主権」の名が泣くよ。

 なお、このイベントは後日、Youtubeにアップされる予定という。
 アップされたら、続報をこのブログでやtwitterの僕のアカウントなどで報告したい。
 最後に、このイベントに参加した方々がtwitterで紹介した感想を引用しておこう。


 知らない業界をいきなり法律で取り締まる恐ろしさ


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