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■視覚障害者が働ける仕事を集めてみた

 知的障害者の仕事についてのブログを前編後編と書いた。
 すると、「視覚障害者には応用できない」という指摘があった。
 たしかに、障害特性によって応用できないこともあるだろう。

 そこで、毎週金曜日の夜9時にやっているツイキャスで、約20人の視聴者のみんなと一緒に「視覚障害者がやっている仕事」の実例をネット検索で集めてみた。
 すると、いろいろな仕事が浮かび上がってきた。
 そうした情報をこの記事では分かち合いたい。



 視覚障害者でも、健常者と同様に働いている人たちも少なくない。
 ミュージシャンでは、スティーヴィー・ワンダーや長谷川きよしなど、全盲の演奏家が珍しくない。
 三味線や琴の世界では、昔から全盲ミュージシャンが演奏を担ってきた。
 あんまや鍼灸などの仕事も同様だ。

 シーナ・アイエンガー博士(上記の写真)は大学の研究者になったし、パティシエになった方もいる。
 視覚障害者自身が代表となって設立し、壁を登るフリークライミングに視覚障害者の参加を呼びかけるNPO法人モンキーマジックもある。
 テープ起こし専門のブラインドライターとして成功した松田昌美さんもいる。

 しかし、今回のリサーチは、健常者でもできる分野ではなく、むしろ視覚障害者であることが有利になるビジネスや仕事を発掘したい。

 実際、ダイアローグ・イン・ザ・ダークが運営する暗闇レストランは、いつでも暗闇を生きている視覚障害者が給仕として雇用されている。
 暗闇では、視覚障害者の方が健常者より自由に動きやすいのだ。
(似たような取り組みには、ブラインドカフェがある)

 しかも、視覚障害者は健常者より触覚が優れているため、ダイアローグ・イン・ザ・ダーク今治タオルと協働し、革新的に肌さわりの良いタオルも開発している。

 視覚障害者の触覚のすごさを示す例では、ジョン・ブランブリットさんという画家は絵の具に触れただけで何色かが一発でわかるという。
 見えないから絵が描けないということはなく、エイブル・アート・ジャパンでは視覚障害をもつアーチストの展覧会を開催している。

 エストニアでは、全盲の娘を持つ母親が、視覚障害児のための塗り絵を商品化した。
 障害を持つ当事者の困っていることを、健常者が解決しようと動けば、障害者と健常者のコラボによって新しい商品・サービスを作り出せるし、そこに仕事を生み出せるのだ。

 TED womanに出場した視覚障害者のキャロライン・ケイシーさんは、絶滅の危機に瀕しているアジア象の保護活動を行う非営利の社会起業団体「エレファント・ファミリー」を設立した女性だ。
 彼女は「カンチ」という団体も設立し、2004年から「アビリティ・アワード」を開催。
 これは、世界中どこでも通用する視覚障害者による仕事・ビジネスを発掘・表彰し、テレビ・ラジオ・新聞でその模様を紹介するという取り組みだ。

 インドでは、インドとイギリスの学生たちが「Made In The Dark」というプロジェクトを始めた。
 視覚障害者たちのすぐれた嗅覚を活かし、匂いの異なるビーズを編んでもらい、アクセサリーを作って商品化することで、視覚障害者に就労のチャンスを広げようというものだ。



 日本では、障害者の働ける場所を作り出す一般社団法人日本ダイバーシティ推進協会を、視覚障害者の久保博揮さんが作った。
 自身が障害を持つからこそ、ダイバーシティ・コーディネーターとしての言葉に説得力が出るわけだ。

 これと同様に、視覚障害者の初瀬勇輔さんは「障害者雇用コンサルタント」として、障害者と障がい者を雇用したい企業を結びつける仕事をしている。
 同じ障害を持つ者どうしの人脈があればこそ、雇用のマッチングという仕事を作り出すことができるのだろう。
 これは、日常的に障害者の人脈が乏しい健常者ではなかなか難しい仕事だ。


●ハンデは強み。切実に困ってることこそ価値

 大平啓朗さんは、音や匂いなどを感じて写真を撮る傍ら、47都道府県を一人で杖を持ちながら回った旅の経験を活かし、「ふらっとほ~む」という会社を興した。

 健常者が障害者へのサポートの仕方で戸惑っていることを実感したり、旅行で宿泊予約を断られたこともあり、バリアフリー観光サービスによる起業を決意した。
 札幌市の旅行代理店と共同で車椅子用のリフト付き観光バスを使った函館観光ツアーを実施。
 大平さんがガイドになる乗馬やワカサギ釣りなどのツアーも計画しているという。

 障害によって何に困っているかを知っているのは、障がい者自身だ。
 それを「バリア・バリュー」(当事者固有の価値)として商品化やサービス開発に活かすことによって、障害者は障害者にしかできない仕事・職種を作り出せるのだ。

 障害者自身によるビジネスの筆頭格は、社員が全員障害者の大阪のミライロだろう。
(※右下の本は、車椅子ユーザでミライロの社員・岸田ひろ実さんの著作)

 ミライロは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに対してどんな障害者にとって利用しやすい環境に改善するためのコンサルティングを提供した。

 さまざまな障害者が社員にいれば、どんな障害をもっていても利用しやすい環境を作ることができ、それは商業施設にとって潜在的な損失を補い、消費を拡大し、売上アップに寄与するのだ。

 つまり、障害者が自分の困りごとを指摘するだけで、商業施設が売上をもっと伸ばせるという価値があり、そこに障害者自身によるコンサルティングという仕事が生まれるというわけ。

 アメリカでは、13歳の起業家がレゴで低コストの点字プリンタを作り、Intelから数千万円の資金調達をして商品化が進むなど、障害者にとって便利な商品は世界に売れるというユニバーサルな市場の魅力だけでなく、投資事業としても大きな期待を集めつつある。



 横浜の株式会社ナレッジクリエーションの代表を務める新城直さんも、視覚障害者だ。
 視覚障害者もケータイを利用したいというニーズから、視覚障害者たちにとって使いやすいスペックのニーズを拾い上げ、150万台の大ヒットとなった次機種の携帯電話「らくらくホン」の開発に携わった。
 その後、ナレッジクリエーションを起業し、パソコン画面の文字情報を読みあげるソフト「しゃべるんです」や点字専用入力キーボードなどを開発した。

 6歳で完全失明した望月優さんは、株式会社アメディアを設立し、遮光メガネ、音声で道案内するアプリ「ナビレコ」、読み上げソフトなどの商品の販売を行っている。
 音声で株取引や落語なども楽しめる試みも販売フェアで行っている。

 なお、総務庁では、「障害者のICT(情報通信)を活用した社会参加」というPDFを公開していて、視覚障害者によるネットショップ、テープ起こし、図書館司書として視覚障害者への対面朗読や録 音図書の郵送貸出業務の調整などを行っている事例を紹介している。

 以上のように、視覚障害者はもちろん、それ以外の障害者でも障害特性を活かして仕事を作り出すせた事例は、日々刻々と増えている。
 今後もツイキャスで仕事に就くのが難しい属性の人たちが仕事を作り出せた事例を、視聴者のみなさんと一緒に集めてみたい。
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