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その記事によると、2023年にフジテレビ編成幹部A氏とA氏の知り合いの芸能界関係者の女性との会食予定があったが、中居と女性2人きりで会うことになり、女性が激怒し、警察に訴えることも考えるほどのトラブルがあったという。
その後、双方が代理人を立てて話し合い、女性に9000万円が支払われ、示談が成立した。
この額面の大きさから、示談金というより口止め料の意味合いが大きいことがわかる。
では、どれほど深刻なトラブルだったのか?
12月27日時点では、中居正広も、被害女性も、どちらも記者会見をしていないことから、くわしい報道は出ていない。
もっとも、一般人にとって、いくら9000万円が大きな額面に見えても、毎年の年収が億単位である中居正広にとっては違う。
SMAP時代からの貯金も考えれば、資産は100億円近くあると推測できるため、中居正広にとっての9000万円は「はした金」なのだ。
あなたが年収300万円で貯金ゼロなら、3万円をあげたようなものなのだ。
それを思えば、被害女性がお金を受け取ったからといって、気持ちの整理がつくわけがない。
関係した相手だけが得をして、自分だけ苦しみ続けるのは、納得できないからだ。
当然、親しい友人や仕事仲間、家族などには、金では解決できない思いを聞いてもらうだろう。
つまり、遅かれ早かれ、このスキャンダルが週刊誌の記者の耳に入るのも時間の問題だった。
しかも、中居正広にとって女性スキャンダルは、これが初めてではない。
24年前、中居正広が28歳の頃にも、スキャンダルはあった。
元『噂の真相』のフリーライター・神林弘恵さんは、サイゾーウーマンに次のように書いている。
「思い出されるのは、筆者が所属していた月刊『噂の真相』が報じた中居の妊娠中絶スキャンダルだ。
そのスキャンダルとは、中居が当時肉体関係をもっていた女性が『子どもを妊娠・中絶した』と告発、同誌2000年12月号に『国民的アイドルSMAPリーダー中居正広を襲った妊娠中絶劇の顛末独占衝撃告白』というタイトルでスクープ掲載されたもの。
女性の告白によると、断続的に中居と肉体関係を持つ関係だった女性が妊娠し、それを中居に報告したところ、『もし産んだら事務所に切られてしまう』と出産を拒否され、結果中絶させられたという衝撃的なものだった。
さらに『噂の真相』は翌月号でも中居スキャンダル続報で追撃、女性は中絶した後に中居の不実な対応をなじる電話をしているのだが、その録音の音声をウェブでも公開したのだ。
しかし、このスキャンダルをマスコミは完全黙殺した。もちろん当時絶大な威力を持ったジャニーズタブーの圧力と忖度の賜物であり、ジャニーズと中居は、このスキャンダルを“なかった”ことに成功したのだ」
アイドル、あるいは売れっ子タレントは、恋愛スキャンダルだけで人気が左右され、収入が激減するリスクを負う。
何らかの被害を訴えられれば、仕事を続けていくこと自体ができなくなる恐れも高い。
そうしたリスクの高い商売が芸能界であることを、ジャニーズ事務所は未成年タレントにちゃんと教育しただろうか?
中居正広がジャニーズ事務所に入ったのは1987年で、彼がまだ15歳の頃だ。
翌年にはSMAPにメンバーになり、事務所に入って4年めの1991年に19歳でCDデビューした。
15歳からジャニーズJr.として仕事を始めた中居正広の家庭は当時、極貧だったようだ。
週刊誌『女性自身』の記事では、2023年12月に次のような制作関係者のコメントが紹介されている。
「中居さんは1972年に3兄弟の末っ子として生まれました。生まれ育った家の広さは3畳半から4畳ほどで、当時は風呂に週2回しか入れなかったそうです。
夏場は学校で水泳の授業があるため、風呂は週1回だったといいます。食べるものがなかったため、兄と工夫して米にバターと醤油をかけて“バターご飯”にしたり、チューブのわさびと酢をかけて“わさびご飯”にしたりしていたといいます。
それもなくなると、ご飯に水をかけただけの“水かけご飯”を食べていたそうです。自身の家庭では“3時のおやつ”が一切なかったそうです。
そのため、友だちの家に遊びに行ったときに振る舞われたカルピスを、通常より濃く作って飲んでいたと明かしています。サンタさんが来たことも一度もなかったと話していました」
貧困家庭では、中学卒業までに「どんなに学力アップの努力をしても貧困から抜け出せない」と考えた場合、人気歌手になるか、スポーツで勝ち抜くかなど、とにかく短期間で荒稼ぎできる仕事を親が子どもに勧める場合がある。
それが、教育投資ができない家庭の生存戦略の一つだからだ。
そこまで貧困ではない家庭なら、学校の勉強をがんばって、将来的に安定して年収の高い会社に入れるよう、偏差値の高い大学を目指すかもしれない。
しかし、1990年代から親の所得と子どもの学歴は完全に比例している。
親に金があれば私立幼稚園の「お受験」から大学卒業まで子どもに金をかけられる一方、親に金がない場合、子どもは勉強や進学以外の方法で大金が得られる仕事を目指さない限り、時給の低い仕事にしかつけず、いつまでも貧困生活が続くのだ。
もっとも、仕事で人気が出て有名になり、一般人の何十倍も稼げるようになる前の未成年の時点で、「大金にはリスクがつきものだ」という教育が徹底されていなければ、スキャンダルを起こした時に「金さえ払えばなんとかなる」という安易な考えになりかねない。
極貧家庭出身の中居正広にとって、未成年の頃はハングリー精神で仕事をしていただろう。
ハングリー精神は、スキルアップには必要なものだ。
しかし、その反面、自分を取り巻く環境を冷静に見つめるまなざしを奪われるおそれもある。
中居正広が2020年に独立するまで所属していたのは、社長や社員が未成年タレントを傷つけていたジャニーズ事務所だった。
被害申告者が1000人以上もいて、今も増え続けている事務所に、中居正広は15歳で入ったのだ。
ジャニーズ事務所は、中居正広の最初のスキャンダルをもみ消し、マスコミも黙らせた。
中居正広は、そのことを「倫理的におかしい」とさえ思わなかったかもしれない。
むしろ、「事務所が自分を守ってくれた」と感謝すら感じているかもしれない。
しかし、極貧家庭出身の中居正広にとって必要だったのは、「大金を稼ぎ続けられるなら何をしてもいい」という教えではなかったはずだ。
大人や年長者、社長や先輩が相手でも、おかしいことには「おかしい」と言っていいことを、彼は誰からも教えられていなかったのかもしれない。
だから、中居正広だけを責めたところで問題は終わらないし、中居正広をめぐる仕事や恋愛、家族などの人間関係がどうだったのかを検証しない限り、被害に遭う人は今後も減らないだろう。
親や社長、先輩やスポンサーから支配的な関係を強いられる職場環境では、支配されるより支配する側になりたいと望むことはよくある。
強い立場の人間に支配される屈辱に慣れてしまうと、「支配する側に回れば安心できるはず」という希望を抱きがちだ。
そのため、強い相手と戦う自尊心なんて放棄して、同じように支配されている者どうしで連帯して戦うのも怖くなってしまう。
そして、強い立場の相手にどんなに屈辱的なことをされても、いつも明るく笑顔で耐え抜くのだ。
そのように、自尊心を奪われるような環境に育てられてしまうと、どんな人も金の亡者になりかねないし、「自分の価値とは何か」を考えない人になってしまう。
自分の価値を考えたこともない人は、自分以外の誰かの価値も考えないし、日常的な人間関係でも自分に良くしてくれる相手しか仲良くしなくなる。
そうなると、自分が愛されれば十分で、誰かを愛する面倒は負いたくない人になりかねないので、仕事でも他の人にはない唯一無二の自分の価値を考えることもなくなる。
実際、テレビやCMから中居正広が消えても、彼の仕事をべつの人がとって代わるだけだ。
SMAP解散後から、中居正広でなければできない仕事なんて、実は一つもない。
そう思うと、中居正広のとるべき選択は、なるだけ早く芸能界から引退することだ。
ジャニーズ事務所の後継会社スタートエンターテイメントも、2025年にはアメリカでの裁判で莫大な賠償金を払って、経営の危機に陥る恐れがあり、所属タレントも行き場や仕事を失って廃業を迫られ、ジャニーズ文化が完全崩壊するタイミングだ。
中居正広には、元アイドルでなく、元人気者でもなく、「何者でもない自分」になった時、ジャニーズ事務所が未成年アイドルに何をしてきたか、何を教えてこなかったのかについて、本を書いてほしい。
中居正広の価値は、子どもや女性が「汚い大人」によって傷つけられることがないように、自分やジャニーズ事務所の間違いを具体的かつ詳細に書き残すことぐらいしか、もう無いのだから。
さて、あなたは、これからの中居正広の価値とは何だと思う?