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■親に虐待されてる子から希望を奪う雑誌ニコラ


 10代少女向けの人気雑誌『ニコラ』は、親にしばらく動けなくなるほど蹴られているという読者からの訴えに対して「怒られない生活」を助言し、ネットで炎上した。

 その後、『ニコラ』編集部では「お詫び」の文章を掲載したが、twitter上で親から虐待されている相談者について「児童相談所へ通告する義務を果たしたか?」と問いかけられても、だんまりを決め込んでいた。

 まだ通告していないなら「調査中です」と答えればいいものを、だんまりを決め込んでしまったために、ネット市民や読者からの不信感を買うことになったのだ。

 そこで、ねとらぼがニコラ編集部にインタビューしたところ、「取材は控えさせて頂いております」と取材拒否(※前述の画像)
 それどころか、「必要がありましたら、誌面にてご報告」と回答した。

 つまり、国民の義務を果たしたかどうかは公表せず、相談者の子どもが今も親に蹴られ続けていても説明の「必要」は今のところ感じておらず、知りたければ『ニコラ』を毎号買い続けて確認しろってわけだ。

 雑誌の役割は、読者のニーズに応えた記事を提供すること。
 この場合、読者が親から虐待されていると訴えているのだから、その子に取材し、真相を確認の上、その子が住んでいる地域の児童相談所へ電話1本入れさえすればいい。
 相談してきた読者とのやり取りの中で信頼関係さえ築ければ、誰でもできるカンタンな作業だ。

 なのに、『ニコラ』編集部は国民の義務である虐待通告の有無を誌面で発表することで、商売=利益につなげようとしている。
 親から虐待され、今も苦しんでいる子どもをネタにし、「通告したかどうかは誌面を確認して」と関心を引き伸ばし、雑誌を買わせようなんて、おかしいじゃないか!

 僕自身、親から虐待された100人の公募手紙本を作っている編集者なので、未成年の投稿者からのお問い合わせには、本人から事情を確認した上で児童相談所に通告している。
 場合によっては、民間の子どもシェルターを紹介したり、100人の投稿採用者には謝礼1万円を支払うことで、虐待から緊急避難するためのお金に充ててもらうようにしている。

 『ニコラ』編集部は、編集者を信頼して相談してきた少女の訴えを、あまりにも軽く見ていたのではないか?

 親に虐待されている子どもは、自分がされている被害を小さく見積もる傾向にある。
 「どこの家でもこのぐらい親からされている」と思い込み、動けなくなるほど蹴られていても、じっと一人で耐えるガマンの日々を続けている。

 しかし、それに耐え続けているばかりだと、ある日、親からの一発の蹴りで殺されてしまうこともあれば、日常的な虐待によって精神を病んでしまったり、そういう暮らしに耐えかねて親を殺傷してしまった子もいれば、自殺してしまった子もいる。

 そして、日本では若者の死因の一位は自殺なのだ。


 だから、僕は『ニコラ』編集部で働く方々や、発行元の新潮社の社長・佐藤隆信さん(※右の画像。アドタイより引用)にお願いしたい。
 読者の子どもから希望を奪うような「お詫び」ではなく、頼れる大人としての構えを見せてほしい、と。

 ピンチは、チャンス。
 ここで、『ニコラ』編集部が総力を挙げて、親から虐待されている読者が納得できる解決へ導いてこそ、編集部や新潮社は「あっぱれ!」と市民からの称賛を得られるのだと思う。

 できれば、人気モデルと一緒に親からの虐待について問題と対策を考える特集記事を組めば、記事への共感が広がり、読者をさらに増やすことさえできるだろう。
 10代の死因1位は自殺であり、しかも自殺率が依然として変わっていないのだから、親子関係を解決する記事は、キラー・コンテンツなのだ。

 逆に、国民の義務である虐待通告を編集部全員で怠るようなコンプライアンス(法令遵守)違反を続け、CSR(企業の社会的責任)を果たさないままなら、新潮社の長い社歴にも傷をつけ、市民=読者からの信頼も失い、出版ビジネスの持続可能性も損なわれかねないだろう。
(※新潮社には、未成年だった酒鬼薔薇聖斗の実名を事件当時に雑誌で発表した「前科」がある。今回の取材対応も、社長が自ら指導しないとまずい回答レベルだろう)

 既に、「もうニコラは買わない」という声も上がっている。
 子ども向け雑誌だからといって、少ないお小遣いからお金を出し、発売を楽しみにしている読者の子どもをなめないでほしい。


●もう一つの心配は、人気モデルを黙らせるパワハラ

 今回の『ニコラ』炎上騒動では、僕だけでなく、多くの方々が『ニコラ』編集部の対応を疑問視し、アクションを起こしている。

 児童相談所は、市民からの通報がなければ情報がなく、動けない。
 つまり、『ニコラ』編集部が児童相談所へ通告しないままでいれば、親から虐待されている読者をいつまでも救えないのだ。

 なので、『ニコラ』編集部のtwitterアカウントには、「児童相談所への通告はまだですか?」と問いかけるツィートも日に日に増えている。

 それ自体が編集部員に事態の深刻さを理解させる有効なアクションになるし、誰でもできるアクションなので、あなたもぜひやってみてほしい。

 また、毒親撲滅漫画家のまつもと千春さんは、オリジナルの漫画でわかりやすく毒親の現実を『ニコラ』編集部に伝えている。

 このように、『ニコラ』編集部への風当たりが強くなる中、『ニコラ』の誌面で仕事をしている人気モデルたちは、口をつぐんでいる。

 日頃、同世代の読者が少ないお小遣いの中から『ニコラ』を買い、その売上の一部から人気モデルはお金(ギャラ)を手にしているのに、読者が親に虐待されていても、「これはおかしいよ!」と誰も何も発言しない。

 所属事務所が未成年のモデルやタレントに自由に発言させない背景には、うかつな発言で仕事を失う恐れを大人のマネジャーが抱いているからだろう。
 これを言い換えれば、「金や仕事が欲しけりゃ黙ってろ」だ。

 これは、どこの会社でも、社員との関係の間に見られるパワハラだろう。
 それを子どもの頃から当たり前のように強いるのは、おかしなことじゃないか?

 自分と同世代の少女が親から虐待されていると知って心を痛めたモデルが、「ニコラ編集部のみなさん、児童相談所へ通告してください」と言い出すことの何が問題なんだろう?
 読者がどんなにつらい目に遭っていようと、その読者のおかげで仕事を続けられている立場の人間には関係ないと、所属事務所は教えているの?

 もしそうだとしたら、これは深刻な人権問題だ。
 イヤな社会の仕組みやルールがあった時、「これはイヤだ!」と言い出すことさえできないのなら、この社会で生きていくことが恐ろしくなる。
 奴隷のように強者に従うしかないとうなだれることに慣れさせるなんて、それ自体が子ども虐待そのものだ。

 でも、「これはイヤだ!」と自由に言えるなら、そこからイヤなルールをなくすことだってできる。
 アメリカでは、10代の間にも銃がはびこる社会に対して、全米の高校生が授業をボイコットして反対の意思を表した(※画像は、AFPの記事より)。
 これは『命のための行進』といい、映画評論家・町山智浩さんが解説した動画もある。


 日本でも、親から虐待されている子どもを放置する『ニコラ』編集部に対して、「せめて児童相談所へ通告して!」とツィートする程度のアクションが10代の間で広がってもいいはずだ。
 『ニコラ』に相談を寄せた中2少女は、今も親に動けなくなるほど蹴られているのかもしれないのだから。
 その現実に何も感じないとしたら、あまりにも共感能力を欠いていると言わざるを得ない。
 そういう子たちに育てている大人にこそ、大きな責任がある。
 育ちの中にいるモデルたちは、そういう大人たちのパワハラに敏感になってほしい。

 『ニコラ』の読者によってお金を得ている人気モデルなら、編集部に対して「児童相談所へ通告してください!」と声をあげてほしいし、10代のシンガーソングライターなら歌を作って虐待に対応しない大人たちの問題を訴えてみてもいいはずだ。
 親から虐待されている子どもは、今この時も、誰にも言えずに苦しみ続けているのだから、「ニコラ編集部が何も動かないのはおかしい!」って発言していいんだよ。

 おかしいものに「おかしい!」と言えないルールを強いる人たちこそが、間違ってるんだ。
 お金で自分の権利や自由を売り渡さないでほしい。
 おかしいことには、「おかしいよ!」と怒っていいんだよ。
 怒っていい時に怒れないとしたら、それこそ奴隷じゃないか!

 なお、『ニコラ』編集部のtwitterアカウントでは、今日(4月9日時点)では既に親から虐待されている読者の一件が終わっているかのように、まるで最初から中2少女が親から虐待されていなかったかのように、キラキラな人気モデルの紹介を重ね、お詫び文のツィートをどんどん下に移し、目立たないようにしている。

 親に虐待されている全国の子どもたちがそうしたツィートを見たら、どう思うだろう?
 誌面に相談を寄せてきた中2少女だけが、親から虐待されているわけではないのだ。
 『ニコラ』編集部は、今一度、真剣に考えてみてほしい。

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