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元ジャニーズJr.の飯田恭平さん(37)と田中純弥さん(43)が、ジャニー喜多川氏から性被害を受けたとして、スマイルアップやスタエンなどに対し、460億円余りの賠償金を求める訴訟をアメリカで起こすことが報道された。
これを受けて、被告側に指名されたスマイルアップは、公式サイトに以下のコメントを出した。
「今回、米国で訴訟を提起されたと報じられている方々は、従前、日本国内にお住まいであり、米国の裁判所には管轄は認められないものと考えております」
スマイルアップが認めるかどうかなんて、まったく意味がない。
アメリカのネバダ州ラスベガスのホテルで性被害を受けたのだから、ネバダ州立裁判所の管轄だからだ。
同じく被告側になったスタートエンターテイメント(略してスタエン)は、以下のように発表した。
「当社は、2023年10月17日に株式会社SMILE-UP.とは資本関係を有せず、また経営も分離した全く別の法人として設立されました。
そのため、米国における約465億円の賠償を求める訴えについては当社は無関係の立場にあり、本件について提訴される理由がないため、大変困惑しております」
ジャニーズ事務所に所属していたタレントと社員がそっくり移籍してきた会社は、商品=タレント・社員=資本なのだから、「資本関係は有せず」は通らない。
あなたが農家で、長年家族で耕してきた土地で大金と膨大な時間をかけて大量のキャベツを作ったのに、その家族も土地もキャベツも誰かに無償であげたら、あなたと相手は「資本を渡した・渡された関係」になる。
それとも、スタエンはジャニーズ事務所からタレントと社員を引き抜くために金を払ったの?
払ってないよね。つまり、「第2のジャニーズ」ってことじゃん。
しかも、従業員の性犯罪歴を確認できる「日本版DBS」への申請をするかどうかを尋ねても、スタエンは無回答で、だんまり。
しかし、訴えられると、筋の通らない言い訳コメントを出す。
こんなことは、人権後進国ニッポンならまかり通るが、アメリカには通じない。
日本は娘を襲った父親が裁判で無罪になってしまう国だが、アメリカは子どもを傷つける大人に対して多くの陪審員が厳しい目を向ける。
しかも、BBCのドキュメンタリーは世界中に見られているため、ジャニーズ事務所とジャニー喜多川、そして社員までもが犯罪に加担してきたことは周知の事実。
それどころか、事務所自体もジャニー喜多川の犯罪を記者会見で認めて謝罪したのだから、今回の裁判は原告側が勝てる公算が大きい。
日本で被害に遭われた方への補償金額は、数百万円から数千万円程度だが、欧米での子どもに対する性犯罪は1人あたり1億円が相場だ。
日本では容疑者のジャニー喜多川が死亡していることを理由に警察の捜査も始まらないが、イギリスではジミー・サヴィル事件で警察もBBCも反省して調査を行った。
日本が人権を守る国に変わるチャンスとして、今回のアメリカの裁判で懲罰的な賠償を旧ジャニーズ事務所の経営陣や、ジャニーズの資本をそっくり受け継いだスタエンに負担させるのが好ましい。
莫大な賠償金や裁判の長期化、司法取引などの手続きで、スマイルアップ側は賠償金を払えるだろうが、スタエンには重い負担となるだろう。
当然、スタエンと契約しているタレントは、早めに契約を解除し、よその事務所に移籍するか、独立して個人事務所を立ち上げた方が身のためだ。
いずれにせよ、今回の訴訟は2人の被害者による裁判がこれから始まる。
訴訟内容は、弁護士事務所のサイトに英文で書かれているが、内容が多すぎるので、飯田さんの裁判に関する内容をざっくりまとめた和訳をブログに公開しておいた。
その和訳から、ほんの少しだけ抜粋して紹介しておこう。
それは、飯田さんの被害に関する部分だ。
「2001年9月、原告は、ジャニーズJr.のメンバーと共に夕食に招待された。 夕食が終わろうとしたとき、喜多川が「もうこんな時間だ」と提案。原告と他のジャニーズJr.メンバーがジャニー喜多川の家に一晩泊まることになり、原告は母親に電話で許可を求めた。
この電話でジャニー喜多川は、原告の母親に対して、自分の監督の下なら原告は安全だと保証した。
喜多川氏の自宅には2階に寝室が2つあり、マットレスで埋め尽くされていた。2階の寝室は、喜多川が原告を指導した場所で、ジャニーズJr.のメンバーは眠っていた。
原告は、誰かに足をさすられる感触で目を覚ました。自分の足をさすっているのが喜多川だと気づいたとき、原告は怯え、ジャニー喜多川が自分を一人にしてくれることを期待して寝たふりをした。
しかし、ジャニー喜多川は原告の身体を揉み続け、やがて性的暴行を加えた。 原告はまだ13歳で、ジャニー喜多川からの行為によって混乱し、恐怖を感じるようになった。その後、原告は徐々に仕事量が増えていった。
原告は月に2~4回、喜多川宅に滞在していたが、宿泊するたびにジャニー喜多川の被害に遭った。
2002年になると、原告は週末のほとんどを喜多川宅に滞在するようになった。 被害について、原告とジャニーズJr.の他のメンバーは公然と話をしていた。ジャニーズ事務所では、定期的に被害に遭うことは常識だった。
そのため原告は、ジャニーズJr.に残りたければ、ジャニー喜多川に定期的にやられることを受け入れるしかなかった。
だが、原告は、中学校の女子生徒と交際を始めたことで、適切な関係とは何かを深く理解するようになり、ジャニー喜多川に反感を抱き始めた。
そして、2002年5月頃、ジャニー喜多川からやられることを拒否した。喜多川を突き飛ばし、自分の下半身に触れることを許さないようにしたのだ。その翌朝から、ジャニー喜多川は原告との会話を完全に無視し始めた。
もう喜多川のお気に入りではないことは明らかだった。Jr.の他のメンバーも、原告から距離を置くようになった。喜多川に無視され、他の選手から仲間はずれにされることによるストレスは、原告を緊張させ、深刻な抑うつ状態に陥らせた。
喜多川は原告の母親に電話をかけ、『このままでは原告の人生は終わってしまう』と告げ、ラスベガスへ旅行に同行させた。
これでジャニーズJr.のメンバーは、彼に再び優しく接するようになったが、喜多川の性的暴行を再び拒否すれば、また仲間はずれにされることを原告は恐れていた。
2002年8月16日、ネバダ州クラーク郡に到着すると、喜多川は原告に自分の部屋で寝ろと命じ、滞在3日間、原告は被害に遭った。当時、原告は14歳。喜多川は71歳だった。
結果的に、原告は2002年から2006年にかけて、定期的に性的暴行を受け続けた結果、外傷性ストレス症候群、うつ病、不安神経症、半身不随、その他さまざまな問題に苦しんだ」
今回の裁判の弁護士は、ジーグラー・ジーグラー&アソシエーツという法律事務所の弁護士・クリストファー・ブレナンさんだ。
ブレナンさんは、2018年にビジネスインサイダーでインタビューを受けている。
ブレナン弁護士は、「セクハラ訴訟専門弁護士」と紹介されているが、検事補の経験もあり、30年以上も司法の世界で生きてきた人だ。
ブレナンさんは、アメリカで事業を展開する日系・アジア系企業に対するセクハラおよび差別に関する案件を100件以上扱ってきたという。
そのインタビューから彼の言葉を抜粋すると、どれだけ凄腕か、想像できると思うので、引用して紹介しよう。
「私は2006年、北米トヨタ自動車社長の日本人アシスタント女性が、社長にセクハラを受けたとして起こした損害賠償請求訴訟を担当しました。
私は多くの日本人女性から、日系企業の女性に対する態度、文化、組織の階層について教わりました。そこから言えるのは、女性に対する言動が、アメリカと180度異なっているということ。
日本からの駐在員というのはほとんど男性ですが、数年で帰国するので、日本の環境をそのまま持ち込みます。でも、彼らの女性に対する敬意に欠ける言動は、日本以外のどこでも許されるものではありません。
アメリカにある日系企業では、日本人女性が日本人女性であるゆえに差別されています。階層のトップにいるのは男性の駐在社員、2番目が白人のアメリカ人男性、3番目が女性の駐在社員、4番目が現地採用の日本人女性です。
日本人女性は性別が理由で、日本企業に差別されているのです。
特に、最下位にある現地採用日本人女性に対する給与、尊敬のレベルの低さ、昇進のチャンスのなさはあまりにもひどく、到底受け入れられるものではありません。
多くの人が、英語も話せないのに10代で留学し、猛勉強してバイリンガルです。大企業に雇われて期待が膨らむわけですが、実際は何のチャンスもなく、下級の社員として扱われます。
日本企業の文化には苦情も含め「バッドニュース」は誰も報告したがらないところがあります。特別な報告がないことが、いいことだとされています。
高齢化と少子化が進んでいるなら、女性をもっと高い地位に引き上げ、昇進させなかったら、日本にチャンスはないでしょう。労働力を輸入するしか残された道はありません」
大企業を相手取って訴訟を起こし、雇用差別やセクハラと戦い続けるなんて、裁判での勝率が高くなければ、ムリだろう。
つまり、やり手の弁護士さんだと察しが付く。
この裁判で莫大な賠償金を手にしたら、わずかな補償金しか得られなかった被害者たちに、少しずつ分配して上げてほしい、と僕は思う。
あなたが子どもの頃に何度も何度もあなたより強い大人、たとえば、親、教師、バイト先の先輩などに傷つけられたら、大人になってうつ病や不眠などの苦しみが続き、恋愛する自信も失い、働くことすら難しくなるかもしれない。
その現実に対して、あなたは何をしてほしいだろうか?