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■あなたに「~させる権利」を売り出すリアル王様ゲーム

 財布に1円もない。
 そういう人は、今の日本では珍しくない。

 ホームレスでも平均月収1万円という話もあるが、働いてないニートやひきこもり、あるいは生活保護の受給額面がでは足りなくなってしまった人、衝動的に家出した人なども含め、貧困層を自覚せざるを得ない人たちが、世界有数の経済大国ニッポンにも少なからずいる今日なのだ。

 では、いざ無一文になってしまったら、どうやって合法的に金を稼ぐのか?
 もちろん、いろいろな方法があるが、今回の記事ではちょっと面白い試みをした日本人を紹介したい。

 今年(2016年)3月31日、withnewsに極貧の女性アーティストを紹介する記事がアップされた。
 アーティストの小俣知子さんは、3月までバルセロナに滞在中、お金がなくなって空腹でピンチになり、「小俣さんに~させる権利」をネット上で売り出したのだ。

 小俣さんが売り出した権利は、以下の通り。
★肉を食べさせる権利 →2000
★カフェに行かせる権利 →1000円
★ウサギの肉を食べさせる権利 →3000
★バルセロナの海辺から絶叫させる権利 →1000円

 売買サイトで上記を『権利チケット』として紹介すると、友人や知人が面白がって買い付け、7万円程度になったとか。
 たとえば、2000円の権利チケットをあなたが買ったら、小俣さんに肉を食べさせることができるのだ。
 1000円を払ったなら、小俣さんにバルセロナの海辺から絶叫させることができるってわけ。
 言ってみれば、「リアル王様ゲーム」だ。

 お金を払って誰かに何かをさせる。
 その「させること」を面白いと思える人がいれば、この商売は成立する。
 逆に言えば、「させること」が面白くなければ、1円の金も動かない。

 このビジネスの勝因について、記事では以下のような証言が紹介されていた。
「権利チケット」が売れるたびに、権利者(=購入者)に向けてブログSNSで実行を報告
 →これなら詐欺になりにくい。身元を明かすのは当然のことだが。
☆「やりたいことを素直に言うから嫌みがない。自分の生活を差し出しているので信頼できる」(購入者の証言)
 →どんな暮らしをしてるどんな人物かを具体的に公表しておけば、払うだけの価値も伝わる
☆「自分が食べたいのだ、相手に何もメリットはないのだ、と素直に言いました。正直なのが良かったのだと思います」(小俣さん)
 →売る側の「したいこと」が他の人に「させたい」と思わせるだけの正直さの現れである点が重要


私に飯を食わせたい人が快くお金を出したくなるには?


 小俣さん(※右の写真。withnewsより)が食いつないだ「リル王様ゲーム」的な売買は、ネット乞食とは似て非なるものだ。
 「金をくれ」とか、「中古パソコンくれ」などと、善良な市民のおこぼれや同情に期待するものではないからだ。

 彼女は、彼女に何かをさせたい人に、それをさせる「権利」の対価としてお金を受け取った。
 権利の対価としてお金を受け取ることは、通常のビジネスと同じである。
 あなたも、イタ飯を食べたいと思った時、イタリア料理店で「料理を作らせる権利」を買うはずだ。

 しかし、通常のビジネスと少しだけ趣を異にするのは、買う側のニーズ(需要)を満たすサービスを最初に考えるのではなく、むしろ売る側のニーズを満たすサービスを考えた点だ。

 ふつうなら「金が無い→飯が食いたい→誰か私に恵んで!」と望んで思考停止しがちなところを、「金が無い→飯が食いたい→私に飯を食わせたい人が気持ち良くお金を出したくなるには?」と考え、肉を食べさせる権利に2000円という値段をつけたところにある。

 2000円あれば、飲食店でも食事ができるし、肉屋で肉を買うこともできる額面だ。
 肉を含む食費が1000円程度なら、「させる権利」は1000円程度と見積もられたことになる。
 これは、権利を買う側にとって「おごってやった」と言うには少額だ。
 自分の払ったお金が、ちゃんと売る側のブログやSNSで報告されるのだから、一方的な施しではなく、彼女と一緒に肉を食べているような喜びを分かち合える気分にもなるだろう。

 つまり、「私に飯を食わせたい人が気持ち良くお金を出したくなるには?」という問いに、事後報告による信頼と、させる内容の面白さを担保したことが、「リル王様ゲーム」的な売買を成立させたのだ。
 これは、ネットさえ常時利用できれば、子どもでも大人でも誰にでもできることではないか?

 実際にやるなら、ネットショップ「base」を利用してもいいだろうし、自分のブログに「~させる権利」と値段、自分のメールアドレスやプロフなどを明示した記事を書いてtwitterなどで拡散するだけでいい。
 重要なのは、以下の3点だ。
★自分自身のプロフィールをなるだけ具体的に書くこと(※顔写真があると信頼感が増す)
★買いたい人からメールをもらったら自分の振込口座を教え、「~させる権利」を売った後で実際に実行した証拠となる画像や動画でブログに報告すること
★自分自身が切実にしたいことを、正直に「~させる権利」に盛り込むこと

 値付けは、買う側にしてみれば、権利1つあたり1000~3000円が手頃なのだろう。
 パチンコ屋やゲーセン、居酒屋でも、この程度の遊興費は1回にかかるものだからだ。
 短期間により多く稼ぎたいなら、「バルセロナの海辺から絶叫させる権利」のようなバカバカしくも絵になって面白そうな権利(=買う側と楽しみを分かち合えるようなこと)をいくつも考えておこう。

 僕は大学時代、資料本を読んで小論を書くのが面倒だったり、苦手だったりする学生の声を聞いては、「本代は別で5000円できみの代わりに書く」という小商いをやっていた。
 もちろん、「優」レベルを保証して。
 こうすると、僕自身が本代を出さずに学ぶことができたし、1日の肉体労働のバイト分を2時間ほどで稼げた。
 売る側ができることを増やしたり、挑戦的な仕事をするなら、単価を釣り上げても払いたくなる人はいるものなのだ。

 金はないが、自由になる時間だけはいくらでもあるという人なら、以下のサンプルを面白がりながら、自分の売りたい権利を考えてみてはどうだろう(※すべて経費込み)。

★私に平日昼前の公園で大空に向かって「バカヤロー!」と叫ばせる権利(1000円)
★私を農場へ行かせ、規格外野菜を無料で入手させ、料理・完食させる権利(2000円)
★私に私自身の性体験を赤裸々に1時間だけSkypeで言わせる権利(3000円)
★私をあなたの観たい映画につき合わせ、感想を30分以上言わせる権利(4000円)
★私に市議会を3回傍聴させ、毎度レポート記事を公表させる権利(5000円)
私をラーメン激戦区エリアの有名店3軒に行かせ、味の違いをレポートさせる権利(6000円)

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