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■こども食堂の活動資金に、不要な学術書の寄付を!

 こどもの貧困という現実が深刻化し、こども食堂が全国的に増えている
 こども食堂は、地域のこどもにバランスのよい食事を無料もしくは格安で提供する活動だ。
(知らない方は、このオンライン記事を読んでみてほしい)

 こども食堂では、食材を寄付されたり、調理・配膳の場所を無償貸与したり、運営は地域の市民が自発的にボランティアとして関わっている。

 ボランティアには、食材を調達する人、料理する人、こども食堂へこどもを呼び込むために宣伝する人、ボランティア人材を集める人など、さまざまな人材が必要だ。

 もっとも、1回だけイベントとしてこども食堂をやってみて、その反響を確かめてから月1回→週1回→週◯日という具合に開催頻度を増やしていくことで、無理なく定例化していく団体もある。

 もちろん、最初からやる気満々の親たちが集まってミーティングを重ねれば、一気に「週◯日のみ開催」を常態化させることもできるだろう。

 ただし、いずれも遅かれ早かれ問題になるのが、資金不足だ。
 こどもに栄養バランスの良い温かい食事とコミュニケーションのチャンスを提供することは、その活動内容が良いものであればあるほど、こどもたちが増えていく。
 増えることはうれしいことだが、その分だけ食材費や手間がかかることになる。
 増えすぎれば、より広い場所を借りる必要も出てくる。

 ボランティアの労力は、マネジメントでなんとかなるかもしれない。
 しかし、食材費や会場費などがどんどん増えていくと、こどもの親からより多くのお金を徴収することになったり、常に運営に関わる大人にもボランティアに使う時間が増えてしまうことにもなる。

 貧しい家庭の子になるだけ安く(できれば無料で)食事を提供するという大義が損なわれてしまっては、ボランティアとして関わる大人のモチベーションを維持することも難しくなる。
 しかも、忙しさだけが増してしまうと、運営自体の持続可能性が危ぶまれる。

 では、どうするか?
 こども食堂の運営組織には、寄付金を個人・法人から集めているところも少なくない。
 寄付は1つの資金調達方法だが、こども食堂が報道されなくなると、次第に寄付する人が減るというデメリットがある。
 また、活動組織をNPOなどに法人化して、自治体や企業などから助成金を調達しようにも、既に助成金をほしい団体は無数にあるし、年1回だけ数十万円をもらっても翌年以降はもらえる保証はなく、焼け石に水だろう。

 そこで、僕(今一生)は、『学術書チャリティ』という寄付の仕組みを運営している。
 非営利活動団体が学術書チャリティの公式サイトから申し込めば、不要な学術書などのアイテムを古書店へ寄付すれば、買い取り額面の90%が申し込んだ団体へ振り込まれる仕組みだ。
 寄付の事実を報告できるブログがあるなら、法人化してない団体も申し込めるし、学生団体も歓迎だ。

 この学術書チャリティのメリットは、いつでも必要な資金を非営利団体が自助努力によっていくらでも集められる点にある。
 僕自身、このチャリティと同じ仕組みによって、僕の関わる非営利団体に毎月平均で20万円ほどを調達していたことがある。
 やり方次第で、不要な学術書はカンタンに集められるからだ。


●市民自身が課題解決に立ち上がれば、民主主義が生まれる

 不要な学術書は、大卒者の家には山ほど眠っている。
 子どもの通う小・中・高校の教職員なら誰でも持っているから、子どもに「先生から不要な学術書をもらってきて」とお願いすることもできるし、ボランティアの大人たちが学校に働きかけてもいい。

 また、大学生でも3、4年生になると、既に不要になってしまった学術書を持て余している人も少なくないので、近隣の大学に学内で集めてもらえるよう働きかけたり、社会福祉を学んでいる学生や、児童福祉やソーシャルデザインなどを教えている教師、社会貢献活動を行う学生サークルに声をかけて集めてもらう手もある。
 大卒者の働く職場には、NHK、読売新聞や朝日新聞、テレビ局などのメディア企業もあるから、学生が足を運べば就活のチャンスにもなるし、こども食堂を取材されるチャンスにもなる。

 さらに、団体の公式ブログで呼びかけ、こども食堂に不要な学術書を持参してもらうこともできるし、その呼びかけはfacebookやtwitterなどのSNSでも拡散できる。

 それどころか、こども食堂の活動資金のために、お金そのものではなく、不要な学術書を集めていることを地元の新聞やテレビ局、FMラジオ局などにメールで伝えれば、番組や記事で紹介してもらえるチャンスを作れる、活動自体を広く知らしめることもできる。

 学術書チャリティでは、学術書だけでなく、文学書や専門雑誌なども受け付けており、詳細はこのページの左の欄にある商品カテゴリーを確認してみてほしい。

 そして、こども食堂を運営する非営利団体のみなさんに、このブログ記事のリンクを教えてあげてほしい。
(※学術書チャリティは、こども食堂だけでなく、他の社会的課題でも、解決事業を行う非営利団体なら申し込める。承認されると、不要な学術書を効率良く集められるマニュアルも提供される)

 さて、僕がなぜ「こども食堂」の増加に注目しているのか?

 それは、「こどもを栄養不足と孤独から救う」という大義の下に市民が集まり、コミュニティを形成し、責任主体として動き始める時、日本に初めて民主主義が始まる期待があるからだ。

 民主主義とは、市民自身が社会的課題の解決に自ら参加し、責任主体として自治を行うマインドがなければ始まらない。
 日本は明治以来、近代化が始まったのはずなのに、日本人の心の中はいまだに「誰か偉い人にこの社会の仕組みを作ってもらえればいい」という封建主義だ。

 そのため、こどもの貧困などの社会的課題が話題になると、何のためらいもなく真っ先に政治や官僚などに対して解決アクションを求める。

 しかし、前述したように、民主主義とは課題解決のアクションに参加と自治で応じるマインドがなければ、始まらない。
 この参加と自治を実践するチャンスもマインドも、日本の戦後教育は日本人から奪ってきた。
 その一因は、官僚の腐敗にある。

 もっとも、こどもの貧困という現実を直視する時、官僚の腐敗を嘆いたり、批判する以上に必要なことは、市民自身が目の前の社会的課題を解決することに動くことだ。

 だから、全国各地でこども食堂は日に日に増殖し、市民自身による解決に動き出している。
 解決活動に関わるコストを計算し、活動継続に必要な資金を調達するために、さまざまな努力を続けている。

 こうした現実の先には、会費や寄付だけでは運営コストが賄えない日が来る。
 それに備え、赤字を補填できる程度の収益を生み出す仕組みが必要になる。
 それがボランテイア団体が社会起業家へ成長するプロセスであり、同時に何にいくらかかるのかを実践から学び、費用対効果を見積もるスキルを向上させる。

 そうなれば、やがて官僚が考え、議会で決まる政策のムダにも今より敏感になり、納税者としての意識も目覚め、政治思想よりもっと地に足の着いた判断力をもって、確かな政治的関心も高まることになる。
 そこに到達してこそ、この国で初めて民主主義が理解され、自治マインドをもった市民が税金の有効な使い方を提案できるようになり、腐敗した官僚を一掃し、無能な政治家を選ばずに済む社会へ近づく。

 それは、端的に「今よりもっと生きやすい社会の仕組みを作ること」につながる。
 こども食堂の運営などに関われば、市民が「他の誰でもなく自分たち自身がこどもが飢えない、孤独にならない社会を作るのだ」という意識を目覚めさせる。
 それこそが自治マインドであり、民主主義への目覚めなのだ。

 本物の民主主義が始まれば、民間でできることは民間に任せられるようになり、国や自治体におんぶにだっこだった構えに多くの人が気づくようになり、市民が支払った税金を腐敗した政治家や官僚に使われ放題になっている現実も変えられる。

 実際、イギリスのブレア首相は、シンクタンクを通じて民間の社会起業家に投資することで、財政再建を成し遂げた。
 韓国でも2007年に「社会的企業育成法」を施行し、民間でできる課題解決は民間に任せることで、財政支出を抑制しようとしている。
 世界の大借金国で、増税と借金でしか国の財政を維持できずにいる日本は、いまだにそうした世界情勢に鈍感で、腐敗した官僚と政治家によって市民が自治マインドを眠らされたままだ。

 しかし、現実はマスメディアが十分に報じていないところで、確実に変化してきている。
 ビジネスによって社会的課題を解決し、もっと生きやすいよのなかの仕組みを民間で作る社会起業家は、とくに3.11以後、日本にも増殖しているし、その中には児童福祉に関わるものもある。

 『ソーシャルデザイン50の方法』(中公新書ラクレ)で紹介した埼玉県川口市の「からふる」では、障害児を抱えた親たちが、障害児に自由に描かせた絵をプリントした名刺を販売することで、活動コストを賄う収益源の1つにしているし、障害児には印税を配当している。

 こども食堂を運営する大人たちが、国語の教師や書籍の編集者を公募すれば、食堂に集まるこどもや親たちに貧困や孤独などの現実を作文に書いてもらったものに添削指導を提供でき、多くの人たちが共感できる文章に洗練させることができる。

 それらの文章は紙の本として販売できる商品や有料ダウンロードできるコンテンツにもなるし、作文を読み上げる講演会として市内外へ子どもや親を講演者として売り出すこともできる。
 その収益も活動コストを賄う収益減の一部にできるし、印税も配当できる。

 こどもだからといって一方的に施しを受ければいいという構えを取れば、こども自身は「申し訳無さ」を言い出せなくなる。

 そういうやさしさの押し売りや支援ポルノを避けるためにも、こどもたち自身が面白がれる収益の作り方を、むしろ大人たちが教えてあげられるよう、社会起業家たちの手がけるソーシャルデザインやソーシャルビジネスについて学んでほしいものだ。

 『よのなかを変える技術 14歳からのソーシャルデザイン』(河出書房新社)を読んだり、ソーシャルデザイン白熱教室@早稲田大学の動画も参考にしてみてほしい。

 こども食堂が同じ市内に増えていけば、全部の足を運ぶこどもの数も増えるため、こども向けの商品・サービスを事業展開している企業に市場調査代をもらって、こどもたちに新商品のサンプルを試してもらうこともできるだろう。

 中高生にもなれば、彼ら自身が会いたい有名人にこどもがメールを送り、市内の公共施設で講演会を開催できる。そして、その入場料を収益源の1つにできる。

 あるいは、中高生たちがわくわくしているゲームや有名ミュージシャンが新作を出すことが発表されたら、ゲームメーカーやミュージシャンにこどもからメールしてもらい、新作の初期出荷点数の売上の1%をこども食堂の運営費に寄付してもらえるよう働きかけるのもいい。

 こどもたちが、こども食堂の活動の意味を十分に理解し、自分の言葉で自分の境遇を表現するとき、「有名人はこんな田舎の小さな集団を振り向いてくれないだろう」という大人の浅はかさを吹き飛ばす現実が生まれる。

 こどもは、こどもというだけで、彼ら固有の価値があり、それは大人が見失っているものなのだ。
 一方的な支援が支配に変わりやすいように、日々育ちゆくこどもたちに、少しでも運営にコミットできる挑戦のチャンスも提供してほしい。
 社会的包摂は対等な関係にしか生まれないし、こどもの頃から自分たちの問題を自分たちで解決する活動に参加し、自治を実現していくことこそ、こどもの世代に民主主義の実現を残していけるのだから。

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