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今年2月、旧ジャニーズ事務所のスマイルアップが、ジャニー喜多川の被害者4人に対して、「損害賠償債務がないこと」と、「算定した額を超える補償金を支払う義務がないこと」の確認を求める訴訟を、東京地裁に起こした。
スマイルアップは、提示した補償金額が被害者に受け入れられないと、「それなら払わなくていいよね」と裁判所に同意を求めているのだ。
東山社長は、記者会見では「法を越えた補償」と語ったのに、結局は司法に判断をゆだねようとするわけだ。
これは、被害者でなくても「おかしい」と誰もが気づくことだろう。
スマイルアップに訴えられた被害者の一人、田中純弥さん(43)は、朝日新聞に取材されて、次のように答えた。
「意見陳述では、14歳のころから喜多川氏から繰り返し被害を受けてきたので、そう話しました。ラスベガスのほか、ロサンゼルスやグアム、ハワイでも被害に遭いました」
そして、田中さんは裁判でジャニーズ事務所にいたころの自分の写真を示し、「このときは笑っているけれど、大人たちに守ってもらえず、親にも言えなかった。さらに加害者から訴えられたら、どんな気持ちになるかわかりますか」と声を震わせて話したという。
こうした子ども時代の性被害は、男子か女子かは関係なく、しかも第2次性徴の前に受けた被害にはそもそもどんな相手を性の対象にしたいのかも、あいまいだ。
それなのに、加害者側が自分の払う補償金が一方的に安く見積もり、それを被害者が拒否したら「払わなくていいよね」と裁判の場で白黒つけたがるのは、セカンドレイプそのものといえる。
これは、子どもの被害をスマイルアップの東山社長はもちろん、こんな訴訟を却下せずに受け入れた裁判官たちも、どうかしているのだ。
そもそも、子どもに対するこうした事件の賠償額は、欧米では1回の被害だけで1人当たり数億円が相場である。
それを最大で1800万円しか提示しなかったスマイルアップは、被害者の痛みを軽んじているのだ。
ジャニー喜多川がまだ生きていたら、刑務所にぶち込むこともできるが、既にいないからこそ、民事裁判しかできず、被害者に手厚い補償金を出すしか救済の手段がないのに、補償金をケチるあたり、そもそも払う気があったのかどうかも疑わしくなっている。
そこで考えてほしいのは、子どもの被害についてどんな判決が裁判所で出ているか、だ。
最近の事例を3つ紹介しよう。
アニメ映画『君の名は。』のプロデューサを務めた伊藤耕一郎被告(53)は2022年から2023年にかけ、SNSで知り合った当時15歳の少女2人に対し自宅などで2万円から6万円を渡し、計11回にわたってわいせつな行為をした罪などに問われ、起訴内容を認めた。
2月28日の判決で、和歌山地裁は「ネットで少女らを探し、買春や性行為の隠し撮り行為を繰り返した。少女らの健全な発達に重大な影響を及ぼし、非難の程度は大きい」として懲役4年の判決を言い渡した。 懲役4年でも、模範囚なら3年ほどで社会に出てくるので、被害者の少女はまだ未成年かもしれない。
4年という懲役期間は妥当だろうか?
共同通信には、養父によって中学生の頃から被害を受けた女性の話が載っていた。
6年にわたる被害について、裁判所での一審判決は、検察側は懲役8年を求刑したのに、懲役6年の実刑判決が出たという。
その記事をゆっくり読んでみよう。
結局、子ども時代の被害について、子どもに証拠を求める裁判所の判断こそが間違いなのだ。
証拠を残せない、あるいは証拠を親が合法的に子どもの所有物を取り上げてしまえる親権制度があるのだから、子どもの被害者には証拠がなくても有罪や長い懲役刑にできるように法律を変える必要があるのだ。
それは、日本人の大人につきつけられている問題だ。
政治家に対して、「子どもは証拠を残せないから子どもを傷つけた判決には証拠を厳しく問わないように法改正してくれ」とメールしてほしい。
というのは、子どもが被害者になる事件では、懲役の期間があまりにも短く、裁判官自身も子どもの事情を知ろうとしていないからだ。
大阪で、娘を幼稚園児のころから12歳まで性的に虐待していた父親(56)がいた。
この父親は、1審の大阪地裁の裁判員裁判で求刑(懲役18年)を上回る懲役20年を言い渡されたが、大阪高裁での控訴審で、坪井祐子・裁判長は「重過ぎて不当」として1審を破棄し、懲役15年を言い渡した。
なんと、懲役期間が短くなったのだ。
坪井・裁判長は、1審の懲役20年の期間について「いささか過剰な評価と言わざるを得ない」と指摘し、「同種事案の量刑の上限は懲役14~15年で、懲役20年は虐待の末の傷害致死事件も上回っているため、従来の量刑傾向から合理的な理由なく著しく乖離(かいり)しており、重過ぎて不当」と結論付けたという。
裁判は、判例主義だ。
つまり、過去の判決を参考にして、懲役期間の妥当性を判断するわけだ。
裁判官は、この判例と法律に従って仕事をする公務員なので、法律を変えない限り、懲役の期間を長くする判決を出すことはできない。
ということは、日本人のあなた自身が国会議員に対して、「子ども時代の被害に関する裁判では、懲役期間を大人の被害者の3倍以上にするよう法改正をしてほしい」と怒りのメールを出さないと、子どもにとって不利な判決が今後も延々と続いていくってことだ。
ちなみに、この被害者の娘さんは、父親からの被害によって、現在も複雑性PTSDに苦しんでいるという。
そうなると、大人になって統合失調症やうつ病などに苦しみ、仕事も結婚もできないまま、実家を離れることが難しくなるかもしれない。
すると、15年の刑期を務めて社会に戻ってきた父親が、娘に会いに来る可能性が出てくる。
娘さんにとって、これほどの恐怖はないだろうし、病状も悪化する恐れが高い。
ということは、ただ懲役の期間を45年ほどに延ばせばいいだけではない。
被害者の娘が嫌がったら元の家には帰れないようにするとか、娘の住所から半径100キロ圏内には入れないようにするとか、加害者にGPSを埋め込んで被害者が位置を把握できるようにするとか、被害者感情を守れるような制度も必要になるってことだ。
当然、加害者は被害者が一生生活に困らないように、社会復帰した後も被害者に大金を払い続けるような仕組みも必要だろう。
ジャニーズ問題で明らかなように、子どもの被害者には1億円以上を払うのが世界標準なのだから、日本が子どもの人権を守るためには、加害者を刑務所にぶち込むだけでなく、1億円以上の罰金も同時に課すような法改正が必要なのだ。
それぐらいしないと、日本の子どもは今後もやられっぱなしになり、加害者が社会に戻ってくるのを震えて待つ不安や恐怖を取り除けない。
こうした子どもの被害について、どのような法律があれば、被害を未然に防いだり、加害者を被害者から遠ざけることができるだろうか?
あなたのアイデアをぜひ、動画にコメントしてほしい。