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■今年のおっぱい募金は変! ~非営利事業の信頼

 NPO、社会福祉法人、一般社団法人など、非営利事業を行う団体の一部には、公的に認証された法人にも関わらず、残念な活動実態になっている場合がある。
 たとえば、Yahoo!検索で「NPO」「逮捕」の2文字で検索すれば、いくらでも出てくる。


 なぜ、営利目的ではなく、社会的課題の解決をする目的で結成されたはずの事業体に、こういう不祥事が生まれるのかについては、さまざまな要因がある。

 福祉系の事業を手がける法人の場合、国からの補助金が降りてくるために、団体の代表者自身の経営力が問われないため、たとえば福祉作業所で就労支援を受けるために通所している障害者の平均工賃が月額1万円台という超ブラック企業並だ。

 それを、テレビや新聞などのマスメディアは、さほど問題視しない。
 問題視するのは、自分と同じ障害者が不当な工賃に耐え続けている姿を観て、「これはおかしい」と義憤を感じ、自ら起業して障がい者を雇い、健常者並みの月収に近づける努力を続けてきた社会起業家だけ。

 障害者と健常者の間に対等な関係を求めるなら、「就労支援」というきれいな名目の下で不当に安い工賃で働かされている被支援者(障害者)の苦しみに気づき、同じ職場で働きながら障害者より20倍近い月収を得ている健常者(支援者)の自分が、その職場の経営者の経営方針によって障害者と分断されていることに違和感といらだちを感じ続けるはずだ。

 一般的に、障害者・貧困者・低学歴・事件被害者・被災者・病人などの社会的弱者を支援する活動には、支援される側を支援する側が支配する上下関係が生まれやすく、支援する側が支援される側の求める活動にさほど関心を抱かず、「僕が助けたいようにあなたは助けられればいいの」という姿勢を崩さないことが珍しくない。

 その場合、被支援者が支援者に支援内容の変更・改善を求めても、交渉の余地すら認められていなかったり、話を聞いてくれないことすらある。
 刑事事件にまで発展しないものの、支援を求める側が支援者と満足なコミュニケーションができず、それゆえに両者間で問題をこじらせ、第3者にきな臭いイメージを振りまいてしまうことも起きている。
 そうした懸念は、常にネット上で話題になっている。

 風俗嬢のセカンドキャリア支援を標榜するGrowaspeopleについては、元・相談者である女性たちに釈明の電話をかければ済むだけの話だが、なぜそんな簡単なことがいつまでもできずにいるのか?
 ネット市民がそれを疑問視するようになってきた今日、同団体の角間さんは、そろそろ公式見解を発表してほしいものだ。

 でないと、支援活動を行う他の多くの非営利活動法人にまで、「どうせそんなもん」というまなざしが向けられてしまう。
 困ってる人たちから感謝されてる活動実績を持つ団体まで、軽視されてしまいかねないのだ。
 僕は、その点を何よりも懸念する。

 

●Growaspeople、アムネスティ日本、おっぱい募金の課題

 広く社会に情報公開をし、公明正大な活動をするのが、民間の市民活動に対する社会的信用を担保する。
 たとえば、トラブルがあった場合、速やかに声明文を発表してその事実を隠さずに公開することが、非営利活動への社会的信頼を守ることになるのだ。

 そういう意味で、Growaspeople代表の角間さんが元・相談者に求められている「電話による釈明」は、速やかに行えばいいいだけの話にすぎない。
 こんな簡単なことさえ怠れば、日に日に活動実態に対する疑義が世間からへGrowaspeople向けられるようになってしまう。

 同団体の代表の角間さん(右の写真)が電話1本かけないままでは、当事者たちはもちろん、他の非営利活動法人、非営利活動を応援する多くの市民も含め、誰も幸せにしない。

 非営利法人が社会的信頼を築くためには、企業が助成金などで資金を提供する際、「その金で何ができたか」をきっちり検証できる仕組みを持つことも必要だ。

 ところが、大企業からNPOなどの非営利法人に助成金を出す場合、非営利活動の実態を精査しているとは、とても言えない。

 某有名企業のCSR担当者は、僕が取材で本社を訪れた際、堂々とこう言った。
「私たちは助成金を提供した後に、地方の該当NPOに足を運び、日帰りでチェックしてます」

 東京本社から遠い地方を往復するだけで多くの時間を費やしてしまう以上、現地滞在時間はせいぜい1~2時間だし、その時間だけ体裁を整えておけば、いくらでもバツの悪いことは隠せる。

 だからこそ、NPOが企業に助成金を申請する際に、「その活動に対してどんな人がどれほどの満足度を得ているのか」を確かめられる仕組みを構築する必要がある。

 もっとも、そうした「支援される側の視点や満足度」に対する関心は、CSRの担当社員にはうすい。
 それゆえに、非営利活動法人の代表者のプレゼンテーションが上手なら、あっさりと数十万円から数百万円の助成金を提供してしまう。
 だから、どんなに有名企業から助成金を受け取っていることを誇らしげに公式サイトに掲げていても、それによって信頼できるだけの活動実態があると見込むのは、早計なのだ。

 支援される当事者の満足度が曖昧だったり、低かったりする場合、自慢できない。
 自慢できない活動実態でも、活動資金はほしい。
 そう考える非営利活動法人は、情報公開に消極的になるどころか、真っ先に世間体を取り繕うことになる。

 つい最近も、9月30日にろくでなし子さんを招いての公開イベントを企画したアムネスティ日本は、「諸事情により中止」と一方的に発表した。
 そのため、J-castニュースが真意を確かめる記事を書き、ろくでなし子さんがアムネスティの本部(ロンドン)へ問い合わせたところ、アムネスティ日本側がイベント中止を撤回し、予定通り開催すると発表する騒動があった。

 こうした騒動も、アムネスティ日本の活動実態に対する疑義が市民からの向けられるきっかけになるだろう。

 ただでさえ、アムネスティ日本は、世界最大の国際人権団体として2015年の世界大会でセックスワークの非犯罪化を目指し、セックスワーカーの人権を守ることを決議したのに、今年に入っても権利擁護の対象としてセックスワーカーを組み入れていない

 つまり、アムネスティ日本が掲げる理念「すべての人びとの人権が守られる世界を目指し、活動しています」は、とんだ大風呂敷になってしまっているのだ。

 「ろくでなし子氏の主義主張に反対する意見が数多く寄せられたため」という理由でイベントを中止し、ろくでなし子さんが本部に問い合わせた途端に慌てふためいて中止を撤回するなんて、「世間体を守ることしか考えてないじゃないか!」と批判されても、甘んじて受けるしかないだろう。

 「主義主張に反対する人が多い人の人権は守らなくていい」という態度を一度は見せてしまったのだから。

 こうした失敗事例から非営利活動団体の代表者が学ぶべき点は、活動理念をブレさせてしまえば、その活動の正当性も、社会的信頼も、いっぺんに損なわれるってことだ。

 それでも、やっつけ仕事で助成金を提供するCSR部署の社員は、相変わらず精査もせずにNPOに金を投じるのだろう。
 だが、消費者・株主=市民は、遅かれ早かれそういう企業を信用しなくなるかもしれない。
 残念なことに、非営利事業の担い手には、まだ社会的信頼より世間体を大事にしてしまう人たちが少なからずいるからだ。

 2015年末、「おっぱい募金」というイベントが議論になった。
 寄付をすれば、AV女優のおっぱいを1秒ていど触ることができ、寄付金がHIV/AIDS撲滅の啓発(STOP AIDS!)活動へ使われる(=非営利活動団体へ分配される)というスカパー!が長年続けてきたチャリティだ。

 ところが、「性差別だ」などの批判の声が上がり、中止を求めるネット署名なども始まったため、2016年は規模を縮小して続けられることが発表された。

 公式サイトで発表された情報よると、10月10日におっぱいを触らせる男優・女優2名ずつが参加し、場所は「新宿某所」、完全予約制にするという。

 おっぱいを触られるAVの役者が極端に減り、時間も短縮され、しかも手続きが面倒な完全予約制になれば、募金総額が前回を大幅に下回ることが懸念される。
 前回のように、のべ7000人以上が参加し、600万円以上の募金を集めたような成果を生むのは、かなり難しいだろう。

 募金の規模を減らしてしまえば、STOP AIDS!活動を行うNPOなどへ資金提供する総額も減ることにもなる。
 これは、チャリティで集めた金を取り扱う一般社団法人 未来支援委員会が、STOP AIDS!の活動規模を縮小してもいいと宣言したのと同じである。
 理念がブレても、「おっぱい募金」というコンテンツが続けられればいいという判断なのだろうか?
 そうだとしたら、立派な本末転倒だ。


 未来支援委員会は、おっぱい募金を企画し、「エロは地球を救う!」という番組を制作してきたリーレ株式会社が自社の中に設けた非営利活動法人だ。
 僕は、過去のブログ記事で「おっぱい募金」を擁護してきたが、同時に「おっぱい募金」に関する改善策を提示したり、未来支援委員会へ電話取材した記事も発表してきた。

 ところが、既に騒動から10ヶ月が経とうとしているのに、未来支援委員会の公式サイトには、この法人自体の収支報告は発表されていないし、募金を分配されたはずのNPOへの助成額面も公表されていない。
 理事長の名前にはリーレ代表取締役の「芝 強」さんの名前があるが、他の理事の名前は未公表だ。
 非営利活動法人の情報公開としては、そろそろ「未熟」では済まされない時期に、前年度よりはるかに募金総額が下回る懸念が出てきたわけだ。

 実際、今年の募金総額は521,422円と発表された(公式サイトより)。
 昨年の10分の1以下の結果だった
 これで従来どおりの規模のSTOP AIDS啓発活動ができるだろうか?
 「STOP AIDS!」が活動理念なら、なぜ前年度と同程度の募金を集められる仕組みを作れなかったのか?

 社会には、困っている人のためなら、自分自身の知恵、経験、人脈、資金、労力、職業技術など「持っているものは何でも使ってくれ!」と願う人たちがたくさんいるし、そのような多様な市民や企業、自治体などからの共感を集めてこそ、NPOは崇高な活動理念を実現できるようになる。

 しかし、そうした社会資源に無関心だったり、無視してしまえば、活動理念が崇高であればあるほど「大風呂敷を広げてる」と冷ややかな視線を集めることになってしまう。

 活動理念をただの「ポエム」のままにし続けるか?
 それとも、団体内部の密室にこもらずに、外部のリソースを広く調達するために、真摯な情報公開をしていくか?

 これは、どんな非営利活動法人でも直面する課題だ。
 この課題の解決には、支援者と被支援者の間の関係を深め、被支援者から感謝の声が自発的に上がるような活動実績を積み上げていくしかない。

 そして、問題が浮上したら、早めに解決しない限り、活動の正当性や社会的信頼はいつまでも曖昧になり、それによって寄付や募金をより多く集めることも難しくなり、救えるはずの人を救えなくなる。

 誰からも感謝されない非営利活動って、いったい誰のためのもの?

 
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