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3月31日、フジテレビが女性社員を性接待させた件で、第三者委員会は「『業務の延長線上』における性暴力であったと認められる」という判断を示した(以下、調査報告書より)。
こうした報告をふまえる形で、フジテレビ側は経営陣の入れ替えを行ったが、総務省はフジテレビと親会社に対して「同様のことは二度と起こさないように」と厳重注意し、経営陣の意識改革を要請した。
では、犯罪を起こした中居正広に対して警察庁は動くのか?
警察が中居を逮捕したり、取り調べを始めるには、現時点で3つの条件がある。
① フジテレビの1件だけでは難しい
中居の犯行は2023年6月に起きたため、当時の法律では準強制性交等罪が適用される。
立場の強い相手に抵抗できない関係があった以上、立件されて裁判で有罪となれば5~20年の懲役となる。
しかも、この罪は非親告罪であるため、捜査当局は被害女性から告訴や被害届が出されなくても捜査できる。
つまり、検察が裁判で勝てる見込みを感じれば、警察は動かざるを得なくなる。
ところが、中居は被害女性に8000万円以上の示談金を払い、既に民事では解決済みとされており、中居自身もマスコミから毎日のように非難され、十分以上に社会的制裁を受けている。
すると、裁判が行われても、示談と社会的制裁を考慮され、有罪になっても執行猶予がついて、刑務所に送られる可能性は極めて低くなる。
これは、検察側にとっては負けを意味するので、積極的に警察に捜査を促すことは難しい。
そうなると、中居がフジテレビの女性社員以外にも重大な犯罪を重ねてきた証拠が次々と明るみに出るなどのマスコミ報道が増えない限り、逮捕も事情聴取も始まらないことになる。
そういう意味では、中居の余罪について取材をする人やテレビ・新聞がいるかどうかが、一つのハードルになる。
② 被害女性が被害届を出せるか?
今後、フジテレビの社員だった被害女性が、警察に被害届を出せば、それ自体、大きなニュースとして報道されるため、警察も動かざるを得なくなる可能性は大きい。
というのも、ジャニーズ問題でも警察は容疑者死亡を理由に捜査をせず、2人の正社員も性加害をしたと事務所が認めているのに、動かなかった。
こうした批判をフジテレビの件でも受けるのを避けたい警察は、被害女性自身から被害届を出されたら、警察自身の名誉回復のために動き出すかもしれない。
しかも、被害女性は、第三者委員会のヒアリングに対して、中居と交わした守秘義務の全面解除に応じると回答した。
これは、中居側から受け取った示談金を返しても、事実を明るみに出したい覚悟だろう。
ただし、そうなると、PTSDまで発症して精神的に苦しんだ女性側が、犯行当時の詳細を警察に話さなければならず、PTSDが再発する恐れも高いことから、今すぐ警察に被害届を出すのは、とても大きな勇気を必要とするのだ。
つまり、被害女性が警察に訴え出ること自体が、いつその勇気を出せるかという不確定な条件になるため、急がせることもできない。
しかも、いざ裁判になっても、8000万円以上と報道された多額の示談金さえ払えば、裁判でも執行猶予がついて刑務所に行かなくて済む可能性が高いことから、戦うだけの価値がないと判断するかもしれない。
もちろん、被害女性が、自分の名誉回復のためではなく、多くの被害女性のために戦うという、さらに大きな勇気を得たならば、中居から被害を受けた他の女性たちを探し、集団で訴訟することもありうるし、そうなれば中居が刑務所に入ることもあるだろう。
ただし、何年にもわたる訴訟は、被害者をなじる中居ファンからの声と戦うことでもあるので、本当に勇気を出さなければできないことだ。
それを理解できる被害女性は、にわかには警察に被害届を出しにくい。
③ 女性の議員が国会で質問したら?
当事者や二次加害者のフジテレビだけを見ていると、中居が警察に逮捕されるのは、かなり高いハードルに見えてくる。
だが、もし国会の会期中に、野党の女性議員が、「多額の示談金を払えばどんな犯罪もチャラになるのはおかしい! 警察は中居氏を捜査するか、せめて事情聴取ぐらいしないのか?」と警察庁長官に対して質問すれば、どうなるか?
ただでさえ内閣支持率が低迷している石破総理は、7月には参議院選挙もあるから少しでも好感度アップをしたいし、大衆の留飲を下げるようなことなら1個でも緊急に対応したいはずだ。
しかも、質問者が一人だけでなく、他の女性議員も法務大臣に対して「国民的アイドルが多額の示談金を払って無罪になるような判決が出たらどう思うか」と質問したらどうなるか?
そこで、法務大臣が「誠に遺憾」などと回答してくれれば、裁判官たちは中居事案に執行猶予をつけにくくなるだろう。
もっとも、野党の女性議員たちが、フジテレビ問題にどれだけ関心を持っているか、あるいは女性の人権にどれだけ関心を持っているかは、未知数だ。
つまり、国会で3人も4人も野党の女性議員が次々に中居事案について毎日しつこく石破内閣に質問をぶつけない限り、石破総理も動かない。
…とまぁ、これだけ大きな3つのハードルがある以上、中居正広は昔の女にかくまってもらいながら、海外移住も考えていることだろう。
もちろん、中居をコマーシャルに起用した企業は、違約金を中居に求めたり、フジテレビも広告収益を失ったので損害賠償を求めたりするかもしれない。
それでも、資産がゼロになるまで海外に逃げ続ければ、中居にとって静かな生活を送れることになる。
大物芸能人には、熱烈なファンがいて、そうしたファンからの支援で生き延びられることもあるかもしれない。
しかし、女にかくまってもらう生活の中で、中居正広は本当に安穏としていられるだろうか?
僕は、そうなってほしくないが、中居が一人で自分の命を捨ててしまう可能性を心配している。
一人の命が失われることは、逮捕されるよりはるかに痛ましいことだ。
中居は2020年にジャニーズ事務所から独立した際、ガラスの小瓶に入れたジャニー喜多川の遺骨を報道陣に見せた。
おそらく中居も少年時代、ジャニー喜多川の餌食になっていた可能性がある。
もし、そうだとすれば、中居が若い頃から繰り返してきた性のトラブルは、ジャニー喜多川による被害を、加害者として再演してしまった結果かもしれない。
親が子どもを虐待する場合、その親にも子ども時代に虐待された過去があることが少なくないが、それは被害者としての自覚がない場合だ。
虐待は、加害者側が自分自身の被害を自覚しないことによって連鎖するのだ。
守秘義務を盾にして、第三者委員会のヒアリングに応じなかった中居は、おそらく自分の子ども時代の被害の重さを自覚していない。
だから、世間から隠れ、家を毎日取り巻く写真週刊誌のカメラから隠れ、自分が犯罪者として後ろ指をさされる現実から逃げることもできない。
しかし、中居がジャニー喜多川の被害者だったのなら、彼がやるべきは、まず精神科医に診察してもらうことであり、十分に自分の人生が金にがめつい大人に捻じ曲げられてきたことを理解し、自分を憐れむことだ。
それができてこそ、中居は心の底から被害女性に謝罪できるんだと思う。
逆に、「金さえ出せば何とかなる」とか、「示談したから芸能活動ができる」と思っているうちは、被害女性の痛みも苦しみも理解できないままだろう。
今のままだと、家からも出られない自分の不幸を嘆いて、絶望の果てに自ら命を捨てるかもしれない。
そうなれば、ファンはもちろん、被害女性やジャニー喜多川の被害者たちも、誰も救われない。
むしろ、中居自身がジャニー喜多川による被害について記者会見で語れば、他の有名なジャニーズ出身タレントも、語りやすくなる。
そして、中居が「子どもを大人から守る活動に余生を捧げる」と宣言すれば、もっと仲間が増える。
そのような覚悟を見せれば、一度失った名誉も、これからの人生で取り返していける。
だからこそ中居よ、今すぐ精神科医にかかってくれ。オンライン診療や訪問診療をしてくれる医者もいるから。
そして、子どもを平気で餌食にしたジャニー喜多川の呪いから、一刻も早く解放されてほしい。
さて、ここでみなさんに質問。
僕が朝日新聞SDGs ACTION!の連載で書いてきたとおり、子どもが大人から性加害を受けても、子どもにはそもそも抵抗できる手段がない。
当然、子どもを守るための法改正をしなくちゃいけないが、そのためには有名人ほど自分自身の被害を人前で言えるようになることが必要だ。
子どもの頃の被害を話す有名人が増えれば、子どもの人権を考える大人も増えるからだ。
では、有名人が自分の子ども時代の被害を言えるようにするには、どんな条件や方法が良いだろうか?
たとえば、こんなアイデアはどうか?
●出版社が被害を語る有名人を公募し、出版する
●週刊文春が1000万円の懸賞金で公募する
●国が被害体験を話す有名人を講演に招く
●子ども時代の被害を歌う人には国が費用を出す
●11月の防止月間に1000人の有名人を起用する
●『日本一醜い親への手紙』の芸能界版を作る
●子どもの被害者の番組や映画に国が金を出す
あなたのアイデアを、ぜひ動画のチャット欄やコメント欄に書いてほしい。
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