Breaking News
recent

■田舎が財政破綻すると、困るのは日本人全員(前編)

 2014年、増田寛也・元総務相ら民間有識者でつくる日本創成会議は、出産適齢期に相当する2039歳の女性の数が、2010年から40年にかけて5割以下に減る自治体を「消滅可能性都市」に選んだ。
 すると、青森、岩手、秋田、山形、島根の5県では8割以上の市町村に消滅可能性があると推計された。

 若い女性が減ってしまえば、子どもも増えないため、その土地の市民を増やせる根拠を失い、自治体としては運営できなくなる恐れがあるってわけだ。
 人口が減れば、税収も減る。
 そんな状態が続けば、いつかは財政破綻も危ぶまれる。
 人口流出と、それに伴う財政破綻は、かつてのように再建するのが難しい。

 事実、財政破綻した北海道の夕張市は、今なお再建できていない。
 夕張市では、人口(外国人含む)が20139月末時点で9968人となり、1万人を割った。
 2007年に前身の財政再建団体となった際は1万2千人を超えていたが、市外への人口流出と、死亡が出生を上回る自然減とで人口減少が止まらない(2013102日付の日経新聞より)。

 では、財政破綻すると、そこで暮らす人たちはどうなるのか?
 夕張市の市長が、実情を日経スタイルのインタビューに答えている。
 その記事によると、以下の通り。

★ゴミの収集は有料化:1リットルあたり2円を市民から徴収
★水道料金:東京都目黒区の約2倍に増額
★軽自動車の税金:以前の1.5倍
★市民税・道民税:日本一高い額面
★公共施設の利用料:全国で一番高い自治体の料金に設定
★市職員の数:260人→約100人に削減
★議員数:18人→9人
★議員報酬:40%カット

 これだけでも、かなりの経済的負担を市民が負うことになるので、消費は冷え込み、人口流出で市場規模が小さくなっている以上、初めて起業するリスクも高まる。

 もちろん、大型投資を引っ張ってこれるだけの何かがあるなら話は別だが、今さら原発や基地を誘致することも極めて困難だろうし、「じゃあ、ギャンブル場?」という浮足だった話も経済効果がギャンブル並みなので、建設期間中に人口がさらに減る恐れすらある。

 そこで、「第2の夕張になるのでは?」と懸念されているのが、千葉県富津市だ。
 千葉県富津市は2013~2019年度の中期収支見込みを公表した。
 2015年度(平成27年度)決算で実質収支が赤字となり、2018年度には「破綻状態」と判断される財政再生団体に転落する見通しだ(2014年9月21日付の毎日新聞。※後編に最新資料)。



 ただでさえ借金と増税でしか歳出を埋め合わせられない無能な政治家と官僚が担っている日本政府は、こうした赤字転落の自治体が増えては困ってしまう。

 そこで、2016年3月に地方創生加速化交付金の交付対象事業の決定について発表し、補正予算として総額1000億円を新規に自治体にばらまくことにした。
 全国の日本人が支払った税金で、財政困難な地方の立て直しを速やかに行おうってわけ。

 伊豆大島にゴジラ像を建設して、観光客を呼び込もうとした東京都大島町も、この地方創生加速化交付金として得た8000万円に町の予算をくっつけて総額1億7000万円もゴジラ像の建設に使うと発表し、住民およそ2000人から反対の声が上がっている。

 ゴジラ像の建設でどれだけの経済効果が見込めるのか?
 その根拠はどこまで確かなのか?
 住民は不安を募らせているが、町議会は「前例がないから」住民への説明会をしないという。
 (島にゴジラ像を建てることだって、前例がないはずなのだが)

 地元住民にすら納得できる説明をしない閉鎖的な役所の体質のままでは、これまでと同様にバラマキが費用対効果良く使われないだろうことが懸念される。

 国から田舎に投げ出される国の金の多くは、その田舎に住んでいない日本人が支払った税金なのだが、こうしたムダ遣いに鈍感なままだと、財政破綻する町が増えれば増えるほど増税要因になっていき、自分たちの財布からどんどん金が吸い上げられてしまうことにも気づかないだろう。


●スタディーツアーで最初に会わせられたのは金融機関

 では、「第2の夕張」と懸念されている千葉県富津市はどうなのか?
 富津市も、地方創生加速化交付金を申請していた。

 富津市観光・しごと・移住推進プロジェクト-East Coast of Tokyo Bay-」という名目で、7730万円を調達し、地元のNPO法人オール富津情報交流センター(アフィック)に事業推進主体として委託した。

 このNPOアフィックは、2016年12月16日(金)-17日(土)に1泊2日の「起業支援マッチング・スタディーツアー」を実施した。
 「地方での起業や移住・二地域居住に興味ある人」を対象に現地視察をしてもらい、富津市長や関係機関と富津市の魅力や課題などを自由に意見交換できるという。
 富津市外から起業家や起業志願者などを公募し、15名が参加した。

 僕はそのツアーに参加する友人から誘われ、急遽、参加することにした。
 集合場所は内房線・青堀駅で、僕の住む五井駅からは乗換なしで1時間ほどだったからだ。



 ところが、このツアー、ツッコミどころ満載のトンデモ・ツアーだった。
 もちろん、この記事は僕の個人的意見にすぎない。
 ツアーに参加した他の方々がどう思ったのかは、あるいは大して何も思わなかったのかについては、ネット検索などで確認してほしい。

 そもそも僕がツアーの開催を知ったのは、当日の2日前。
 参加者を集める業務を委託された人は、僕の友人に数を揃えるために慌てて電話してきたので、友人とお茶していた僕が急遽、誘われた次第だ。

 これだけでも、富津市やNPOアフィックに広報スキルが乏しいことがバレバレだ。
 富津市が全国に広くアピールできるだけの地元の良さがあるなら、広報スキルを学んだ方がいい。
 広報スがあれば、あらかじめツアー参加者を多く集められるので、申込者の履歴・属性・経験・職業スキル・実績などで参加者を絞り込んで、市と一緒に何ができるかを考えられるようになるし、ツアーの積み重ねによって市内のどこを見せればより高い関心をもってくれるかまで見えてくるかもしれない。

 もっとも、民間では当たり前の節約や広報スキルという文化が無かったから、破綻が危ぶまれるような財政状況に陥ってしまったのだろう。
 それに、今年(2016年)10月の選挙で、70代の時代遅れの市長に代わって40代の市長に若返ったので、あえて過去は問わないでおこうと思った。

 しかし、このツアーが新しい市長の下で執行されたものであることは変わらない。
 ツアーの内容に対する責任者は、国からの金を使う富津市になる。
 しかも、市長や関係機関と自由に意見交換できるのが、このツアーのウリなのだから、そこに1泊2日という時間と視察の労力に見合うだけの対価を発見するしかない。

 12月16日(金)、午前10時5分に青堀駅に着くと、マイクロバスに参加者たちが乗り込み、アフィックのスタッフに引率されていった最初の場所は、イオンモール富津だった。



 イオンモールの一角には、NPOアフィックがシェアオフィス用に借りているスペースがあり、そこに県内・市内の金融機関のスーツ族のおじさんたちが座っていた。

 もっとも、シェアオフィスのスペースにはまだ1社も入っておらず、がらんとしたスペースにはツアー参加者たちの座るイスが金融機関のみなさんと向き合う形で並べられていただけだった。

 しかも、金融機関のおじさんたちが手短に事業の紹介を一通りする話の中で、少し驚いたことがあった。
 それは、「市内には布袋寅泰・今井美樹の夫婦の別荘がある」とか、「若花田が住んでいる」など、有名人のプライバシーを金融機関の人間がさらっと言ってしまったことだ。

 「口が固い」はずの金融機関の人間が、初めて市内にツアーで訪れた人たちに個人情報をカンタンに暴露してしまっては、有名人や富裕層は富津市には住みたくなくなるだろう。
 いや、中流資産層の「上」の部類の市民も思わず敬遠してしまう、リテラシーの無さかもね。
 それが自分たちの商売を渋くしてしまってることに、彼らは全然気づいてないようだった。

 「富津市内で起業するなら私どもから金を借りてくださいな」という挨拶と同時に、各社のパンフレットが配られたのだが、年率で言えば、とても借りたくない数字だったので、興味を示すツアー参加者はほとんどいなかった。

 というか、なぜいきなり会う富津市民が金融機関の人間なの?

 1年後の財政破綻が危ぶまれている富津市は、少額の資金を小規模の事業に貸せば破綻を免れる程度には破綻回避までの時間的余裕があるってこと?

 新規事業を市外の小規模事業者が1000人規模で一斉に富津市内に移住して始められる秘策のような支援体制でもあるの?

 そう勘ぐりたくもなるのだが、実はほとんど何も考えてないことが、次に訪れた市役所でハッキリしてしまった。
 そう、市長との意見交換である。
(以下、後編へ続く。全編を動画で聞きたい方はコチラ

【関連ブログ記事】
 新聞やテレビが取材したくなる報道価値の3条件
 差別発言の自民議員に、三条市長「今更どうこう」
 生活保護のパチンコ禁止よりはるかに大事なこと

上記の記事の感想は、僕のtwitterアカウントをフォローした上で、お気軽にお寄せください。


 共感していただけましたら、下にある小さな「ツィート」「いいね!」をポチッと…

conisshow

conisshow

Powered by Blogger.