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■ラップを聞いて泣いたことある? 不幸という名の資産

 311で被災して東北の復興住宅に今も住んでいる、昭和3年(1928年)生まれの88歳の藤沢匠子(ふじさわ・たつこ)さんが歌う『俺の人生』が、Youtubeでついに10万PVを突破した。

 この歌の動画と歌詞全文を掲載した記事東北で被災した88歳のおばあちゃんのラップで泣け!は、Facebookでシェアする人が約2000人に上っている。

 この音源は、5月11日にCDとして発売。
 公式サイトによると、この販売収益における余剰金はすべて東日本大震災や熊本地震などの復興支援活動に使われる。
 LINEなど複数のオンラインショップでも買えるので、各販売チャンネルで「俺の人生」を検索してみてほしい。

 僕は常々、切実なものを抱える人ほど伝えたい思いが高まり、表現が動機づけられると考えている。
 芸能界では、「CDが売れない」という不景気な話が当たり前になっている。
 しかし、今日では「アーチスト」の名称に値する人ほど派手に売れないシーンにいると思うし、プロになっても派手に売れたりはしない。
 それでも、切実なものを抱える人の作る歌には、胸に迫る何かがある。
 とくにラップは、追いつめられた人にとってのギリギリの生存戦略が歌われやすい。

 昨年(2015年)からひたひたと人気を高めているのが、21歳の自閉症のラッパー、GOMESSさんだ。
 「ヒップホップで初めて泣いた」というリスナーも出てきた。

 GOMESSさんは、言う。
「ラップをしているときの自分は認められる。
 自分の音楽を­通して、悩んでいる人や前を向けない人に、いい未来を見せられたらと。
 力を与えるには­、みんなが元気に笑顔になることを何でもやっていきたいです」
NHKの番組より)

 彼の作った名作『障害』という歌を聞いてみてほしい。
(以下、音源から歌詞を書き起こしてみた)


僕はあなたにとっての障害で、世界にとっての障害者



さあ今この目に見ている世界は
あとどれくらいの時を保てるだろうか
たった一瞬のまばたきの刹那
あなたもどこかへと消えてしまうのでしょうか

僕は普通じゃないことを知っています
だから誰をうらむこともできません
お祈りをします どうか幸せに
そしてもしも叶うなら

僕の心は色を持っていません
笑いも涙も信じることができません
優しさを素直に受け入れられません
この心をもう隠しきれません

彼らのいう精神病ではありません
治療の方法はなく心は変わりません
僕には本当のことがわかりません
あなたの涙が忘れられません

あふれ出る感情に耳をすませば
強く激しくうつ ことにうなされて
悪夢を断ち切ろうと試みるなら
今すぐこの胸に剣を突き刺して殺してください

僕はもう自分自身が何者か理解できません
まるで白昼夢のような人生です
生きていることさえ忘れてしまいそうです
あなたの笑顔だけが僕を今もこの世界につなぎとめる唯一です

深い悲しみを紙に書いて暗くて恐ろしい闇に飛び込むことでさえ
あなたのためにならしてみせます
僕は毎日を歌にしてみせます
存在理由をあなたに押しつけて生きていくことを
どうか今だけ許してください

僕は世界を憎んでいました
幸せになりきれない
この心はきっと彼らの幸せのためであって
僕は不幸でい続けなければならないと

あの日あなたに抱きしめられて
ようやく悪夢から覚めた気がしました
ふるえる体をごまかしながら「大丈夫だ」と笑う
その顔を僕は忘れません

僕は障害の意味を知りました
病院も家族もみな嘘つきでした
それは結構病でもなければ 僕の存在 心そのものでした

僕はあなたにとっての障害で
僕は世界にとっての障害者でした
僕はあなたにとっての障害で
僕は世界にとっての障害者でした

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