たとえば、あなたが小中学生で、教室でのいじめに巻き込まれたとする。
いじめっ子が殴ってきたので、よけるつもりが、自分の手が相手にあたり、相手の体がひどく傷ついた。
そんな時、学校は管轄の文科省の方針に沿って対処するが、そのいじめでイスが壊れたら消費者庁が関わり、検証に付き合わされることになる。
そこで、いじめの総検証をやらざるを得なくなり、いじめっ子が両親からの虐待を受けていたなら、児童相談所につなぐので、厚労省の管轄になる。
しかも、その家庭で夫が妻にDVを働いていたなら、これは内閣府の管轄になり、いじめが暴行レベルだと判断されれば、少年院などを管轄する法務省も関与せざるを得ない。
このように、1つのいじめ案件でも、文科省・消費者庁・厚労省・内閣府・法務省など、複数の役所にたらいまわしにされ、それぞれの省庁は自分の管轄内でしか責任が取れず、結果的にいじめに困っている子どもや親は、「もういいよ。いつまで続くんだ。疲れたわ」と泣き寝入りすることになる。
このように、所轄官庁ごとの対応では、いじめに限らず、子どもの貧困・親による虐待・小児性愛者による性被害など、広範囲で泣き寝入りが浸透してしまっている。
つまり、縦割り行政で子どもや養育者などがたらいまわしにされる問題を解消することが、切実な課題だったのだ。
そこで、子どもの苦しみについて一元的に責任を負う専門の役所が必要になり、こども家庭庁が作られた。
だから、こども家庭庁は「こどもまんなか」をキャッチフレーズに掲げ、「こどもや子育て中の方々が気兼ねなく様々制度やサービスを利用できるよう、地域社会、企業など様々な場で、年齢、性別を問わず、全ての人がこどもや子育て中の方々を応援するといった社会全体の意識改革を進めるための取組」を始めることになったのだ。
こうした経緯は、ネット上ですべて公開されているにも関わらず、まったく調べないまま愚かな主張を繰り返す人がいる。
★なんで6兆円もかかるんだ?
こども家庭庁は、関連省庁から官僚が出向してくるため、こども家庭庁の管轄事業になる予算は、関連省庁の予算から寄せ集めてくることになる。
今回の6兆円には、日本版DBS制度など、国会で新たに決まった事業予算を積み足しているので、昨年度より少し増えても当然なの。
★こども家庭庁は、統一教会が作った?
当初は、統一教会と全く関係のない自民党の若手議員の勉強会で「こども庁」が発案された。
だが、自民党の先輩を交えた会議の中で、統一教会と関係の深い「壺議員」が「家庭」という言葉を足しただけ。
これは、名称問題として既に報じられている。
政策のすべてに統一教会が介入できるわけがなく、自民党の「壺議員」も子ども施策にはうといので、こども家庭庁が統一教会にコントロールされるなんて、あり得ない。
★6兆円もの予算を全部〇〇に回せば…
概算要求は、さまざまな事業の予算の合算。だから、全部を1つの事業に回せば、たとえば児童手当も出さないことになるし、子どもの性被害対策もムリ。それでいいの?
しかも、その文句をこども家庭庁に向けること自体が変。
概算要求は、どの省庁でも出す責任がある。それを差配するのは財務省であり、承認するのは国会議員だ。
文句を言いたいなら、財務省や与党・自民党の国会議員に言うのが、納税者としての責任だろう。
★非営利団体に公金チューチューさせるな?
国家予算を民間の事業受託として受け取る金額の規模からいえば、大手広告代理店の方がはるかに罪深いし、公金に群がる民間事業者はどの省庁にも大なり小なりいる(自分で調べてみて)。
非営利団体への税金投入に目を奪われるのは、巨悪に目を向けさせなくすることと同じ。木を見て森を見ない態度にあなたを導こうとする人たちにダマされる方が怖いよ。
★こども家庭庁は、利権のために作られた?
こういう「利権」についてXでポストしてる人は、どの事業が誰の利権のためにいくら使われたのかについて、具体的なことを書いていない。
エビデンス(証拠)もないまま単なる憶測を書いても、釣られてしまう”いろいろと残念な人”もいるからだ。
釣られないよう、「ああ、残念な人を釣りたい残念な人もいるのよね」ぐらいに受け止めておこう。
★6兆円をそっくり防衛予算に回せ?
自衛隊は慢性的な人手不足に長年悩んでおり、常に「定員割れ」状態。「軽武装」なのに、それすら達成できないほど必要な兵隊の人数に達していない戦力なのだ。
少子化対策に30年以上も失敗し続けている政府・自民党に政権を任せきりにしてきた国民のツケの結果だ。
しかも、出産促進の失敗だけでなく、せっかく生まれた子どもも毎日虐待死で失い、10歳から39歳までの死因1位が自殺という生きづらさを放置している。
これは、兵士になる若年層が減り続けるのと同時に、出産できる年齢層の国民まで減らしていることを意味する。
そこで、こども家庭庁から6兆円を奪い取って防衛費に回せば、必要な兵隊すら増やせず、日本国は人口減少が進み続け、勝手に自滅する。それが愛国保守の選択なの?
このまま子どもを増やすことに予算を使わず、子どもを心身ともに守れる政策に変えないとしたら、非武装中立しか選択できなくなる。
だから、子ども・若者の苦しみに責任をとる役所としてこども家庭庁が必要になるの(※以下の画像は内閣府のHPより)。
「ぜんぶ防衛費に!」と主張する人が、どれだけバカを自覚していない「自称・愛国保守」なのか、誰でもわかるよね。
★くだらない政策ばかりのこども家庭庁はいらない?
こども家庭庁は2023年4月に発足したばかりで、1年5か月しか経っておらず、まだ2足歩行も難しい赤ちゃん同様だ。
「自分が担当大臣なら1年ちょっとで成果を出せるか?」と自問してみよう(政治家になるのに資格は不要だからね)。
まだその存在価値を評価できるタイミングではなく、これから何年もかけて「こどもまんなか」政策の成果を一つ一つ検証する必要がある段階なのだ。
その検証をふまえることなく「こども家庭庁はいらない」と主張するのは、あまりにも乱暴であり、民主主義に必要な手続きを学んでいない愚かさを自白した粗忽者といえる。
そもそも行政(役所)は、国会で決まった法律と予算の範囲で粛々と仕事をするのが本筋だ。
役所や役人がなければ、どんな良い政策も実行されないが、そこで責任を問われるのは担当大臣だ。
役所をつぶすより、担当大臣が適任かどうかを問うのが、正しい問いの立て方だろう。
大臣は政治家なのだから、有権者が賢くなって選挙で適任者だけに投票しようとしない限り、おかしな人が官僚の人事権を持つ大臣になってしまうのよ。
もちろん、こども家庭庁は、発足当初からおかしな事業に金を使ってきた事例がたくさんある。
子どもの顔写真を親が勝手にデジタルタトゥーとしてネットに公開した「家族の日写真コンクール」を皮切りに、最近では子どもの性被害をなくすための日本版DBS制度は「ほとんどザル法」と言っていいぐらいお粗末な制度設計だ(※下記リンク記事を読んでみて)。
それでも、子どもの苦しみに一元的に責任を負う役所は、こども家庭庁だけ。
せっかく新しい役所を生んだのだから、育てるのが、有権者である大人の責任だ。
産んだら、育てる。
この当たり前のことを大事にせず、「1つでも不満要素のある存在は育てる価値がない。なくなればいい」と考えるのは、愚の骨頂。
しかも、役所は、税金を使って運営されるからこそ、証拠を示して批判しながらより良い仕組みへ育てるのが、納税者の責任なのだ。
「おまえのことは、よく知らんけど
おまえなんか、いないほうがいい」
こども家庭庁を「いらない」とX(旧twitter)にポストしてる人は、そういう人たちだ。
差別主義者と思われても仕方ないだろう。
批判があるなら、ちゃんと調べ尽くして批判し、新しい役所をより良い存在へ育てよう。
どんな人も、誰かに育てられてきて、今があるのだから。
https://www.asahi.com/sdgs/article/15399387