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■学校や政権与党を疑わない「良い子」は権利を捨てる

朝日新聞の記事より

 18歳選挙権が施行され、若い世代へ投票を呼びかける声が高まっている。
 しかし、「自分の暮らしてるこの社会をどう変えたいのか?」について、具体的な意見を誰もがはっきり持っているとは言いがたいし、若い世代ならその傾向は一層強まる。

 自分が望む社会を明確に把握していたとしても、「その社会は本当に政治によって実現できるのか?」、あるいは「政治によってしか実現できない社会なのか?」という問いかけなしに政治にだけ期待してしまうなら、「俺たちにこれまで通り増税と借金をもっと負担させろ」と望んでいるのと同じだ。

 実際、歳出をカットできず、歳入不足を増税と借金で埋め合わせるしか能がない政治家ばかり議会に送り出してきたし、そうじゃない仕組みで財政を建て直せるだけの有力な立候補者を見つける方が大変だからだ。
 結局、数年に一度の国政選挙よりも、毎日の自分の仕事を通じて民間からこの社会をもっと生きやすい場所へ変えようとする”主権者意識”に目覚めないかぎり、いつまでも生きづらい社会は続くってことなんだ。

 だから、若い頃にこそ、自分が社会の一員であり、生きづらい社会に対して文句を言うだけでなく、自ら生きやすい場所へ変えられる主権者として、主張する権利を自覚するチャンスが必要だ。
 同時に、若い世代の権利を先行世代の大人たちが守る覚悟を保つ必要がある。
 ところが、社会を変えられる権利を若い世代から奪おうとする勢力が、この日本社会にはある。

 去年(2015年)8月、京都府立朱雀高校の3年生だった女子生徒は妊娠が発覚し、今年(2016年)3月の卒業を希望していた。
 だが、体育の実技ができず単位が不足していた。学習指導要領では「実技が出来ない場合、代わりになる方法で授業を受ければ単位をとることができる」と定めている。
 だが、学校側はその事実を伝えず、休学させていた。
 卒業の条件として体育の実技をするよう求め、さらに保護者や本人の意向に反し、一方的に休学届を送りつけていたのだ。


 憲法の問題に詳しい作花知志弁護士は、弁護士ドットコムニュースに本件について以下のようにコメントしている。
「妊娠中の3年生の女子生徒に対して、休学を勧め、卒業の要件として体育の実技をすることを求めたことは、正当な理由なく、代替措置が可能なのにそれを検討することなく行われたものであり、憲法に違反するものであった、と評価される可能性があると思います」

 一方、J-CASTニュースの取材に対して、同校の副校長はこうコメントしている。
「全日制なので朝から晩までハードな授業がありますし、出産・子育てと学業の両立は難しいと判断して休学を勧めました。
 『特別事情』の基準についても時代の変化に合わせて見直さないといけないのかもしれません。
 昔は(妊娠が発覚した生徒は)自主退学を選ぶ場合が多かったように思います」

 ここで僕が「?」と思ったのは、学校側が「出産・子育てと学業の両立」について判断の主体として振る舞った点だ。
 産むのも、学ぶのも、当該生徒自身が当事者として主体的に判断する権利を持っているはずなのに、なぜ学校はその権利を奪い、一方的に休学させたのか?

 この学校は、義務教育を終えた未成年から判断の主体性を奪うことにためらいがない。
 自分の進路や命を自分で判断することは、基本的な人権だ。
 これを守るのが教育の社会的価値なのに、この学校は教育を「大人が命じる通りに子どもを支配し、従わせることだ」と勘違いしているのでは?
 しかし、悲しいことに、そういう教育をよしとする人は、現代日本では続出しているのだ。



●自分の権利は、主張しないかぎり、「ないもの」になる

 サッカー強豪の聖和学園高(仙台市)に在学中、交際相手と性的な行為をしたことを理由に退学を勧告されたのは違法だとして、元サッカー部員の男子大学生(18)が運営法人と校長に約600万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした
 校長らは、書面でこう通知したのだ。
「性的な行為を一度でも行えば退学処分となる。
 処分に当たり、これまでの生活態度などは考慮しない」
 学生は転校を余儀なくされ、指定校推薦で進学が決まっていた大学から合格を取り消された。

 学校側は、詳細を法廷で明らかにすると言っている。
 しかし、判決がどうであれ、性的な行為が退学処分に相当する「不良行為」として位置づけられるとなると、前述の女子高生の例と同様に、当該生徒から判断の主体性を奪っているのと同じだ。
 これは、同校の校則や教育方針が、社会全体の倫理からかけ離れていることを示している。
 どういうことか?

 いつ誰と性体験を始めるのか?
 いつ妊娠したいのか?
 これらは、国民の誰にとっても自由に選べる権利のはずだ。
 この権利を満足に果たせるよう、社会はインフラを整え、誰もが困らないような仕組みを作る必要がある。

 15歳以上ともなれば、多くの男女が生殖機能を備えている。
 だから昔は、その年頃で結婚も、妊娠も、出産も当たり前だった。
 18歳や20歳では「遅れてる」と言われていたぐらいだった。
 それどころか、国家からの要請で「産めよ、殖やせよ」と奨励されていた時代すらある。

 もちろん、そのように個人の権利を国家に左右される時代は70年前の終戦によって終わり、民主主義がこの国にも生まれた。
 民主主義国家で、「国民主権」が憲法に明記されているなら、国民の誰もが自分自身の人生について判断の主体として自由に振る舞えるのは当然だし、その権利を自由に叫ぶことも当然だ。

 ところが、戦後70年間、教育現場では、知識としての国民主権は教えられたが、マインド的にはまったく教えられていなかったに等しい。
 だから、クラス委員長を決める時も、さほどアツい話題にはならず、「◯◯くんがいいと思います」「賛成!」で決まってしまう。
 高校の生徒会は、「生徒による自治」とはほど遠く、学校と対等な関係で生徒の権利を主張する自由が認められていない。

 自分の所属する学校ですら満足な自治ができず、主権者意識が薄いまま卒業していく。
 だから、会社に入っても、学校で教師として働き始めても、「組織の空気」や専権のある校長や理事長の言い分に対して隷属する(=交渉の余地がない)ことを「仕方ない」と思考停止してしまう。
 これでは、自分の所属する小さな共同体の内規を守っても、その外側に広がる日本社会の倫理を守れない構図を温存する。

 つまり、形ばかりの民主主義しかこの国には無いのだ。
 実際、多くの国民に、「自分もこの社会をもっと生きやすいものに変える権利を持ってるんだ」という主権者意識が育ってない。
 だから、社会を変えるのは政治家におまかせで、社会的課題に困ってたら真っ先に政治家にお願いするという構えを平然ととる。
 前述の女子高生や男子生徒の事件は、彼らの失敗や未熟さを支え合えるだけの仕組みを、主権者意識の薄い大人たちが自分自身の毎日の仕事を通じて満足に用意していなかったという怠慢を浮き彫りにさせた。
 彼らを「教育下にある未熟者」という視点だけで語るなら、それは支配者の居直りだ。

 教育を受ける権利とは、間違う権利、失敗する権利のことだ。
 間違っても、そこから自分の足で立ち直ることをみんなに支えられる権利を学ぶのが、教育の社会的価値なのだ。
 失敗しなくても、失敗した人をどう支え合えるのかを考え、その仕組みを作り出そうと試行錯誤するのが、学校の本来の価値なのだ。
 早いうちに失敗(とそこからの立ち直り)を学ばせなければ、大きな失敗(と立ち直れない絶望)を先送りするだけだからだ。
 間違ったり、失敗した時に、未熟者に100%の責任を負わせて責めるだけなら、教育者も大人も親もいらない。

 高校生のセックス・妊娠なんて、50年以上前から当たり前のようにやってることだ。
 その現実に目をつぶり、大人にとってのみ都合の良い「良い子」しか受け入れない構えを取るなら、卒業・単位という人質を取られている立場の弱い高校生たちは、孤立しながら唇を噛み締めて従わざるをえないだろう。
 そうした力関係を平気で持ち出すのは、教育者ではなく、ただの支配者である。

 高校生のセックスや妊娠が発覚した際、それを「わが校の誇りを傷つける」なんて自己保身の発想をとることは、恥ずかしいことだ。
 そして、セックスや妊娠を「卑俗なもの」として隠そうとするその構えこそ、子どもの伸びしろを信じていない証拠であり、「判断の主体性」という基本的人権を奪うものだ。

 子どもから「稼ぐ技術」を学べるチャンスを一方的に奪っておきながら、「あんたは未熟。勉強しなさい」と自分の不勉強に居直る大人は、端的に醜い。
 そして、あの悪名高き「日本会議」が今、全国各地で子どもの権利の拡大を阻止しようと躍起になっていることを、朝日新聞の記事が伝えていた。

 18歳以上の若い人たちよ。
 きみに自尊心というものがあるなら、自分を生きづらくさせる学校や職場、自分をただの未熟者としてしか扱わない大人には、はっきりと「No!」を突きつけよう!
 今そうしなければ、現在の政権与党=自民党のおじいさんたちが下の動画でハッキリと目指しているように、きみが中高年になる頃には、国民全体が主権を奪われたまま、国家の命じる奴隷として命を軽んじられる時代に逆戻りしてしまうだろうから。


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